第二十四話 勘違い
そいつの顔は、すごく整っていて、優しげで中性的で性別がわからなかった。
髪型もボブカット、これでも性別がわかりにくい。
そして、胸にはブラジャーを付けている。
だが、胸は全然ねえ、男でもそういう奴は、時々いる。
そして、トランクスをはいている。もちろん男物だ。
下着姿なのに仁王立ちで、恥じらう様子もねえ。
それでも、薄ら女感がある。
「おまえ女じゃねえよな」
「あったりめーだ。俺は正真正銘男だ。だが、ホモだ。女より、男の方が好きだ」
聞いてーねーよ、そんなもん。
「じゃあなんで、女性を横に置いていたんだ。えーーーっ」
おれは、振り返り暴君の横にいたお姉さんを見た。
事もあろうか、三ちびがジャージを着せている。
「まだ見てねーちゅーの!!」
「ガド、お前は最低ーかー!!」
ばあさんが怒っている。
「最低でも何でも見たいものは見てー。くそーー」
「お、おまえは、最低野郎かーー!!」
ぐはっ、暴君にまで言われた。
「さ、最低はお前だろう。人の命をもてあそびゃあがって」
「それは、こいつらが、人間を大勢殺したからだ。俺の両親も、兄弟も地震のせいで死んだんだ」
「ちょ、ちょっとまて、地震はこいつらのせいじゃねえぞ。地震は、こいつらを苦しめている、黒勇者が起こしたものだ」
「えっ! ほ、本当なのか」
暴君は、ジャージ姿の美女を見た。
三人のジャージ美女は、こくこくうなずく。
「この青勇者は黒勇者に追い立てられて、亀裂から飛び出した。飛び出した先にスライムがいて、黒勇者と戦う為に経験値を稼ごうと、必死でスライム狩りをしていただけなのさ」
「そ、そうなのか」
暴君はまた、ジャージ美女を見た。
ジャージ美女はまた、こくこくうなずく。
「ちっ、なんだかなー。とんだ勘違いヤローだったのかよー。俺は」
暴君は、暗い顔をしてうつむいた。
この暴君はまだ人間の心があるようだ。
「おい、お前ら自由にしてやる。もういって良いぞ」
暴君がジャージ美女に言った。
「待ってください。透明スラ……」
「おれはガドだ、ガドでいい」
「ガド様、ここで自由になっても、わたし達は、生きていけません。わたし達を、助けては貰えませんか」
「うーーん」
俺は腕を組んだ。
美女に頼られれば、断れねえ。断りたくねえ。
でも、助けられるほど力がねえ。
「ぎゃーーはっはっはっ」
後ろで、小っちゃい二等身ばあさんの笑い声がした。
「ガド、お前は、わしの眷属じゃ。人助けの為ならばわしを頼る事を許してやるぞ。どうじゃ」
「たのむ、ばあさん、こいつらを助けたい。魔力を使って欲しい」
「よかろう。そなたの願い聞き入れた。のう嬢ちゃん。名前は何という?」
「はい、私はエイと申します」
「そっちの暴君、名前は?」
「俺はファンだ」
「どうじゃ、エイとファン。牛丼でも食わぬか」




