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「でも、もしおはぎが人型になりたいんだとしたら、主的には努力すべきところなのかも」
霊力を上げる修行は難しくとも、体力を付けることなら今すぐにでも出来る。清仁は食事を終え、すぐにおはぎと就寝した。
何をするにも人間は睡眠が一番重要だと清仁は考えている。サラリーマン時代も、毎日七時間寝るようにしていた。二十二時に帰宅しても、二十三時には寝た。すると、六時に起きても七時間睡眠ですっきりした頭で仕事に向かうことが出来た。
スマートフォンはまだ二十時を差している。今日は寝られるだけ寝てみよう。清仁は睡眠時間の限界に挑戦した。
結果、翌日は四時半に起きた。実に八時間半睡眠である。徐々に明るくなってきてはいるがまだ暗い。これ以上寝たら逆に体が疲れてしまいそうだったので、このまま起きることにした。
五時に朝食の準備を終え、国守と二人で食べ、六時におはぎを連れて家を出た。以前から早朝散歩を日課としていたが、今日はもっと歩くつもりだ。
盗賊に出くわした場所は避け、長岡京をぐるりと回り、行ったことのない方へ歩いていった。
「お、古墳だ」
素人目で見てもすぐに古墳と分かるくらい新しくはっきりしている。それでも数百年経っているのだろうが、まだ数百年だ。
好奇心から中を見てみたかったが、不法侵入になるので止めておいた。それに罰が当たりそうだ。
中はダメでも、近くまで行くのは構わないだろう。特に塀や堀があって人を避けているわけでもない。清仁はおはぎとともに古墳に近づいた。
「あれ……?」
目の前まで来ると、音が急に無くなった気がした。それはほんの一瞬で、気のせいだったように思う。今も遠くから人の声がする。
「風も吹いてない。古墳で遮られているのかな」
なんとも不思議な気分に陥りながらも、その場に座り、貴重な遺物を堪能する。ただ近づくだけでこんなにも感じ取れるとは、歴史の力は強い。
ぽよん。
「あるじ」
「おはぎ!」
前触れなく、おはぎが人型になった。光ってもいない。どうしたことか。清仁は驚いた。
「すごいね、力が戻った?」
まだいつもより睡眠を取った程度だ。こんなにあっさり戻れるのか。拍子抜けしていたら、おはぎが首を振った。
「ここ、ちからある。おはぎ、もらった」
「力をもらった?」
清仁が辺りを見渡す。古墳以外何も無い。誰もいない。
「ここがパワースポットってことか……?」
推測でしかないが、それしか考えられない。ここが特別なのか、遺物がある場所であれば力が溢れているのか。二人は試しに他の場所にも行くことにした。
「今日はたっぷり時間があるし、元々遠くまで行く予定だったから、あちこち回ってみよう」
時間を見るためにスマートフォンの画面を確認した清仁は、思わずそれを地面に落としそうになった。
「なんだ、これ」




