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「いったい何だったんだろう」


 見た目とは裏腹に、良いあやかしだったのか。人型でなくとも言葉を話すことが出来、空も飛んでいた。良いあやかしどころか高貴なあやかしだったらどうしよう。姿を見て叫んで逃げ出すなど、とんでもない失礼な態度を取ってしまった。恨まれていなければいいのだが。


「そうだ、国守さん」


 そもそも彼に命じられて、あやかし探しをしていたのだ。見つかったどころか話しかけられたことをきちんと報告しておかなければ。


「ついてきてたりしないよな」


 念のため、三百六十度、空まで確認する。何も無い。しかし、相手は姿を消すことが出来る。スマートフォンの電波が入っていないことを確かめてから二人は足早に帰宅した。


「いました! 国守さん!」

「五月蠅い出ていけ」

「ひどい!」


 勢いよく扉を開けたため、国守によって仙が放たれた。仙が扉を閉めにかかる。彼の力に比べたら、清仁など赤子どころか蟻程度だ。


「違うんです。例のあやかしがいたんですよ!」

「それを早く言え」


 仙が扉から手を離したものだから、清仁が開け放たれた扉に体を持っていかれてごろんと転がった。今日は災難だ。

 おはぎに起こしてもらい、中に入る。国守が腕組みをして清仁を観察する。


「死んではいないな」

「そんな危険なことを俺にやらせたんですか!」

「八割方死なないと判断したからやらせた」

「二割危なかったねぇ!」


 人間は死んだら終わりなのだからもう少し労わってほしい。あやかしは、主人がいる場合、主人が生きている限りは死なないと言っていた。羨ましい。


「で、どんなあやかしだった」

「はい。ええと、目と角が沢山ある、大きいあやかしでした」

「目と角、だと……?」


 国守の反応が大げさに感じ、清仁が内心焦る。国守が立ち上がる。それを見守っていると、一枚の紙が目の前に差し出された。


「ここに、見たままを描いてみろ」

「あやかしを描くんですか?」

「そうだ」


 はっきり言って自分に絵心は無いのだが、描けと言われたら描くしかない。


 丁寧に、記憶の通りに描いていく。十分かかってどうにか完成した。我ながら上手く描けたはずだ。清仁が自信あり気な顔で紙を見せた。


「絵を描いたのは初めてか」

「初めてじゃないです。純粋な感想結構ぐさっときますね」


 この時代では紙に描くという経験をするのは紙を自由に扱える身分の者に限るから、国守も嫌味無く言ったのだろう。客観的に絵心が無いと突き付けられて、今すぐ消しゴムを召喚して紙に叩きつけたくなった。


「なるほど。この塊があやかしだな。このぐるぐるした丸が目か」

「はい……」

「この鋭利なとんがりが角か」

「……はい」


 拙い絵をじっくり見られて、非常に居心地が悪い。しかし、相手は真剣だ。重要な会話をしている。こちらも我慢しなくてはならない。


「本当にこんなに目や角があったのか?」

「はい。色は白っぽくて、あと、話しかけられました」

「話しかけられた? 何をだ?」


「確か、「時は動く」だったかな」


 国守が右手を顔に当て考え込む。しばらくして顔を上げて呟いた。


「……まさか、白澤はくたく、か?」

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