第八十話 美しい街での戦い
「今回は俺一人で行く」
「えっ」
ここにいる者が全員驚いた。
「少しどんな様子か見てみたい。ばあさん頼む」
俺は、ばあさんの移動魔法で西洋の街に移動していた。
古い街だが、地震の影響を受けて無くて綺麗だった。
「何を考えているのじゃ」
ばあさんの分体が俺の手を引っ張りながら聞いて来た。
「黒勇者と勇者そして人間が、仲良く暮らしてないかなー何てね」
「それは出来ておらんのー」
急に開けた場所に出た。
その広場の中央に噴水が有り、街に住んでいた人が大勢座らされている。
かたわらに、食べ物が置かれている。
恐らく、街の人が黒勇者共の食料になり、奪った食料は勇者が食べているのだろう。
「もしこの世界に、俺がいなかったら、どうなっていたのだろうか」
「……」
ばあさんは答えてくれなかった。
恐らく、お前の想像通りだということだろう。
「なあ、ばあさん、ばあさんはこうなることが分って、この世界に来てくれたのか」
「ま、まあ、そうじゃな」
うん、なんか歯切れが悪い。
まあいいか。
「それなら、本当に賞賛されるべきなのは、俺じゃなくてばあさんなんじゃねえのか」
「それは違うぞガド。もし眷属がおぬしでなければ、世界を救う選択をせず、世界を支配しようとしたかもしれん。黒勇者も勇者も皆殺しにしていたかもしれん。やはり、賞賛されるべきは、ガドおぬしじゃ」
「きゃーーー」
勇者が街の人を数人剣で刺した。
「行こう、ばあさん」
「うむ、こっちじゃ」
広場に近い大きな屋敷の前に着いた。
こっそり中に入ると、黒勇者が二人いた。
上の階に行くとさらに二人、その上の階には三人いた。
そしてその上の階に見張りが二人。
ここからだと広場がよく見える。
ファンが勇者を倒しているときに、その様子を見てここから出て来たのだろう。
ファンは、強い。
恐らく人間では最強だろう。
だが、黒勇者一人の相手がやっとだ。
「おい」
「だ、だれだ、がはっ」
「うっ」
そのファンより俺はさらに強い。
だが、その強さはばあさんの魔法によるもの。
本当の俺の強さなど、勇者には全く通用しないだろう。
見張りの二人を倒して、ばあさんに学校へ移動して貰った。
「よう」
「何だ、うが」
「ごふっ」
「げはっ」
俺の場合。正面から近寄っても不意打ちになる。
透明だからな。
三階の三人も学校送りだ。
「ぎゃあーーー」
「なんだ」
「なにがあった」
「げぼっ」
「がっ」
「ぐえーー」
二階では、一人目に悲鳴を上げさせた。
それを聞き駆けつけた一階の奴らもまとめて、殺さないように手加減して殴り倒した。
四人とも学校送りにした。
俺は急いで広場に走った。
そして
「勇者共、真国の勇者はもういない。降伏しろー!!」
大声で叫んだ。