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勇者が街にやってきた  作者: 覧都
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第四十二話 暴かれた正体

「うわああ、まずい、まずい」


「どうしたのですか?」


「シロちゃん、大変なのよ。体にギルド長の臭いが、染みついちゃったのよーー」


わたしは、いったん家に帰って体を洗って、下着を着替えることにしました。

別に臭いが嫌なわけではありません。

こんな臭いでは折角気配を消しても、教室で目立ってしまうので困るのです。


わたしの家の裏には、綺麗な小川が流れているので、そこで体を洗います。

そして新しい服を着てもう一度登校します。


えー休めばいいじゃないかですって。

ガド様、わたしは純粋に授業を受けたいのです。

でないとわたしの頭の中は空っぽなのです。


もともと、捨て子のわたしは、村の雑用係。

村の当番の人から残飯を貰って生きていました。

量の少ないゴミの様なご飯は、わたしを大きく育ててはくれませんでした。

栄養失調のわたしは、痩せてのろのろ動くのがやっとでした。

多くの時間を、干し草置き場で眠って過ごしました。

だから何にも知らないのです。

学校に通う村の子供達が羨ましかったのです。


ガド様から貰った魔法は、物を造り出すことも出来ます。

最初は、おむすびとお水を出すことに成功しました。

その後わたしは、大きなお屋敷で金貨を右手に持ち、左手に同じ物が出せないか試してみました。

手に持っている物は、意外と簡単に同じ物が造り出せるのですよ。


そのお金で、学校に入学しました。

入学するのに金貨二百枚かかりました。

そして、一生懸命授業を聞いて、吸収しているのですよ。

試験の点だって五十点位は取れるようになりました。







「うわーー、トロールだーー」

「逃げろーー」

「助けてくれーー」


わたしが草むらから出ると今度は、巨人トロールです。

森に住んでいるはずのものが時々街に出て来ます。

けっこう強くて、レベルの高い勇者でも手こずる相手です。

わたしが来るのが遅かったせいで、可哀想に街の人が何人か倒れています。


「シロちゃん、行けますか」


「はい、楽勝です」


わたしの右肩には姿を消したシロちゃんがいます。

遅刻もしたくないので、今回はシロちゃんに任せます。

右手を前に出すとシロちゃんが手のひらの上に乗っかります。


「シロちゃんお願い」


トロールはパタリと倒れて絶命します。

これがシロちゃんの能力です。


「クロちゃん行けますか」


「はい」


クロちゃんはわたしの左肩の上に姿を消して乗っかっています。

そしてわたしは、倒れている街の人を指さします。

倒れている人達が不思議そうな顔をして立ち上がります。

これがクロちゃんの能力です。


「じゃあ、学校に急ぎますよ。遅刻は目立つからしたくありません」


「はい」




「見ましたか、ヒノ様」


「見ましたよ、ゴウ」


「あの子がガド様だと思って見ていれば、トロールを倒したのも、倒れていた人を助けたのも、あの子がやったとわかります。いままでの魔獣が街に来て突然死をする謎も、死んだ人が生き返る謎もこれで全部解決しました」


「ゴウ、わたしはあの子を追って学校へ行きます」


「ヒノ様お願いします。ですがくれぐれもこちらが気付いているとは、悟られないようにお願いします」


「わかっています。正体がばれていることがわかれば、雲隠れすると言いたいのでしょ」


「そこまで理解していただいておりましたら大丈夫です。お任せします」


建物の影からメイをこっそり見ていたのは、ギルト長と謎の女性ヒノです。

まえ髪で顔を隠し少し猫背にして、誰にも気付かれないようにしていたメイが、とうとう正体がばれてしまいました。

でもそのことにメイは気付いていません大丈夫なのでしょうか。


つづく

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