絶好の機会
それからというもの別段変わったこともなく日常は過ぎていった。例の事例もその後発生した事例はみられていないとのことだった。
その日、クリスタの5人は学園長室に呼び出されていた。
「2週間後に開かれる交流戦だが、この学園で執り行われることは知っているな。先の夜会の件、依頼で動いたそうだから察していると思うが、学園が探られている。」
「えっ、そうなんですか!?というか夜会って?」
と1人だけ夜会には参加していないタクトが驚いた声をあげる。
「そっか。状況はまた説明してあげる。」
ユリアは一旦話を進めるためにタクトには後で詳細を説明することにした。
「オリオール嬢が推測していたように怪しいのはクレキアだ。あのあと、あの夜会にいた貴族達からクレキアの土地や霊獣の狩場について随分詳しいやつがいて、情報をもらう代わりに学園のことを聞かれたという証言がある。」
「ここまで推測できるって結構つめが甘いのな。もはやバレてもいいと思ってるのか。」
よくわからない奴だとでもいうよにハルトが反応する。
「真意はわからない。だが今度の交流戦、何か仕掛けてくる可能性は高い。あちらとしては知りたいところに入れる絶好の機会だからな。交流戦自体ももちろん負けられないが、それ以外の時も警戒を頼む。この自体は国王も危惧していて騎士団も派遣されることになった。」
「騎士団も。まあ確かに、交流戦は出場する生徒の親も、要人も来るから変に勘ぐられることもないですね。」
とシュウは納得する。変に警護ばかり増やすのも、何かありますと言っているようなものだが、交流戦では将来有望な生徒を見つけるため、互いの戦力を計るため、各国の要人が観戦にくることもある。それに出場する生徒の親、つまりはユリア達の両親は公爵家や伯爵家の御人であるため警護が厳重でもおかしくはない。これまでの交流戦では騎士団まで派遣されたことはなく、各家の対応に任されていたが理由はどうとでもなるだろう。
「夜会の詳細は分からないですけど、やることはわかりました!どっちにしろ負ける気はないですし!」
タクトはやる気満々といった様子で張り切っている。
「燃えてんね〜。ま、兄貴やら親やらに成長を見せつけてやらないとだし、夜会の捕まえるって仕事もやり終えてないことですし。」
とハルトはやる気がなさそうな話し方だが、確かに闘志を秘めている。
「まあ、わたしは後方担当だからみんな頑張れ〜。」
ルナは他人事のように無気力に返事をする。
「まあルナにかっこ悪いところは見せられないしな。どんだけ強いやつが来るか楽しみだ。」
シュウはどこかワクワクしているようだった。
「…いるかな」
ユリアはあの黒髪の彼のことを思い出していた。