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 両親に土下座を通り越して五体投地され困惑する。清仁は仏ではない、ただの一般人である。


「お二人とも、体を起こしてください」

「ははぁ~~~~~ッ」

「私はただ、北野さんに畑を見せて頂きに参っただけなので」

「え、私たちを捕えるためでは」

「なんかしたんですか」


 父親がおかしなことを言い出したので、思わずツッコんでしまう。顔を上げた母親が父親の肩を叩く。


「いやぁね、お父さん。北野が身分不相応の恋をして、そのお相手を内緒で連れてきたんでしょ」

「違いますね」

「えっ」


──二人とも想像力豊かか。


 父親がよからぬことをしているのか後ろ向きなだけなのかは置いておくとして、さっさと用事を済ませることにした。


「初めまして、若野清仁と申します。先ほど申し上げた通り、畑を見せて頂きたくて参りました。こちらはつまらないものですが、宜しければお召し上がりください」


「和気清仁様ですか。狭苦しいところにお出でくださいまして、こちらこそ有難う御座います」

「うーん、若野……まあいいや」

「あら、そうでしたか。私ったらとんだ勘違いを、ほほ。わざわざこんな素敵な贈り物まで恐縮です……ここ、これはぁッ」


 手土産を受け取った母親が尻もちをついた。父親が起こそうとしゃがむと、彼も尻もちをついた。


「あああああの、こんな、こ、高級な、え、私死ぬのかしら」

「だだ大丈夫だ。貴族様には日常の食べ物なだけだから」


 そんなに腰を抜かされる程高級な物を贈ってしまったのか。清麻呂から受け取ったものを渡しただけなので、この饅頭のような食べ物が高級な食品だとは思ってもみなかった。


「全然お気になさらず、ご家族で召し上がってください」

「ああ有難う御座います」

「ささッこちらへどうぞ」

「お父さん、お母さん」


 空回りする様子に、北野が口を挟む。


「清仁様は畑をとおっしゃっているでしょう。お忙しい方ですから、すぐに畑に案内します」

「そうか。そうだな。小さな畑ですが、ご見学なさってください。北野、宜しく頼む」

「はい。では行きましょ」

「それでは、見学させて頂きます」


 軌道修正されてよかった。二人で会釈して外に出ると、家の中から「北野の服はどうしたのか」と言い合う声がした。そういえば理由を言っていなかった。後で北野が説明するだろう。そこでまた清麻呂のような勘違いをしなければいいが。


 家の奥に行くとすぐ畑があり、いくつかの野菜が育てられていた。これだけあれば、自給自足で生活出来そうだ。


「おお、すごいですね」

「有難う御座います。畑を褒めてもらえることがないので嬉しいです」

「そうなんですか」


 辺りを見渡すと畑がいくつもある。農民が沢山住んでいるのだろう。仕事内容が皆一緒であれば、褒め合うことはないのかもしれない。


「お好きな野菜があったらおっしゃってくださいね」

「有難う御座います」


 北野に育て方のコツを聞きつつ、レタスをもらい、大根の種ももらった。大根は早く育つと言われたので、帰ったらさっそく植えてみよう。


「レタス、おはぎちゃん食べる?」

『ぷ』


 食べなくても平気らしいが、食べられるなら食べてほしい。清仁はおはぎと一緒にスキップで帰った。

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