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勇者が街にやってきた  作者: 覧都
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第五十七話 うまーーい

「うまーーい」


ギルドの中に四人の声が響いた。

その声を聞いてメイも一口食べてみた。

ほっぺたがおちるほど美味しかった。


「これはあい様の牛丼の肉と同じですなー」


ゴウが口一杯に頬張って感想を言った為、少しつゆを飛ばした。


「うん、ガド様が、あい様の料理は天才と言っておられました。でしたらメ、ガド様も料理の天才です」


ヒノがベタ褒めだが、そう言っていいほどのうまさの肉ができあがっていた。


「でへへ」


メイは喜んでいた。

喜びすぎて変な顔になっていたが、透明である為誰にもわからなかった。

デラも、人間の肉よりうまいと思っていた。


「肉は合格ですが味が違いますね」


「そうですな、あの味は極上でした」


ヒノもゴウも宙を見ながらその時の味を思い出しているようだった


「こ、これよりも美味しい物があるのですか」


受付嬢が、目をまん丸にして驚いている。


「甘かったわね」


ヒノがひらめいたように言った。


「そうじゃ、甘かった」


ゴウも賛成した。


「甘い?」


メイには甘いがわからなかった。


「ガド様は甘いがわからないのですね、私が取ってきます」


受付嬢は今食べた肉より、美味しい肉が食べたくてしょうが無かった。

いそいそと厨房へ行き、皿一杯の葡萄を取ってきた。


「ガド様、甘い甘い葡萄です」


メイは一口食べてビックリした。

すごく美味しかったのだ。


「こ、これが甘いですか」


ヒノもゴウも受付嬢もコクコクうなずいた。


「肉にこの味を加えろと……」


メイは葡萄を口一杯に頬張りながら言う。


「それにさらに色々なうま味とタマネギを加えた味です」


受付嬢がタマネギを取りに行ったのは言うまでも無い。

メイの前に深い大きな皿が用意された。

すでにギルド中の人達がこの机のまわりに集まっている。

メイは、子供の頃食べた残飯も時々すごく美味しいときがあった。

その時の味すらも思い浮かべ、グツグツ頭の中で煮込んだ。


大皿の上に手を置くと、集まっている者がゴクリと唾を飲んだ。

山盛りの、牛肉のタマネギ甘煮が出来上がった。

味奉行のヒノとゴウが口に運んだ。


「…………」


全員が唾を飲み込んだ。


「うまーーーい」


ヒノとゴウが大声を上げた。


「ガド様、あい様を越えていますーー」


「おおおーーーお」


囲んでいる人達から歓声が上がった。


「ガド様、この皿におむすびの塩抜きを熱々にして入れて下さい」


ヒノはスープ用の深い皿をメイの前に出し、熱々ご飯を入れて貰った。

それに、具をたっぷり乗せる。

そして満面の笑顔で口に運んだ。


「ぎゃーーーー」


すでに悲鳴であった。

ヒノの悲鳴を号令にして、次々メイ特製牛丼が振る舞われた。


「うおーーお、うまーーい」


デラが大声を出した。

メイはこれが一番嬉しかった。


メイは、皿も魔法でだして、牛丼の具をいくつかの机に置いて行った。

熱々ご飯も器ごと魔法で出してほしがる人に次々与えた。

そして最後に自分で食べた。


「うまーーい」

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