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勇者が街にやってきた  作者: 覧都
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第四十一話 ギルド長 

「ほれ嬢ちゃん、そんなに恥ずかしいならこれをつかえ」


パサッ

私の頭の上に汚くて臭い布が飛んできました。

後ろを振り向くと、この街のギルド長です。

がっしりとした体で、四角い顔に白い髭で、わたしに笑顔で答えます。

しかたがありません、ここはありがたくお言葉に甘えましょう。


飛んできた布はシャツでした。

しかもボタンです。

赤い服の上に羽織りボタンを留めます。

これが、また時間がかかります。


えっ、そんなに時間がかかって、黒勇者は襲ってこないのかですって。

わたしはガド様に、魔法の研究をしていると言いましたよね。

いずれわたしは、黒勇者の軍団と戦います。

一対万の戦いを想定しています。

その戦いの為の魔法をいつも考えています。


その一つが今使っている、体の重さを重くする魔法です。

わたしを中心に範囲を決めて使えます。

倍数と範囲の広さで魔力の使用量が決まります。

今は十倍で範囲は黒勇者の所まで、この位ならそれほど魔力を使用しません。


ですが、わたしを中心にするため、わたしの体の重さも十倍になっています。

だから、ボタンを留めるのも時間がかかるのです。

えっ、何ですかガド様、お前の魔法はそんなんばっかだなですって。

だったら今すぐここに来てやり方を教えて下さい。

出来ないくせに、わたしはガド様にあいたーーいのです。


ふー、ボタンは止まりましたが、この服相当に汚いし臭い。

でも、わたしはそんなこと一言もいいません。

言われると傷つきます、わたしがそうでしたから。

よし、では戦いの再会です。


黒勇者は膝をつき動けないようです。

わたしは常に体に重さ五倍の魔法をかけています。

だから十倍でも遅くはなりますが動くことが出来ます。

必殺魔法を使用させていただきます。


「ザンカイ(斬壊)」


うふふ、これはガド様が使っていた魔法を真似して使っています。

相手の体の中に風で竜巻を起こして、切り刻んで、破壊する魔法です。

最初ザンプー(斬風)って呼んでいたんですが、なんか格好が悪いので変えました。

メイ命名です。


「おお嬢ちゃん、やったなーー」


ギルド長が駆け寄ってきます。

あっ、それ以上近づくと……。


「うおおおー、体が動かせない」


動けないギルド長の後ろからシャツを返して、わたしは草むらに逃げ込みます。

そして、体が重くなる魔法は解除です。


「嬢ちゃーーん、黒勇者はこっちで貰っておくぞーー」


「どうぞーー」


「賞金も出るからー、一度ギルドに来てくれーー」


「いりませーーん」


わたしは、いつもの服に着替え、顔を隠し少し猫背になります。

こうすると、身長の低いわたしは、ほとんど顔を認識されません。






「ヒノ様、あの地味でちっちゃい女の子が、二代目ガド様ですな。やっとみつけました。噂を聞いてここに来てから半年かかりました」


「ゴウ、何故わかるのですか」


「さっきのシャツ、わしが一ヶ月洗わずに着ていたので、臭いがここでもわかります」


「お話し、しないのですか」


「あせってはいけません。やっと見つけたのですから」


そう言うとゴウと呼ばれたギルド長は意味ありげな怪しい笑顔を浮かべた。


「あら、草むらに戻りましたよ、学校には行かないのかしら」


「おおかた臭いに気が付いて、帰って行ったのではないですか」


「ぷっ、ははははは」


あたりにヒノとゴウの笑いが響いた。

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