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欠落の氷結姫  作者: 愁香
3/15

欠落の氷結姫


翌日


学園はランク戦でおおいに盛り上がっていた。


この世界において、霊獣に対抗する力として人々には五つの因子に関連した力が生まれつき与えられている。これらは神話の時代より遺伝によって受け継がれている。五つの因子とは水、炎、雷、大地、空気であり、この自然とつながる因子を体内に持ち、世界に満ちている魔素と自然の因子を結合させることでそれぞれの力を形にしている。そしてその力をフォルツとよんだ。


この学園はユティーヌ王立学園。王立といえども管轄は神殿にあり、ユティーヌ国の貴族の令息、令嬢はほとんどがこの学園の生徒である。とはいえ平民も入学可能であり、実力至上主義のこの学園では平民への差別はほとんどない。ただし、常に研鑽することが求められ、今日のように半年に一度ランク戦が行われ、能力測定と模擬戦によってランク付けされるのだ。ランク付けとはいえ明らかな差別をなくすため、上位5名をクリスタ、上位12名をナンバーズとし、それ以外には階級やランクを決めていない。生徒達はナンバーズ入りをめざし日々訓練しているのだった。


この日も例年どおり午前に能力測定が行われる。主に力の影響範囲、威力、発現速度、正確性が評価される。

ユリアは大抵のことは何とかなると思って生きているが、毎回この時間は胸がざわつく。普段使っている銃は実弾式のものではなく、いわゆるフォルツ補助具である。力を発現させる位置の焦点化、影響力や威力の増大、速度補填などを行ってくれる。しかしこの測定では実力測定のため補助具は使用できない。深呼吸して的に手を向け意識を集中する。


ピッという笛の合図とともに「凍れ。」とフォルツを操る。1秒後には的は凍りついた。ユリアは自身の手を見つめ苦い顔をする。

判定はSを最高評価としA-Dでつけられる。

この"発現速度"測定においてユリアはCの判定だった。


"欠落の氷結姫"


ふと昨日の男の言葉を思い出す。


ユリアのフォルツは水の因子である。水はほかの因子と違い、その操作によって氷や雪、霧など性質がもっとも大きく変化する。そのため水の因子をもつ人はイメージの具現化とより大きなエネルギーの伝達が必要となる。そのため言霊のようにイメージを言葉に乗せてフォルツの操作を行うことでより具体的なイメージとエネルギーを具現化させるようにフォルツを操る。問題はそこにあった。


水としての発現ならばユリアはS判定をもらうだけの力がある。しかし、性質を大きく変化させる氷などの発現をしようと言葉に力を乗せ放出するとき、どこか息が詰まる、何かが引っ掛かっているような感覚が邪魔をするのだった。この感覚がいつからあるものだったかは覚えていない。気づけばずっとこの感覚があって、どれだけ訓練を繰り返しても消えることがなかった。それどころか彼女は力とは関係ないにも関わらず、心因的なものなのか歌にすら言葉を乗せること、歌うことすら出来なくなっていた。


彼女はユティーヌ王国で2番目に権力を持つと言われるオリオール家の1人娘。そのフォルツは生まれた時から注目され続けており、この現状はすぐに貴族達に広まった。命名者なんて忌まわしき幼馴染なわけだが、人々はその二つ名をまさにというように、その欠点を惜しむように"欠落の氷結姫"と評したのだった。




しかし現在となってはこの国やこの学園でその二つ名で彼女を呼ぶ者はいない。


なぜなら…

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