第二十三話 暴君との戦い
「威勢が良い割には姿が見えないが……」
「お前の目の前にいるよ」
「おい、俺の前のステータスを見ろ」
暴君が横にいる美女の髪を掴み、視線を俺の方に向けた。
「と、透明スライム、ステータスは全部一です」
「ぎゃーーはっはっは。お前、すごいなー。一でここに来たのか。その度胸に免じて、面白いことを教えてやる。そこの三人の勇者は親子だ」
三人の勇者は肩で息をしながら、目が血走り暴君を見つめる。
「だれが勝つと思う。俺は長男だと思うぞ。ぎゃーーはっは」
こいつまじか、すげーー糞野郎だ。
もう許さん。
パシッ
音と供に暴君が吹っ飛んだ。
「き、き、きさまあーーー。許さんぞー」
遠目ではわからなかったが、こいつ何処で拾ったのか、おもちゃのかぶり物をかぶっている。
髭ずらのおっさんのかぶり物だ。
服はでかい布を体にかぶせている。
椅子にふんぞり返っているときはでかく見えたが、椅子から転げ落ちている姿は、そこまででかくねー。
いや、むしろ小さい。
「このやろーー!!」
声と供に飛びかかってきた。
だが、まるで見当違いの場所だ。
パシッ
暴君はまた吹っ飛んだ。
「てめー汚―ぞ! 姿を見せろー!!」
「残念だがそれは出来ねえ。だが、特別に居場所を教えてやる」
俺はそう言って、足でドンと床を蹴った。
「そこかーー!!」
素早かった、常人の動きじゃねえ。
だが、それでも俺は余裕でかわせる。
相手の拳を体さばきでよけると、そのまま暴君は俺の前を通り過ぎた。
「くそーーー」
暴君は後ろにいる俺に攻撃を加えようと振り返った。
振り返って一瞬動きが止まった所で、
パシッ
デコピンをする。
「ぐあああーーー」
さっきからずっとデコピンしかしていないが、毎回すごく痛がっている。
暴君は、大きな布を広げ大の字になって後ろに反り返った。
まるで羽を広げた巨大な蛾のような形になった。
そのまま、壇上から地面へ転がり落ちた。
「やべーー、死んじまったかな」
「……」
地面に転げ落ちた暴君はじっとしていた。
「ぷはーー、くそーー、いてーーー。てめーはぜってーゆさーーん!」
暴君が立ち上がった。
「よかったー生きていたーー」
さすがに、どんな奴であれ、殺人はしたくない。
あいつは、最悪な糞野郎だが人間だ。
あれーちょっとまてーー。
まてーーー。
なんだあいつ、なんなんだ。
なんなんだよーーー!!!。
地面におちた、暴君は髭ずらのかぶり物が外れて素顔が出ている。
それどころか、ぶかぶかの布も取れて立っている。
そこには、信じられない奴が立っていた。




