日本ちょっとおかしな未来ばなし
第1話 ウサギとロケット
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みらーいのみらい。
とある村におじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんはロケットをつくる、かがくしゃでした。
「ついにロケットができあがったぞ!
これでほしのうみにいけるのじゃ!」
まどからのぞいていた森のうさぎピョコ太がおじいさんにいいました。
「やい、じじい。ロケットとはおれよりもたかくとべるのか?」
おじいさんはいいました。
「おまえのなんばいもうえをとぶのさ。
あおぞらのむこうまでとぶのがこのロケットじゃよ」
うさぎはいいました。
「そんなものあるわけない! よしわかった! しょうぶしようじゃないか!」
おじいさんはなまいきなウサギにいたずらしてやろうと思い、いいました。
「このロケットはあしたテスト飛行をする。またあしたおいで」
「あしただな、よしわかった」
うさぎのピョコ太はよゆうのかおでかえって行きました。
つぎの日。
うさぎのピョコ太は きょうもどうどうとやってきました。
更にかのじょの たぬきのポン子 もつれてきました。
おじいさんがいいました。
「ロケットはじかんにならないととばない。
10からかずをかぞえてゼロになったらとびたつのじゃ」
「わかった。はやくしてくれよ」
うさぎのピョコ太はポン子のひざまくらでおひるねをはじめました。
しばらくしておじいさんはポン子をてまねきしてこういいました。
「うさぎをつれてこっちにくるのじゃ」
ピョコ太はなんとなくめをさましました。
きがつくと、なにかへんなふくをきていました。
「なんだこりゃ、まだゆめをみてるのかな」
「カウントダウンかいし! 10、9、8...」
なんとなくじじいのこえがします。
ねぼけているピョコ太がおおあくびをしてポン子をさがしかけたとき──
「...3,2.1、ゼロ! ロケットはっしゃじゃ!」
「ロケット...しまった! ジャンプのきょうそう───!」
しかしピョコ太のこしにはベルトがきつくしめてあり、すわっていた
イスからうごくことができません。
そのとき、どごぉーん!といういままできいたこともないような
おおきなおとともに、ピョコ太のからだはうごけなくなりました。
めのまえのあおぞらをロケットはどんどんとんでいきます。
さらにロケットは あおぞら の はて あたりにきたときに、もういっかい
どごぉーん!とものすごいおとをたてました。
ウサギのピョコ太はこうも たてつづけに おおきなおと を きいて こわくなりました。
「ここはどこだー! じじい、おれはどうなったんだー!」
こわくなったピョコ太は おもわず おおきなこえでさけびました。
「こわがることはないぞ、ピョコ太!」
ピョコ太のうしろからこえがしました。これはじじいの...
あわててピョコ太がうしろをむくと、そこには かがくしゃのじじいと
そのよこでおじいさんをてつだっているポン子がいました。
「どうじゃピョコ太。今このロケットはちきゅうをとびだしたのじゃ。
1かいめのおおきなおとでロケットはまずとびはじめて、
2かいめのおおきなおとでくうきのそうをぬけてうちゅうにでたのじゃ」
ピョコ太はじじいいがなにをいっているのかわかりません。
とどうじに、だんだんとむかむかとあたまにきていました。
「じじい、おれとのしょうぶはどうした! なぜやらなかった」
おじいさんはこたえました。
「ピョコ太、みてみろ。
われらのうまれたちきゅうはあおくてきれいじゃな。
わしはおまえにこれをみせてやりたかったのじゃ」
「じじい、しょうぶからにげたわけをいえ! 」
「ピョコ太、よくみろ。ここは宇宙というのじゃ。
わしらが住むちきゅうのだいちのうえに、はてしなくみえる
あおぞらのそのさきのばしょじゃ」
「なん...だと...?」
「おまえのジャンプがいかにたかくとべるといっても、
あおぞらのさきまではとべまい?
わしはそういうちっぽけなしょうぶより、おまえにはもっと
おおきくて、ほんとうに はてのない、このだいうちゅうを
みせてやりたかったんじゃ!」
ピョコ太はガチャガチャとてあらくベルトをあつかって、どうにかはずしました。
「ふざけるな!おれはおまえなんかにまけない! そしてここが!
おまえのいうほんとうに うちゅう かどうかもわからなじゃないか!」
しょうぶをなかったことにされたピョコ太はとてもおこっています。
「おれはみとめねえぞ!そしてきょうはもうきぶんがわるいからかえるぞ!」
おじいさんはピョコ太に「あぶないからその場から動くな」と、とめました。
あるていどおちついたとはいえ、いまはまだちきゅうのじゅうりょくに
ロケットはひっぱられているので、そのじゅうりょくからのがれるまでは
ロケットをとめることはできないのです。
「ポン子!かえるぞ!こんなじじいくさいとこに、いつまでもいられるか!」
「ポン子、このロケットで帰らないとちきゅうにはもどれんのじゃ。まちなさい」
「うるせーじじい!ポン子、来い!」
「ここのドアを出たらしぬんじゃぞ! ポン子、おまえだけでものこるのじゃ」
「ポン子!こい!めいれいだ」
「しぬのがわかってていくのはダメじゃ!」
どっちのいうことをきいていいのかわからない、たぬきのポン子。
ポン子は、おこってげんこつをつくるピョコ太ではなく、ほんとうにしんぱいを
しているようにみえる、おじいさんのうしろにかくれました。
おじいさんはいまもひっしにピョコ太のことをとめています。
でも、言い出したピョコ太はおじいさんのいうことをきく気はありません。
「ポン子!かえったらおしおきだからな! おれはさきにかえるぞ!」
ひっしにとめるおじいさんでしたが...
ついにピョコ太はへやのむかいにあるドアをあけると───
ピョコ太は一瞬でどこかにながされてゆきました。
ピョコ太は思っていました。
「ここがそらのさきだと? しんじられるか!しんじられるか────!」
ピョコ太は まさつねつ によって うちゅうふくのなかで いっしゅんにして
まっかになりました
「おれはかえる!おれはかえる!おれはかえる!おれはもりにかえるー!」
おじいさんがのったロケットがとびたったそらを見上げているおばあさん。
そろそろよるとるのとばりがおりてきました。
おはあさんがいえにはいろうとしたとき、ひとすじのながれぼしがみえました。
どうやら、うらのもりのほうにおちていきます。
おばあさんは てをあわせて ながれぼしにおねがいをしました。
「みんなのねがいが、かないますように───」
おしまい。