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勇者が街にやってきた  作者: 覧都
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第八十四話 激突

「デラ、臭いよー、ご飯にするから洗ってきてー」


「はっ」


メイはこの時間を利用して、三人の部屋を準備した。

部屋の家具はメイの部屋と同じだ。


そして食事の準備をする。


「えーーっ」


ヒノが驚いている。


「今日は牛丼じゃないんですか」


ヒノは牛丼が食べたかったようだ。


「今日は、この前食べた、牛肉の串焼きです。タレは牛丼の味を濃厚にした感じで作ってみました。そして、スープとご飯です」


もちろん、メイが頭の中でおいしいを、イメージして魔法で造り出した物だ。


「メイ様、助かります、持っている食料も丁度少なくなっていた所なので」


アリアは、持っている食料が減っていて、少し心配していた所だったのだ。


「あらそうですか、明日からは食事は私が用意します。気が付かなくてすみませんでした」


「えっ」


アリアとハンナとメアリーは三人そろって驚いた。


「では、どうぞ」


全員の準備が終るとメイが食事をすすめた。


「いただきます!」


ヒノが食べる前に、手を合わせてそう言った。


デラは気にせずむしゃむしゃ食べ始めたが、乙女の三人は気が付いた。


「なんですか、それは?」


アリアは気になって聞いてみた。


「私も、時々忘れるのですが、あい様とサエ様がやっているのを思い出しました」


「いい言葉ですね。いただきます!」


手を合わせてそう言うと、アリアが食事を始めた。

ハンナとメアリーも真似をして食事を始める。

デラは、チラリと横目で見るだけで食事を続けている。


「おいしーー!! な、何ですかこのお肉ー、柔らかくて、おいしい肉汁があふれてきます」


ヒノが叫んでいる。

他の六人がすごい勢いでうなずいている。


「牛丼のお肉を厚切りの状態で、焼いた感じにしました」


丁度、有名ブランド牛の霜降り肉のようになっている。

この世界でのお肉は、固い赤身のお肉なのだ。


「かかっている、タレも美味しいです」


アリアも絶賛である。

メイは赤い顔をして上機嫌になっている。

さっきまで少しむくれていたのだが。

小川で丸裸にされたことは忘れてしまったようだ。


食事が終ると乙女の三人は部屋を案内された。

それぞれが個室を用意されていて、全員喜んでいた。


夜、全員が寝静まった頃に、見張りをしているデラの横にちょこんとメイが座った。


「デラ、真の国はどうですか」


「久しぶりに、歩きましたが、荒野になっています」


デラの表情が曇った。


「真の国の人達も苦しんでいるのですね」


「メイ様、真国人はほぼ死に絶えています」


「でしょうね」


「ご存じなのですか」


「いいえ、そう感じていただけです」


「メイ様はやはりすごいですな」


「明日ぐらいですか」


「明日でしょうな」


「明日なら丁度いいです。お休みですから」


ガラガラガシャーーン!!


すごい音がした。メイが後ろを見ると四人がこっそり様子をのぞき見していた。


「皆さん、いつからのぞいていたのですか」


「真の国はどうですかの、あたりからです」


四人の声がそろった。


その夜、メイはヒノとハンナの間に挟まれて眠った。






翌早朝、メイは赤い服を着て透明になり、昨晩の移動地点まで魔法で移動した。

ヒノも本体で同行した。

しばらく歩くと、空気の雰囲気が変わった。

多くの人が吐き出す息が気配としてわかるのか、メイ達に緊張がはしった。


そして、黒い勇者の軍勢が目の前に現れた。


「あるじ……」


デラは振り返りメイを見た

デラはメイが赤い服を着て、透明の時にはあるじと呼ぶ。

メイが正体を隠しているときに、メイ様と呼べないからだ。


「皆さんは、ここから動かないでください。ここからはわたしとデラ二人で行きます」


ヒノ、アリア、ハンナ、メアリーは、引きつった顔をして、小さくうなずいた。


四人と黒勇者の軍勢の丁度中間に来ると


「我が名はガドーー!!」


メイは叫びながら走り出していた。

デラはその三歩後ろを、棍をかまえて、控えめについていった。

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