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勇者が街にやってきた  作者: 覧都
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第七十三話 いざ敵国へ

「恐らく、濃い原液のような霧を吸い続けると、あのような姿になると思われます」


デラがメイに自分の推理を伝えた。


「強そうですね」


メイの頬を冷たい汗が流れた。


「ふふふ、相手の強さがわからないときは、ぞくぞくする」


この状況でデラはうれしそうだった。


「相手の強さがわからない以上、わたしが行きます」


「あるじ、待ってくれ! こういう場合主人を守って眷属が死ぬものだ」


「何をしている、二人まとめてかかってこい」


角黒勇者は余裕だった。

その言葉を聞いた瞬間に、メイもデラも相手の元に走っていた。

メイもデラも眉毛をつり上げ怒っていた。


「ふあーっはっはー」


角黒勇者は、二人の攻撃を軽く避けていた。


「デラ、ここはわたしに任せなさい」


「いや、あるじの前に戦うのが、眷属の勤め」


すでに角黒勇者の強さはわかった。

重力二十倍でほぼ互角という感じだった。


「きさまら、舐めているのかーー」


角黒勇者が吠えた。


「うるさーーい!! 十倍で攻撃します」


その瞬間にメイとデラの拳が、角黒勇者に炸裂した。

角黒勇者が木の葉のように十メートル程吹っ飛び、殴られたところが深く陥没していた。


「ふふふ、デラあなたの強さが見てみたくなりました。一度見せてください」


「よ、よろしいのですか」


「全開で来なさい」


デラは、全力の拳を振るうべく構え拳に力を込めた。


「あるじー、いくぞー」


「来なさい」


デラの拳は最早パンチと呼べるものではなかった。

竜巻の様な風が起った。

その風は、整列していた黒勇者の方に向かって進んで行き、黒勇者が大勢巻き込まれて舞い上がっていた。

だが、メイの姿は消えていた。

いや、メイは透明なので最初から消えていたが、赤い服までが見えなくなっていた。


「ごぶうーー」


メイの拳がデラの脇腹に決まった。

デラの体は角黒勇者の横まで飛ばされて倒れた。


「ぎゃーーー、ばけもんだーー」


黒勇者達は、国境を越えて自国へ逃げ帰っていった。


「恐ろしい攻撃ですね。殺す気ですか?」


メイが手を差し出した。


「ふふふ、俺ごときがあるじを殺せるわけがない、だが重力は五倍だった」


「わたしは十倍でしたよ」


「……」


デラは驚いた顔をしてメイを見つめた。


「す、すごすぎです」


アリアが駆け寄ってきた。


「デラ、あいつらどんどん強くなりますね」


「で、ありますな」


「このまま真の国へ攻め込みましょうか」


「な、何ですと」


「二人で何処まで出来るかわかりませんが、これ以上強くなる前に戦った方が良い気がします」


「……」


デラは考え込んでいた。


「くすくす、私達を忘れて貰っては困ります」


シロとクロが妖精のような姿を現した。


「そうですね、四人ですね」


メイはうれしそうな顔になった。


「あの、私も同行を許しては貰えませんか」


アリアが申し出た。


「私も同行したい」


ハンナとメアリーも同行を申し出た。


「良いのですか、生きて帰れるかわかりませんよ」


メイが三人を見た。

三人はうれしそうにメイの顔を見た。

このあと、同行していた、三十人のアリアの部隊は帰るように命令され、寂しそうに王都に帰っていった。

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