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「ありがとう。扇型は出なかったが、写真が沢山撮れて面白かったぞ」

「それはよかったです」


 清仁も、今日は通行人が少ない場所を散歩したので、風景を撮ってくれて助かった。もしかしたら、写真の中にあやかしの一部でも写っているかもしれない。視えなくても写真に写る可能性はある。


──でも、もうここにはいないってこともある。短時間で古墳から移動したんだから、もう長岡京にはいなかったりして。


 それだと無駄足になってしまうが、都に害を成すかもしれない何かがいなくなるのであればそれでいい。


「あ」

「なんだ? 私の素晴らしき撮影術に見惚れでもしたか」

「ここに写ってる」

「あやかしか? あやかし写真が撮れたのか!?」

「いや、早良親王が」


 あやかしではなく早良親王が一枚見切れて写っていた。


──心霊写真じゃなくてあやかし写真になるのか。


 そんな呑気なことを思ってしまったが、普段早良親王が視えない清麻呂が騒ぎ出したので落ち着かせなければならない。


「国守さんにお祓いお願いしておきます」

「そうしてくれ! ありがとう。今度礼をしに行く。貨幣でよいか」

「いや、結構です。すぐお金くれるの止めてください」


 すぐにお小遣いをくれる親戚のようだ。特に使う予定も無いので、清麻呂自身が有効的に使ってほしい。清麻呂が口元を尖らせる。


「清仁は実に謙虚な男だ。どうせなら、どんと強請ればいいものを。家とか」

「いやいや、規模がおかしいでしょ! それに、俺はいついなくなるか分からない身ですし」

「帰るのか?」


 清仁が言葉に詰まる。


「いや……それは俺にもまだ」


 帰るのか、帰ることが出来るのか。自分が自分に問いたい。清麻呂が清仁の肩を優しく叩く。


「帰られるのなら、帰りたいだろう」

「はい」

「まあでも、帰るまではこの時代のお前だ。面白おかしく過ごしても罰は当たらん」


 清麻呂は面白おじさんの立ち位置でいてくれればいいのに、こんなことをされると情が移ってしまうではないか。それは困る。未練は作りたくないのに。


『我を呼んだか、未来人』

「あ、早良親王」

「なんだって!? 呪われる! 祓ってくれ!」

「えぇ……」


 国守でもないのに祓えるわけがない。ただ一緒に住んでいる居候である。それなのに清麻呂が清仁の服を掴んで縋ってくる。清麻呂の様子を見た早良親王は心底嬉しそうに笑っていた。


『はははは! 我の呪いに当てられたか和気清麻呂!』

「誰も呪えないから、怖がってくれる人が嬉しいんだな」


 寂しそうに早良親王へ視線を向ける。


「早良親王、ちょっと離れて。清麻呂さんが怖がってる」

『何故だ? このまま呪い殺してくれよう』

「しっしっ」


 清仁は手のひらを振って早良親王を挑発した。


「どうだ? もういないか?」

「はい、大丈夫です。どっかに消えました」

『ここにいるが!?』


「よかった、ありがとう」

『全然よくないが!?』


 真横で早良親王が大声で何かを言っているが全て無視する。涙目で礼を言う清麻呂と別れて歩き出した。絶賛早良親王付きで。

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