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 おはぎの力を継続させるための睡眠と散歩以外に、あやかし探しという任務が追加された。さらに家事をしているので、ニートな割りに忙しい毎日を送っている。これでは京都を取り戻すという目標が達成されるのはいつになるのやら。


 今のところ、超絶後ろ向きから超絶前向きへとシフトチェンジしてしまった桓武天皇を説得する術は見つかっていない。歴史を変えないためには清麻呂が進言しなければならないが、お散歩おじさんも積極的に動いてくれず、いまいち緊急事態だということが伝わっていないように思う。


──俺って何の為にいるんだろ。


 大疫災の自覚はある。だから奮闘したのだ。今のところ空振りで終わっているけれども。もしかして、自分もここの人間からしてみればあやかしの一つだったりするのかもしれない。考えて悲しくなった。


──そういや、京都が消滅して歴史が変わったら、俺って消えるのかな。


 よくあるSF物だとそんな設定があったりする。しかし、今現在、清仁はしっかりと足を付けて存在している。つまり、その仮説が正しいのであれば、まだ未来を元に戻す機会が訪れるということだ。


──待てよ。違う世界線になったって可能性も……考えないでおこ。


 何が正解か分からないところで想像しても悩みを増やすだけだ。特別な力もないのだから、流れに逆らわず周囲に紛れて進むしかない。あまり目立つのも避けたいところだ。


──まあ、すでに貴族に化けている時点で目立ってる気もするけど、天皇の近くにいたいことを考えれば妥当か。


「どうした、考え事か? それなら、気分転換に狩りにでも行こう」

「いえ、結構です」


 黙っていたら、横にいる清麻呂が話しかけてきた。今日は暇らしく、家の前で待ち伏せされていたのだ。出来れば一人で行きたかったが、一人も怖いのでなんとなく一緒に散歩することにした。都で殺人事件や神隠しの類が起きたと聞かないので、件のあやかしはそこまで危険ではないとの判断からである。


「面白いぞ?」


 なおも誘ってくる清麻呂に全力で首を振る。


「だって、狩りって兎を狩ったりするでしょ? 兎を」

「まあ、定番だが」

「俺は兎を一生可愛がるって決めたので、兎が狩られるところは見たくないんです」


 おはぎ以外の兎だとしても、そんな残酷映像を目撃したらストレスで最悪吐く。


「不思議な男だなぁ、養子に欲しい」


 何度目かの誘いはもう清麻呂の鳴き声として認識している。清仁が無視しても清麻呂も気にしない。


「あ」


 そっと隠れてスマートフォンを確認する。電波は入っていなかった。


「なんだ、すまあとふぉんではないか! 貸してくれ!」

「げ、見つかった」


 貸すと長くなるのを知っているので隠していたのに。貸さなくても五月蠅いので、仕方なく条件付きで渡す。


「十五分ですよ。それ以上は貸さない」

「そこをなんとか」

「貸すのは俺の方なので、俺の指定した時間に従ってもらいます」

「うぐぐ……分かった」


 大人しく引き下がった清麻呂を心の中で見直しながら、ついでに極秘任務に付き合ってもらうことにした。もちろん、詳しいことは内緒だ。


「画面のここ、数字じゃなくて扇型の絵みたいな形に変わったら教えてください」

「ん? 分かった。分からんが」


 清麻呂が素直に頷いた。結局返してもらったのは三十分後だった。

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