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勇者が街にやってきた  作者: 覧都
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第四十話 勇者が街にやってきた

森を出ると少し背の高い草むらに出ます。

そして草むらの前の道路を歩いて街に向かいます。

えーー、何故魔法で直接学校に行かないのかですってー。


そんなこともわからないのですか。

誰かに見られるのが嫌なことと、情報収集の為ですよ。

ガド様みたいに透明ならよかったんですけど。

私は、いまだに中途半端な透明魔法しか出来ません。


道路の横は高い壁が有り、所々に常駐の兵士が見張りをしています。

ここは黒い勇者の国との国境で、国境を守るため築かれた壁です。

今も未完成で建設工事中です。

私はこの危険地帯にあえて住んでいます。


ドーン


「うわあーあーあ」

「逃げろー、奴らが来たーー」


黒い勇者が壁を破りました。

時々数人の黒勇者が街に来て、人間をさらっていきます。

きっと、奴らにとって人間は美味しいご馳走なんでしょうね。

人間には黒勇者に抵抗する力がありません。

なすがままです。


わたし達を除いて。


わたしは中途半端ですが透明になれます。

一応誰にも見られないように草むらに入り、赤い服に着替えて透明になります。


「女ダーー、女を捕まえろーー」


黒い勇者は街に来ると若い女の人をさらっていきます。

肉がやわらかくて、脂がのってうまいのだそうです。


「命が惜しければ、そのまま回れ右して、お家に帰りなさい」


「うおーーー、ガド様だーー」

「ガド様が来て下さった」


うふふ、街の皆はわたしの事をガド様と言ってくださります。

体だけ透明で赤い服はそのままの、中途半端なわたしをガド様と……。

えーーっ、俺のようにスッポンポンになればいいじゃ無いかですって。

ほんとーに、ガド様はいつもそうです、わたしをなんだと思っているのですか。

いくら透明でも人前で裸にはなれません。


「あのー、メイ様、私がやりましょうか」


わたしのへんてこりんな姿を見て、シロちゃんはいつもこう言ってくれます。

でも、わたしの答えはいつもこうです。


「黒い勇者だけはわたしがやります」


「出て来たな偽者め、見えていちゃあ透明の意味が無いだろう、やれーー」


全く、その通りです。でも意味はあります。

正体が隠せます。

黒勇者は三人です。

三人は赤い服を囲みます。


「どりゃああ」


「きゃああああー」


す、すみませんガド様、悲鳴を上げたのはわたしです。

だってこいつら、赤い服の胸の所を切り裂くのですものー。

中身が見えてしまいます。

ほらーーブラジャーが丸出しです。

両手で隠しても全く隠れません。

わたしの両手は透明ですからー。


「シロちゃん、お願い」


黒い勇者が二人、ものも言わず倒れました。

でも一人残っています。

シロちゃんの聖なる力が通じないほど強い相手ということです。


「なにをしたーーー、このやろう」


すごい勢いで剣を振りかぶり襲いかかってきました。

その剣を紙ひとえで避けます。


「ぎゃああああーー」


す、すみませんガド様、いまの悲鳴もわたしです。

紙ひとえで避けすぎて服がたてに切り裂かれました。

これでは服の前が真っ二つです。

パ、パンツまで出てしまっています。

どうしましょう絶体絶命です。

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