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勇者が街にやってきた  作者: 覧都
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第七十九話 ここで着替えちゃだめ

「やあ、ロボさん」


「おお、ガト様ひなたぼっこですか」


ロボというのは一番でかい黒勇者で、結構偉い人らしい。

キツノの体が硬直している。


「ふふふ、日本語がうまくなりましたね」


「おかげさまで……」


俺はこの人にも、勇者の救助を頼もうと思っている。

ただ、殺してしまわないか心配していた。

だが昨日のキツノを見ていると、その心配もなさそうだ。


「ロボさん、俺に協力してくれませんか」


「ふふふ、大王がいない今、わしはガド様に仕えているようなもの、命じてくだされば、何でも致しましょうぞ」


黒勇者の強さはあり得ない程強力だ。

一国の軍隊にも相当すると思う。

ここにいる勇者と黒勇者を合わせれば世界征服も可能じゃないかと思うほどだ。


「一つ教えて欲しいのですが」


「はい、何でしょう」


「潜んでいる真の国の勇者全員に、連絡を取る方法はありませんか」


「無理ですな」


「でしょうね。それだと今後、勇者を仲間にした人間が、悪いことをする事件は増えるでしょうね」


「いつでも言ってくだされ、わしはいつでもガド様の力になりますので」


「ありがとう。ほかの真国の勇者にも、力を貸して貰いたいと、お伝えください」


「わかりました」


「……ふーっ」


「何を考えておる」


ばーさんが声をかけてくれた。


「結局、人間も悪いことばかりしているなーと思ってね」


「むしろ、勇者のほうが礼儀正しいと思うのか」


「ふふふ、まあね」


「偏見も差別もなく、勇者さん達と暮らせたらいいわね」


あいが口を挟んできた。


「あーーっ」


こんな時に気が付いた。

何でナガノさんをハセガワさんと間違えたのか気が付いた。

漢字で書くと、長野、長谷川で最初の字が両方、長だ。

頭の中で勝手に、漢字で名前を思い浮かべて間違えたんだ。


「ど、どうしたの」


全員が俺に注目している。


「いや、すごくどうでもいいことだから、気にしないでくれ」


「えーーっ、余計に気になるでしょ」


「いや、本当にどうでもいいことなんだ」


しつこく聞いてくるから、しかたがないので、一から説明した。


「はーーっ、本当にどうでもいいー」


「だからそういっただろう」


「聞いて損した」

「時間の無駄じゃった」


くそー自分たちで聞いて来たくせにさんざん言いやがる。


「くすくす」

「はーーはっはっは」


全員が笑い出した。




「ふむ、やばいのー-」


ばあさんがつぶやいた。

同時にボロボロのファンの姿が現れた。


「くそおおーー」


「何があった」


「はめられた。あいつら手を組んでやがった」


どうやら、黒勇者と勇者が手を組んでいるようだった。

勇者と黒勇者は、敵国関係だが、言葉は通じるし、すでに国を失っている。手を組むことは想定しておくべきだった。

しかも、街を一つ占領しているらしい。


しかし、ファンは服もボロボロですごいことになっている。

透明なのをいいことに、俺は穴が開くほど見つめている。


「はっ」


あいが何かに気が付いた。


「ファンちゃん! 服を着て!!」


「ちっ、おれは男だ。パンツ一丁でも大丈夫だ」


ファンは超ロリ美少女だ。

だが、心は男だ。

しかし、あいは許さなかった。


「ちゃんと服を着て!!」


あいの言うことを聞かないと、ごはん抜きになるので誰も逆らえない。

もぞもぞここで脱ぎだした。


「ここで着替えちゃダメーー」

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