表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者が街にやってきた  作者: 覧都
35/86

第三十五話 無謀な戦い

メイも気が付いたのか、体が震えだした。

黒勇者百人の部隊がでかい盾と槍で鎧もごつい物をつけ、フル武装で近づいてくる。

食料調達隊が帰ってこなくて、斥候が帰ってこなければこうなるだろう。


「いやだ、いやだ」


メイが駄々っ子の様に声を出した。

俺は無言でメイの体を抱きしめた。

そして、静かになったメイと黒勇者から見えないところへ移動した。

そこで、メイと距離を取った。


「こうしないと、メイの可愛い顔が見えねー」


メイは、泣きそうな顔なのに、可愛いと言われて嬉しくて、笑顔が自然に起こり、悲しさとうれしさの合わさった、すげー変な表情になっていた。


「変な顔」


「はーーっ、何てことを言うんですかーー」


「一番可愛い顔を見せてくれねえか」


真面目な顔をして言った。だが透明だからわからないだろうけど。


「無理です、出来ません。どんな顔をしようとしても、悲しさが勝ってしまいます」


「そうか、まあいいや、何でも、見せてくれ」


俺がそう言うと、メイが悲しそうな顔のまま表情を固めた。

心配そうで悲しそうな顔は、とても美しかった。


「行かないで、いっちゃいやだ」


何故だろう、美少女に「行かないで」って言われるとむしょうに勇気が湧く。

だが、体は正直でガタガタ震えている。

行きたくないと、訴えている。


「ガド様、逃げましょう」


あかん、この美少女と一緒に逃げたくなってしまった。


「メイ、これがわかるか」


俺はメイの肩に手を置いた。

そして、俺が震えていることを伝えた。

メイはとても驚いた表情をした。


「今から下に降ろしてやる、森に逃げるのもここで待つのも自由だ。だが俺は帰ってこれねえかもしれない」


メイは見えない俺の体にしがみついた。

メイの体を抱えて屋根から降りた。

地面に降りたら、メイは俺から一歩離れて笑顔になった。

俺の顔の位置を想定して、一番見やすい位置でとびっきりの笑顔だった。

だが、一秒も持たなかった。

涙があふれ出している。


俺は透明なのを良いことに静かに気配を消してメイから離れた。

少し遅れてメイは俺がいないことに気が付いたらしい。


「待っているからーー」


そう叫んでいた。

そして泣き叫んでいる。


「うわーーん、うわーーん」


人の出会いは面白い、メイとは数時間一緒にいただけだ。

なのにこんなに心が通うものなのかと。

そういえばあいつ、あの村でたぶん一人だったんだろうな。

俺が学校で一人だった様に……。




目の前に黒勇者の集団が近づいた。

さあ、一対百の無謀な戦いの始まりだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ