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勇者が街にやってきた  作者: 覧都
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第三十七話 メイの変化

体から大量に血が抜けると、寒い。

そして静かで暗い。

これが丁度いい心地よさだ。

傷などしているとは思えないほど痛みは無い。

すごく安らぐ、鼻歌でも歌いたいぐらいだ。


そして考えられるのは一つの事だけらしい。

俺の心に浮かんでくるのはメイのことだけだ。

死んで霊になれるのなら、あいつのそばにいてやりてえ。


「ごめんな、メイ。また一人にしてしまう。一人の辛さを知っているこの俺が……」




「んっ」


メイは、一番大きなお屋敷のふかふかベッドで目を覚ました。

赤い服を脱ぎ捨てお気に入りの、ぶかぶかのブラジャーを付けて下着姿で、眠ってしまったようだ。

太陽が傾き何時間も過ぎてしまっている。


「大変、ガド様」


メイは飛び起きると、窓から外を見る為最上階に向かった。

窓から見る景色に、黒勇者の姿はなかった。

少女の頭から危険、恐いというものが消えた。

あるのはガドに対する心配だけだった。

赤い服を着ると全速力で走った。


「ガドさまーーー!!」

「ガドさまーー!!」


真っ直ぐ走ると、最初に四つ黒勇者が倒れていた。

更に走り続けると、大量に黒勇者が倒れていた。


「す、すごい。ガド様のおかげで、生きている黒い勇者がいなくなっている」


メイは、広い視野で全体を見ていた。

おかしな場所が無いか。

その場所はすぐに見つかった。


「ガド様……」


メイが見つけたのは、倒れた黒勇者の集団から少し離れた草の上だった。

大量の血が流れているのに、流している本体が無く、本体があるはずの所に血が消したように一滴もない、そんなおかしな場所だった。


「へんなの、草は見えているのに」


メイは震える手を、その違和感の場所に近づけた。

そこには目に見えない何かがあった。

だが、そこにあるものは、人の温かさがなかった。

メイはそこに抱きついた。


「ガドさまーーあ-」


ぎゅうぎゅう抱きしめた、そして顔をうずめた。

いてーじゃねえか。そんなことを言って貰える様に、ぎゅうぎゅう抱きしめた。

返事はなかった。

メイはガドから離れると、手が血だらけになっているのに気が付いた。


「これじゃあ私の顔も真っ赤になっているわね。服も……」


服はガドの血でぬれていたが、血のような赤い服だから目立たなかった。


「返り血で汚れるって言ったくせに、全部ガド様の血だよ、嘘つき!」


「ガド様の嘘つきーー!!」


メイは叫んでいた。叫びたかった。言葉なんかどうでもよかった。


「うわーーーん、うわーーーーん」


出せる最大の声を出していた。

しばらく泣き続けた。




顔を流れる涙が口に入った。


(ガド様の血も、私の血と同じ味だ)


泣き続けたせいか、心でそんな事を思えるほど冷静になった。

ガドの血は全然汚いとは思えなかった。

メイは口に入ったガドの血を飲み込んだ。


その直後、メイの体に異変があった。

全身の激しい痛みである。

痛すぎて気絶すら許されない、痛み。

激痛の頂点ではメイも気を失うことが出来なかった。

体を丸くして、声も出せず震えながら耐えていた。

そして幼いメイは、痛みがやわらぐとそのまま意識を失った。

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