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勇者が街にやってきた  作者: 覧都
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第七十一話 あの日の思い出

デラは、夜の偵察が終るまでは、何も出来ない為林の奥でゆっくりしていた。

そのデラの耳に悲鳴のような声が聞こえた。


「ぎゃーーー」

「うわーーー」

「たすけてーー」

「デラ様ーー」




「メイ様、俺を呼んでいる声がする」


「そんなわけは、無いと思いますが、様子を見に行きましょうか」


「はっ」


林の中を静かに移動し、声が聞こえた方を見てみた。

そこには青い鎧を着た者が三十人ほど、ぐちゃぐちゃにされ一カ所に集められ山積みになっていた。


「あら、ツオの勇者が来ているみたいですね」


メイは落ち着いていた。

なぜなら、メイは激怒していたのだ。

わが眷属の扱いに不服だったのだ。

そしてバンガ軍を嫌っていた。

但し、デラを助けたあの三人を除いて……。


「デラ様ーー!!」


アリアの断末魔の声だった。


「よりによって、来ていたのですか。デラ、私も行きます」


メイは、可愛い二頭身人形から、本体に入れ替わりいつもの赤い服を着て透明になった。

その後ろをデラが歩いている。

黒い勇者は十人を越えていた。


「何者だ!!」


黒い勇者が叫んだ。


「……」


メイは何も答えなかった。

そして、黒い勇者が近づいてくると、二十倍の重力魔法を使った。

ここの黒い勇者は、背中に黒い霧の樽を背負っていない。

ペタンと地面に張り付くと動けなくなった。


「デラ、成敗!!」


デラは耳から棍を取り、大きくした。

デラの武器の棍はメイの魔法で伸縮自在になっていた。

普段はピアスのように耳たぶに刺している。

そして、その棍を大きくすると、次々とどめをさしていく。


「クロちゃん、ツオ国の勇者さんは助けられますか」


「ここまで、ここまで、ぐちゃぐちゃになって……」


黒勇者は、仲間の復習の為、必要以上に攻撃をし、人の形をしていない者までいたのだ。


「やはり無理ですか」


メイが悲痛な表情になった。


「せめて、あの三人だけでも助けて上げたかった。もう少し早く気が付いて上げられれば……」


メイはうつむいて泣きそうになっていた。


「ここまでぐちゃぐちゃになっていても、大丈夫です。はい全員治しました」


「はーーーっ、クロちゃーーん!」


メイは複雑な表情をしていた。

目からはポロリと涙が流れ、笑いながら怒っていた。


きょろきょろ何が起ったかわからない、ツオ国の勇者達に笑顔でメイが話しかける。


「大丈夫ですか、しばらくここで、動かないで下さい。デラ行きますよ」


「はっ」


デラは、眩しく輝くような笑顔でハンナにカバンを預けた。


「あれが伝説の透明な英雄ガド様……」


ツオ国の勇者の中で誰かがつぶやいた。


「あれが、ガド様」

「ガド様――!!」


メイの後ろでガド様コールが起っていた。

その声を聞き、村の塀の中から黒い勇者が出て来た。

だが、バラバラで出て来た為、メイが風魔法で、デラが棍を使って次々かたづけていった。


「はーーデラ様もすごい、さすがはガド様の眷属」


ツオの国の勇者は、デラの勇姿を見てため息をついていた。


村に入ると、残っていた数人の黒い勇者が、逃げていった。

デラが追おうとしたが、


「デラ追わなくてもいいです。助けて上げましょう」


デラは素直にしたがった。

村に入ると、村人が中央に精気のない顔で集められていた。

その光景を見たメイの口からは、


「ガド様……」


小さな声が漏れていた。

だが、余りにも小さかったので誰にも聞こえていなかった。

メイはあの日のことを鮮明に思い出していたのだ。

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