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 盗賊が出てくるとは考えていなかった。随分ぬるま湯に甘やかされていた。これからは散歩も都の中でした方がいいのかもしれない。何か相手が出てもひるまない武器があればいいのだが。


「そう、さっきのおはぎちゃんみたいな」

『ぷ』

「なんだったのか分かる?」


 聞いても耳を前足でくしくしされるのみで答える気配は無い。可愛いのでそれはそれでよしとした。


「ただいま戻りました」

「遅い。朝餉の準備をしろ」

「は~い」


 仙がご丁寧に出迎えてくれた。居候の身なので、大人しく言うことを聞いて茶碗にご飯をよそう。貴族の割に国守宅のご飯は質素だ。これが陰陽師だからなのか本人の性格によるのかは分からない。


 大盛りのご飯と漬物を並べていると国守がやってきた。これで全員だ。手を合わせてご飯を頂く。おはぎにも大根の葉をやる。まだ大根自体は収穫出来る時期ではないが、そもそも兎は葉っぱの方を食べるので問題無い。


「美味しいねぇ」

『ぷ』


 その様子を国守が観察してくる。何かまずいことでもしただろうか。


「おはぎちゃんにご飯上げちゃいけなかったですか?」

「いや、問題は無い」

「じゃあ、いったい」


 何が彼を釘づけにしているのか。


「その兎」


 どうやら、国守が気になるのはおはぎのことらしかった。おはぎ自体に興味を示すことが無かったので、清仁が嬉しくなっておはぎを抱き上げる。


「もしかして、ついに国守さんもおはぎちゃんの愛らしさを分かってくれましたか? 抱っこします?」

「しない」

「えぇ~」


「そうではなく、存在が強くなっている」

「存在?」


 国守が言っている意味が理解出来ず、首を傾げるに留まる。式神を連れているとは言え、専門的な知識は素人だ。もっと噛み砕いて説明してほしい。


「何かあったな? お前との距離が縮まり、式神としての力を得たということだ」

「……ああ! さっき盗賊に襲われました」

「あ?」


 国守の顔が怖い。清仁の親か先生か。親と言えば、お散歩おじさんもいた。清仁が両手で手を振り言い直す。


「いや、襲われそうになったけど、おはぎちゃんが助けてくれたんで怪我とかはないです」

「こやつが? どうやって」

「ピカッて光って、そしたら盗賊たちが吹っ飛んでいました」

「ふむ」


 顎に手を当て、国守がおはぎを間近で見つめる。おはぎが耐えられず、清仁の後ろに隠れた。


「なんだ、私はこの家の主人だぞ」

「おはぎちゃんはまだ人間に慣れていないので」

「ふん。まあいい、他に変化が出たら報告しろ」

「分かりました」


 どうやら、光る現象は珍しいことらしい。成長の現れの一種か。それならば、親代わりとして嬉しい限りだ。


「すごい、おはぎちゃん」

『ぷ』


 こんな変化なら大歓迎だ。出来ることなら、おはぎの成長をずっと傍で見守りたい。独身の清仁に親心が芽生えた瞬間だった。

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