第四十九話 二人で就寝
ヒノが川から上がって濡れた体で震えていると、メイが白い服を着て現れた。
目は涙目で頬はぷくっとふくらんで、眉毛は吊り上がっている。
一目で怒っているのがわかる。
でも、着ている服がよく似合っていて、ヒノは可愛いとしか感じなかった。
「メイちゃん、その服似合っていて、すごく可愛い」
「そ、そうですかー。この服はガド様にも褒められたんですよー」
メイの機嫌はあっという間に直ってしまった。
「はい、これフカフカです。体を拭いて下さい」
ヒノにタオルを渡した。
ガドから名前を聞いていなかったので、メイはフカフカと呼んでいる。
「あと、下着と寝間着です」
「あら、色が変わっています。薄い桃色ですね。見た目もかわいくなってます」
「色を変えたり、少し形を変えるのは割と簡単です」
「すごい、わたしの胸にぴったりです。すごく楽になりました」
喜ぶヒノを見ていると、メイも楽しくなっていた。
とても楽しそうなメイを見て、シロとクロは感動している。
いつも無表情で暗いメイしか見ていなかったので、キラキラ輝くような笑顔のメイが見られて最高の気分だった。
ヒノに心から感謝していた。
その夜、ヒノはベッドで眠れないでいた。
メイが優しくて可愛い、ただの女の子とわかって、恐ろしい戦いに巻き込んでいいものかどうか悩んでいたのだ。
この先にある戦いは地獄のような戦いで、敵はこちらに情け容赦が無い。
私はメイちゃんに一緒に戦って欲しいなんて言えない。
ガチャ
ドアが開く音がした。
(な、なに)
「あのー、先生起きていますか」
「はい」
メイがヒノの部屋を訪ねてきたのだ。
メイはずっと孤独を感じてきた少女だった。
今日のヒノとの時間はガドと一緒だったときのような、とろけそうな懐かしい優しい時間だった。
「メイちゃん」
ヒノはベットから起き上がり、ベッドの端に座ると両手を広げる。
メイはヒノの姿を見てハッとした表情になった。
そしてメイはチョコチョコ歩いてくると、ヒノの両手は無視してベッドの奥にヒノに背を向ける形で横になった。
ヒノは何も言わずメイの背中を抱きしめるように横になった。
そして人差し指でメイの耳を触った。
メイの耳はすごく熱かった。
ヒノはちょっぴり笑みがこぼれた。
メイは耳まで真っ赤になるほど照れているのだ。
「メイちゃん、初めて会った人に言うことじゃないけど、私はメイちゃんがとても好きになりました。あっ、でも、変な意味じゃ無いからね」
メイはくるりと体を回転させ、ヒノの顔を見上げた。
外は大量の星が輝く夜空。
ヒノは窓からの星明かりで照らされた、メイの顔が神々しいほど美しく感じた。
「お母さんって、こんな感じなのでしょうか」
とても小さな声でぼそりとつぶやいた。




