03 ルシェリ
「?」
ルシェリさん、俺のアレな視線に小首を傾げてきょとん顔。
どうやらおっとりお嬢さま系の娘さんですね。
とても良いことです。
いつまでも、この部屋に渦巻く不穏な空気に気付かないようなおっとりさんでいてくださいね。
「アラン」
「なにかな、リリシア」
「ルシェリさんが伝えてくれたことは理解出来たのか」
えーと、この王国で召喚が行われなくなったせいで職にあぶれた召喚士が各地で突発ノラ召喚をやらかしてるので特使のみんなは要注意、だよな。
「目の中にハートマークが貼り付いてるのに、ちゃんと話は聞いてるところがアレなんですよねっ」
任せろマユリ、
『誠実な無自覚プレイボーイモンスター』は伊達じゃないぜ。
「メリルさんにお願いして、ルシェリさんの寝屋をご用意していただく、で、よろしいのでしょうか」
ちょっと気が早いよユイ、一般的な庶民はまずは誠実なお付き合いから始めるものなんだよ。
「メイジ主任から伺っていた通り、皆さんとても仲が良い素敵なご家族なのですね」
ルシェリさんも、声まで素敵なのですね。
ぴよぴよぴよぴよ!
「あら大変、お時間です」
気の抜けるようなアラーム音に、すらりと立ち上がったルシェリさん。
「すみません、妹と待ち合わせでしたので、これで失礼させていただきますね」
妹さん?
「はい、私が特使公爵アランさんチームの担当で、妹が特使勇者モノカさんチームの担当なのです」
「今日は本部に戻る前に待ち合わせしていたのです」
「それでは皆さん、これからよろしくお願いしますね」
ルシェリさんは、癒し感あふれる笑顔で『転送』していきました。