第七十話 透明でも裸は嫌
真の国の全身真っ黒な毛におおわれた、真っ黒な鎧を着る黒勇者は、動かなくなった仲間二人を引きずり、小さな村に入って行った。
村は木製の魔獣よけの高い塀に囲われている。
今はそれが村人を逃げ出さないようにする塀になっていた。
デラは村に近い林に身をひそめていた。
「塀があって中が見えないわね。透明になれれば偵察に行けますが、私は体しか、透明になれません。あっ、先生、透明にしますので行っていただけませんか?」
メイがデラの背負うカバンの中でヒノに質問した。
「はーーっ、なんで私なら大丈夫だと思うのですか。私だって透明になったからって、裸にはなれません。はずかしいです」
「では、やはり夜までまって偵察をしましょう」
デラ達は林に身を潜め、夜を待った。
「バンガ様、お伝えしたい事があります」
アリアが老将バンガに声をかけた。
「なんだ」
小太りの老将が、アリアを見る。
「はっ、デラ様を一人で行かしてしまいましたが、大丈夫でしょうか」
「ふん、勝手に行ったんだ、こっちの知ったことでは無い」
「そうですか、真国の勇者はこれまでガド様しか、倒した人はいませんでした。ですがヒの国は彼を真国の勇者を倒す為、派遣して下さいました。聞けばガド様の眷属という事です。そんな方を一人で行かせたと分れば、バンガ様の名声に、傷が付くのではないかと心配したまでの事です。お忘れ下さい」
アリアは一礼をして下がろうとした。
「ま、待て。援軍を送ろうにも、志願する者がいないのではないか」
「私にお命じ下さいましたら、今すぐ向かいますが」
「……うむ、わかった。援軍に向かうことを命ずる」
「はっ」
アリアは、一礼するとくるりと反転する、その時アリアはにやりとした。
アリアの、姿が見えるとハンナとメアリーが駆け寄った。
「アリア姉、どうだった」
「ふふふ、援軍の命令は勝ち取った。直ぐに志願兵を集めてくれ」
志願兵は三十人ほどしか集まらなかった。
わざわざ、死にに行きたい者など多くはいなかったのだ。
集まった三十人は全て女だった。
そしてアリア達三人より美人だった。
「お、お前達、死ぬかもしれないんだぞ」
集まった者達にアリアは呆れていた。
下心が丸見えだった。
「本当にいいんだな」
アリアが念をおして聞いて見た。
「はいっ」
全員笑顔でいい返事をした。
こいつら全員、デラ様狙いなのかと思うと、頭が痛くなるアリアだった。
「メイちゃん今から行きます」
ハンナだけはメイ狙いだった。
それはそれで、頭が痛くなるアリアだった。




