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勇者が街にやってきた  作者: 覧都
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第四十七話 思い出の味

先生の部屋は私の部屋の隣にしました。

家具は私と同じ物です。

もちろん魔法で出します。


「すごいです」


先生が感動しています。


「魔法はすごいです。何でも出来ます。でも私が駄目なせいで出来ないことが多いです」


「えっ、どういうことですか」


「それは、例えば服です。赤い服はこうして直ぐに出せます」


私は赤い服を伸ばした両腕の上に出します。

私の部屋の壁にあった服です。


「でも、もっと可愛い服よでろーー」


私の両腕の前には何も出ません


「何も出ませんねー」


先生が私の両腕を見てつぶやきます。


「そうなんです。形や着心地、色など具体的じゃ無いと出せないのです」


「何でも出来るけど、出来る事しか出来ないのですかー」


「そうです」


「魔法はメイちゃんの知識量が重要なのね」


先生はハッと何かに気が付きました。

恐らく私が必死に勉強している意味に気が付いたのでしょうか。

そして、わたしは先生の胸に視線を移します。

先生の服は胸が半分位出てしまっています。


だから余計にその圧倒的質量が強調されています。

そうです、先生のここにいる意味。

それは、私にそれを伝授することなのです。

うれしくて顔がにやけてしまいます。


視線を先生の顔に移します。

あれ、一瞬目が合ったはずなのに、先生の目が斜め上に移動しました。

あれ、先生の目が左右に振動しながら動いています。


ぐーー


「あーーっ、すみません」


先生のお腹が鳴りました。

あれ、すいませんの言葉が、助かったーに聞こえました。


「メイさん、お腹が空きませんか」


先生が恥ずかしそうな笑顔で話しかけてきました。


「わたしは魔法が使えるようになってからは空きません。でも美味しいは、わかりますので食べることは出来ます。必要は無いのですけど……」


わたしは、先生の手をとり手のひらを上に向けます。

その上に三個おむすびを出しました。

真っ白でちょっぴり塩味のおむすびです。

そして、わたしの手にはお水を出しました。


「こ、これは」


先生はおむすびを口に入れ涙ぐんでいます。


「懐かしい、日本の味」


先生はあっという間におむすびを食べて、お水を飲んでいます。


「わたしは食べ物をこれしか出せません」


「作りましょう美味しい食べ物、牛丼がいいです」


先生の目がキラキラ輝いています。


「先生が教えて上げます。牛丼はすごく美味しいのですよ」


わたしはそんなことより胸の事が知りたいのですけど。

焦る必要もないので、両手におむすびを出して一口食べました。

懐かしい、ガド様の味がします。

先生がわたしの手から、おむすびを取り、食べ始めました。


「メイちゃんは、これをガド様から食べさせて貰ったのですか」


「はい、生涯忘れられない味です」


「そう……。だからこんなに美味しいのですね」


先生の目からとうとう涙がこぼれました。

そしたらつられてわたしの目からもポトリと涙が落ちました。

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