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勇者が街にやってきた  作者: 覧都
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第八十五話 魔女と勇者の戦い

黒勇者の中から二人が走り出した。

黒勇者の中でも飛び抜けて大きな二人である。

そして背中にあの樽を背負っている。

角も羽も生えている二人だった。


メイの足が止まり、相手の角のある黒勇者も足を止めた。

デラも、足を止めて、目の前の角黒勇者と間合いを取っている。


先に動いたのは、メイだった。

だが、角黒勇者はニヤニヤしながらこれを余裕でかわした。


「ふふふ、デラ、一段ギヤをあげなさい」


この言葉とともに、角黒勇者の余裕はなくなった。


「がはっ」


メイの前の角黒勇者が膝をついた。

メイの風魔法が炸裂したのだ。

横を見ると、デラも相手を倒し終っている。


「全軍でかかれーー」


その言葉とともに軍が動き出した。

そして、声をかけた本人は一目散に逃げ出していた。


メイは軍勢とは違う方向に、手を伸ばし、それが分るように杖を持っていた。

もちろん即興で、今魔法で造り出した物だ。

杖の指し示した方に、青白い稲妻が大量に現れた。


ガラガラガラ、ドオオオオーーン

ビリビリビリビリ……


地響きがしばらく続いた。

これが何を意味するのか、黒勇者達には十分伝わった。

黒勇者の進軍が自然に止まり、多くの者の力が抜け座り込んだ。


「あなた達の指揮官は逃げました。降伏しなさい」


メイが叫んだ。


「武器をすてろーー、死にたい奴は相手になってやる!」


デラも叫んだ。

その言葉を聞くと何百人かが立ち上がった。

死んでもいいから戦おうという者達であろう。


「デラ、黙りなさい!」


メイがいつになく、強い口調で言った。

メイはすでに全員を助けるつもりなのだと、デラは瞬時に理解した。


「はっ」


大げさにひざまずき、頭を下げた。


「皆さんに、食事を用意します。これを食べてみてください」


メイはここで自らの姿をさらけ出した。

透明をやめたのだ。

そして両手を広げた。

大地に多くの机が現れ、その上に沢山の牛肉のタマネギ甘煮が現れ、炊きたての美味しいご飯、そしてペットボトルの水が現れた。


あたりに甘い匂いがただよった。

黒勇者の口に唾がたまった。


突然四人の女性が黒勇者の前に現れた。

ヒノ、アリア、ハンナ、メアリーの四人である。


「皆さん、お手伝いをお願いします。シロちゃん、クロちゃんもお願い」


メイが言うとシロとクロが、メイと同じぐらいの歳の美少女姿で現れた。




「いただきます!」


ヒノが黒勇者の前で食べて、飲んで見せた。


一番下っ端なのだろう体の小さい黒勇者が、数人毒味で歩いてきた。

その、下っ端黒勇者が、一口食べる。

全員無言で膝をついた。


黒勇者の集団からざわめきが起った。


下っ端黒勇者はしばらく沈黙の後叫んだ。


「うまーーーーい!!」


そして一杯目を数秒でかき込み、二杯目をかき込んだ。

二杯目の後に水をガブガブ飲み。

また叫んだ。


「み、水がうまーーい」


この言葉が号令になり黒勇者が集まり、


「いただきます!」


黒勇者達はヒノのまねをして食べ出した。




黒勇者達が、うれしそうに食事をし出すと、メイにデラが涙ぐんで近づいてきた。


「メイ様、ありがとうございます」


「まだ、わたし達はやることがありますよ」


メイは再度姿を消すと、デラとともに黒勇者の陣に歩いた。

そこには、檻が幾つもあり、捕らえられた人々が、片隅に身を寄せ合って、今日食べられるのか、明日食べられるのか、という恐怖の中で生きていた。


「皆さん、私はガドです。助けに来ました」


「おおおお、英雄様、ガド様」


低い声が漏れた。

メイはデラにカギを開けさせると中に入り、おむすびと水を与えた。

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