表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者が街にやってきた  作者: 覧都
62/86

第六十二話 助けて下さい

ヒノは学校に着いてから直ぐには、メイに声を掛けなかった。

必死に授業を受けて暇があれば、ノートを穴が空くほど見て、暗記している。

そんなメイの姿を見ていると邪魔が出来なかった。


「メイちゃん、帰りましょう」


声が掛けられたのは、結局授業後だった。

護衛で来ているデラは校長室に待機しているので、クロに迎えに行って貰う。


「はい」


「あのー」


話しにくそうに、メイに呼びかける。


「はい、何ですか」


「えーーと、あのー」


ストレートに話すと絶対嫌そうな顔をするので、何とか喜んで来てもらいたかった。

どう言えば良いのか必死で考えている。


「はい、何ですか?」


「メイちゃんの牛丼の噂を聞いて、食べたいと言う人がいるのですが……」


「えっ」


「作って貰えないでしょうか」


「くすくす、直ぐに行きましょう」


メイは嬉しそうだった。

その顔を見るとヒノは罪悪感にさいなまれた。




ギルド二階のギルド長専用の応接室でヒミは怒っていた。


「ゴウ、どうなっているのですか、もう三時間ですよ」


ヒミが言い終わらないうちに、ドアがノックも無しに開いた。


「メイちゃんこの人です」


ヒノが手のひらでヒミの方を示した。


「じゃあ、この机の上でいいですか」


メイが机に近づき両手を前に出し目を閉じた。

すると辺りにいい匂いがただよった。

深い大皿にたっぷりの薄切り牛肉のタマネギ甘煮が出た。

その横には炊き立てご飯が出された。


「出来ました。冷めないうちにどうぞ」


メイが嬉しそうに後ろを振り返った。


「な、な、な、何ですかこれはーーー」


さっきまで怒っていたヒミが真っ先に駆け寄った。


「た、食べてもよろしいのですか」


ヒミがメイの返事も待たずに、熱々ご飯に具材をたっぷりのっけてかき込んだ。


「ぎゃああーーーあ、うまーーい」


ヒノのように奇声をあげて食べ出した。

ヒミはこちらの世界に来て諦めていた食べ物だった。

一年以上ぶりに食べた味はそれ自体が美味しくなる調味料で、もう信じられないくらい美味しかった。


「お替わりしても、よろしいですか」


「どうぞ、どうぞ」


ここまで喜んで貰えば、作った方も嬉しくなる。

メイが超ご機嫌になっているのをみて、ヒノも安心している。

気が付くと、ゴウとデラがガツガツ食べている。

シロとクロまで少女の姿で実体化して食べている。

もう、ヒノの分が無くなっていた。


「ぎゃああーーーあ、私の分が無い」


ヒミと同じような奇声を上げて叫んでいた。

よく似た姉妹である。

その悲鳴を聞いてもう一度、同じ物を出して、自分は机の横に出した水を、コクコク飲み出した。

メイは水を飲みながら、じっと美味しそうに牛丼を食べているヒミを見つめている。



「ふーー、美味しかった。ガド様ごちそうさまでした」


ヒミはメイに向かってそう言った。


「先生!!」


メイが眉をつり上げてヒノを呼んだ。

ヒノがビクンと少し飛びあがった。

そんなメイを見て一早くヒミが反応した。


「ガド様、助けて下さい」


ヒミは椅子から飛び降りて、メイの手を取ると頭を下げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ