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 翌日から、おはぎを可愛いペットではなく、式神としても認識するようになった。今までも式神だということは理解していたが、それがどうなるか考えたことがなかった。成長するなら応援したい。


「おはぎちゃん、どう?」


 もう一度光るのか聞いてみたが、本兎もよく分かっていないらしく、喉を鳴らすばかりだった。無理をする必要は無いので、ゆっくり一緒に成長していこうと思う。


『ほう、我の畑を粛々と育てているようだな。感心よ』

「うわ、出た」


 大根たちの水やりをしていたら早良親王が現れた。だいぶ慣れてきたため、今では害虫程度の反応に落ち着いた。早良親王はそれが不満らしい。


『もっと我を敬え』

「いや、敬えって言われても、俺の上司でも何でもないし」

『種蒔きを指示してやった時はもっと殊勝だっただろう』


 その時はその時だ。それくらいで敬えと言われても、普段嫌なことをされすぎてプラマイゼロのゼロにも至っていない。


「それはどうも。さようなら」

『呪うぞ。明日には島流しよ』

「俺は大罪を犯していないので、それはないですね」

『我もしておらん!』


 これには同情する。しかし、早良親王の証言だけでは彼が無罪かどうかこちらでは判断の仕様が無い。ただ、物理証拠が出ずとも罰せられる時代では、無実の罪で亡くなった人が沢山いたことは想像に難くない。


「俺には肯定も否定も出来ません。すみません」

『……うむ』


 そのまま早良親王が黙ってしまった。静かな彼は珍しく、清仁は居心地悪く座り直す。


──言うこと無いならどっか言ってくれないかな。


 彼は清仁の友人ではないため、親身に相談に乗って無実を晴らそうなどとは思わない。万が一無実の証拠を見つけてしまったら、誰かに報告くらいはするかもしれないが。早良親王が騒いで何も変わらないなら、早いところ成仏して、新たな世を受けて幸せな生活を取り戻してほしい。


 世の中にはもがいても覆らない不幸がある。清仁は身をもって実感した。


『初めてそう言われた』

「何がですか?」

『誰しもが、我を罪人だと決めつけた。中立に立って話を聞いてくれる人間はいなかった』

「そうですか」


 おはぎをぎゅうと抱きしめる。すると、おはぎがまた光に包まれた。


「うわッ」

『なんだその生き物は! 我を退治するつもりか!』

「そんなんじゃないです。ちょっと光ってるだけです」

『その光っているのが怪しいと言っている!』


 勘違いでおはぎに攻撃でもされたら大変だ。それが、悪霊になりきれない浮遊霊でも、おはぎに悪い影響があるかもしれない。清仁が光を隠すようにおはぎを抱きしめ続けると、逆に光がどんどん強くなった。


 眩しくて一瞬目を瞑ってしまった。次の瞬間、膝に乗せていた重みがずっしりと増した。驚きでおはぎを見遣る。そこにはおはぎではなく、黒髪の女児がこちらを見上げていた。


「え……え……!?」

『は……!?』


 思わず早良親王と顔を合わせてしまう。彼にもこの現象が分からないらしく、ずっと首を振っていた。


 全然状況が掴めない。しかし、ここにいるというのなら。


「もしかして……おはぎちゃん?」

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