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『これ、こんなところで寝たら風邪を引くぞ』

「ん?」


 誰かに肩を叩かれて目が覚めた。おはぎかと思ったが、おはぎは足元でぷうぷう寝ている。可愛い。


 何時だ、服を探ったがスマートフォンが無かった。そうだ、清麻呂に貸していたのだ。


「どこまで行ったんだ、あのおじさん」


 そう思って立ち上がったところで、ちょうど清麻呂が走ってきた。


「待たせた! いやぁ、私の才能が素晴らしくて時間を忘れていた」


 才能はどうでもいいので、早く返してもらおうと右手を差し出したら、握手された。すぐに手を振りほどいた。


「手じゃなくてスマホ返してください」

「おお、そうかそうか」


 満面の笑みで清麻呂がスマートフォンを取り出すが、その下には随分と上等な服があった。


「スマホに踏まれてるその服は?」

「お、気付いたか?」

「だってスマホより目立ってるし」

「これは朝服だ」


 朝服だと言われてもさっぱり分からない。清仁が首を傾げていると、清麻呂がそれを押し付けてきた。


「お前に上げよう」

「これを!?」


 明らかに立派なものを急に上げると言われても、素直に喜んでもらっていいものなのだろうか。


「すまほの礼だ」

「ああ、なるほど。それなら頂きます。気を遣ってもらってすみません」

「それと、よく考えたら普段着で桓武天皇にお会いして無礼過ぎたからな。次お会いして罰を与えられたら困る」

「結構重要なことじゃないですか」


 そういえば、今着ている服は正装ではないことを思い出した。寝る時に布団代わりにもしている。それで天皇に進言しに行ったかと思うと、よく何も無く帰れたものだ。


「あの時は天皇の機嫌が良くてよかった。これからは外ではこれを着なさい」

「分かりました」


 受け取った服には何やら飾りの付いた帯や冠まである。仰々しい服というか、清麻呂と全く同じように見える。


「これ、清麻呂さんの服ですか?」

「うむ。私のだ。洗濯したから綺麗だぞ」


 綺麗かどうかを聞いたわけではない。たしか、昔は色や服の形などで身分が分かったはず。つまりこれは、身分が高い者が着る服ということだ。清仁は貴族ではないので、一般庶民である。


「身分詐称では?」


 いいか悪いかでは言えば悪い。現代なら処罰ものだと思う。だって、身分を偽って、天皇に謁見するのだ。


「問題無い。私が証人だ。それに、清仁は私の子孫、私の親戚。おかしなところはない」

「おかしなところしかないと思います」


 もう、清麻呂がいいと言うのだからよしとしておく。


「そうだ。いっそ私の子どもになるか」

「いえ、そこまでは結構です」

「少しくらい悩んだっていいではないか」


 新たな罪が追加されてしまう。それに、あくまでここは仮の住処。出来ることなら、今日にだって現代へ帰りたいのだ。清麻呂と親子関係を結んでしまえば、ここで定住することになってしまう気がする。望んで来た身ではないので、それだけは避けたい。


──でも、役人一覧名簿全部暗記してる人がいたら、すぐバレそうだなぁ。まあ、そんな人に会う確率はなかなか無いか。


 服を持ち帰り国守に報告したら「正四位下!」と叫ばれ、狐を呼ばれた挙句腹に重い狐パンチを浴びた。ひどい。

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