第二十八話 回想
五人の女子に囲まれるまなを見つけたとき、俺には助けるの一択しかなかった。
本当は見捨てるという選択肢もあったのに。
泣いているまなを見捨てられなかった。
この日までは、あいとまなと俺はいつも一緒の仲良しだったな。
小二の俺は人を殴るっていうのを知らなかった。
だから、五人の女子を蹴った。
そして、泣かした。
「まな、もう行って良いぞ」
まなは心配そうな顔をして走っていったなー。
女子達は自分達も悪いと思ったのか、暴力をふるわれたことを、親には言わなかった様だ。
でも、俺に蹴られた所が手のひらぐらい、黒くなっているのを見せられた。
このとき女には暴力をふるわないって誓ったんだ。
まなを助けた次の日から俺は、クラスの嫌われもんだったな。
まなとあいからも距離を取り、あの日から話したこともなかった。
その後も、まなは良くいじめられた、でもいじめた奴は、男ならボコボコにしてやった。
俺は、わけもなく人を殴る乱暴者扱いだった。
その後はまなだけじゃなく、いじめられている奴を見つけると、いじめている奴を殴ってやったなー。
おかげで、あいとまな、二人との距離は遠くなるばかりだったな。
小中高と一緒の学校なのに会話ゼロだ。
乱暴者のレッテルを貼られた俺は、よく喧嘩を売られたなー。
顔も、目つきが悪い為に目を付けられやすかった。
ふふふ、なにも面白いことがなかった俺は、そいつらを返り討ちにしたなー。
体が丈夫だったせいか、相手の攻撃が痛くなかった。
どんなにやられても、向かって行くから、最後には勝っていたな。
でも、あれは酷かったな、二十人以上に囲まれて、ボコボコにされた。
死んだと思った、なるべく手を出さずに相手の顔を覚えた。
まあ、同じ学校だから、知っている奴ばかりだからな、簡単だった。
顔が酷く腫れて人間の顔じゃなかったよなあれは。
翌日から、俺はそいつらを一人ずつ、同じ顔になるまで殴りつけた。
おかげでついたあだ名が狂犬だ。
その日以来おれは、誰からも相手にされなくなった。
俺は、あの日、まなを助けなければ良かったのか。
この場から逃げれば良いのか。
あんな大勢の黒勇者と、どうして俺が戦わなくてはいけないんだ。
俺は、二十人以上に囲まれた時と同じ恐怖を感じていた。
一対一なら負ける気がしない、だがあの数は無理だ。
「ねえ、ガド」
小さいあいが二メートル位の高さを飛んでいる。
セーラー服で……。
「ここにいる」
「ああ、そこかー透明って探すのに不便ね。じっと動かずに、静かにされると探せないわ」
あいは、ぶつぶつ言いながら俺の近くによって来る。




