09 一面
「私、ずっと胸を痛めておりましたの」
「モノカさんのお噂は、武勇を語るものばかりで乙女としてのものが無いことに」
「ご覧になってお分かりの通り、愛らしくも凛々しい乙女こそがモノカさんの本来のお姿」
「ぜひこれからは秀麗可憐な乙女としてのご活躍を」
ユイの涼やかにして熱い演説にも、一同沈黙。
確かにふわふわモノカさんは、それはもうとてもとても愛らしい。
しかし、ユイには悪いが、それはモノカさんのほんの一面でしか無いのだ。
悪党の歯を情け容赦なく叩き折るのも、
豊かなお胸に抱かれてヘブン状態になるのも、
マクラちゃんに叱られてしおしおになるのも、
その全てがヒメサキモノカさんなのだ。
ふわふわプリンセスドレスが似合いすぎることだけが、彼女では無い。
俺を見つめるモノカさんのまなざしが、先ほどまでの怒りから、救いを求める懇願へと変わっていた。
俺が、なんとかせねば。
「素敵なドレスがとても良く似合っていますよ、モノカさん」
「おふたりの体格がこんなに似ているなんて今の今まで気付きませんでした」
「よろしかったら、モノカさん秘蔵の水着をユイに着せてやって、みんなの前で披露してはもらえませんか」
俺の言葉に何かを言おうとしたユイが、ハッとしたように口をふさいだ。
ほんの少し見つめ合ったユイとモノカさん。
手を取り合って、部屋を出て行った。