第四十六話 楽しい時間
メイに案内された部屋に入ると、その部屋には大きなベッドが有り、部屋の入り口の横に大きな姿見用の鏡がある。
その横には、服の収納用にタンスが置いてあった。
ここで着替えをするのであろう。
大きな窓の横に勉強用の机と椅子が置いてある。
だが一つ異様な物がヒノの目に飛び込んできた。
窓の横、とは言っても机とは反対側に、赤い服が壁に掛けてあるのだ。
その服は異様であった。
胸から腹の部分がどす黒く変色している。
まるで血が付いた物をそのまま洗わず掛けてあるようだった。
良く見ると、透明のメイが着ていた服とデザインは同じだった。
ヒノの目はこの服に釘付けになった。
「メイちゃんこの服は……」
し、しまったー。
この服の事忘れてたー。
「き、気にしないでください、ただの服です」
「……」
はー、だめです。
ヒノ先生はわたしをじっと見つめています。
「私も知りたいです」
うわあ、シロちゃんまで。
「しかたがないですねー。たいした話しでは無いですよ」
うーー、たいした話しでは無いと言っているのに、全員の目がキラキラしています。
「この服はわたしの思い出の服です。おしまい」
「……はー、それで終らせるつもりですかーー。ちゃんと説明してください」
ヒノ先生がご立腹です。
「この服は、世界を救った方を最期に抱きしめたときに着ていた服です。わたしの大切な思い出のつまった宝物です」
「……ガド様」
「えっ、せ、先生はガド様を知っているのですか」
「うふふふ、私の旦那様です」
「うそー!!、嘘ですよねー!」
わたしは焦っています。
こんなに驚いたのは初めてです。
「うふふ、メイちゃんがそんなに慌てるなんて、好きだったのですか」
「はい」
はーーーしっ、しまったーー。
この人質問がうますぎる。
つい、答えてしまったー。
「羨ましいわね、こんな美少女に好かれるなんて」
先生が私の髪を左右に分けて、顔を近づけてきます。
先生もすごい美人です。
「うふふ、メイちゃんと恋のライバルかー、勝てる気が全くしません」
「でも、旦那様って」
「うふふ、それはガド様を騙して、嫁になっただけです」
ヒノ先生は悲しそうな顔になりました。
あー、先生はガド様が好きなんだと思いました。
でも、騙したとは言え、旦那様と呼べる先生が羨ましいです。
「それで、ガド様は今どこに」
私と、ヒノ先生の声がそろいました。
「先生も知らないのですか」
「そうですか、メイちゃんも知らないのですか」
「ねえ、メイちゃん、ここは部屋が一杯空いているのでしょ、私に使わせて貰えませんか」
「……、じゃあ家賃は家庭教師代で相殺します」
「くすくす」
わたしは先生としばらく笑っていました。
ガド様、今どこで何をしているのですか。
会いたいです。




