23 絶好調
そして、いつもの日常のちょっと先へ。
つまり、ハルミスタは正式に俺の四人目の妻となりました。
魅力的な大人の女性が本人の意思で妻となることを望んだのです。
阻める者など、おりません。
ネルコさんとの暮らしを何よりも大切にするハルミスタは、今も王都住まい。
俺があっちに行ったり彼女がこっちに来たりだけど、現地妻や通い妻、ではないのです。
なにせハルミスタは、三人の妻たちとは俺よりも仲良し、みんなが正妻で本妻。
そんな充実した日々の俺でも、たまにはひとりになりたい時だってあるのさ。
というわけで、妻たちから許可をもらって、久々のツーリングへ。
「前にリリシアからこの世界では一夫多妻は珍しく無いと聞いたけど、うちの場合はどうなんだろ」
「アランから無理強いされたのではなく、誰一人本人の気持ち以外の都合で無理やり嫁がされたのではなく、皆が自分の意思でアランの妻となることを望んだのです。 私はこのことを誇りに思います」
「商店街のおかみさんたちから夫婦円満の秘訣って良く聞かれるんだけど、なんだろう」
「夫婦円満は分からんが、妻たち円満の秘訣なら知っているぞ」
「?」
「お互いを尊重しあって、夫を独占しないこと、でしょうか」
「そっか、そうだよね」
「そもそも、あれほど頻繁におしおきされている夫に、夫婦円満はなかろう」
「どうしてあんなにおしおきされたがるのでしょうか」
「『誠実』だから、かな」
「どんな女性にも分け隔て無く真摯に振る舞う、浮気をしない『誠実』男。 確かに傑物ではあるのだが……」
「私たちに出来ることは、間違いが起こらないように見届けること、でしょうか」
「それで『誠実なプレイボーイ』は、今どうしてるのかな」
「マリネ・ズッキーニでツーリングに行くと、朝出て行ったきりだな……」
「遅いですね……」
「もしや、お姉様方も同じ予感が……」
俺の名前は佐州亜乱、みんなからはアランと呼ばれる冒険者だ。
冒険者暮らし、絶好調。
愛する家族たちとの絆、絶好調。
愛車のマリネ・ズッキーニ、絶好調。
こんな気持ちの良いツーリング日和には、
なにか素敵な出来事が起こりそうな予感。
あとがき
リヴァイスという世界は、ひとりの少年がプレイしている仮想現実ゲームです。
彼は長い時間この世界を旅するうちに『鏡の賢者』と呼ばれる存在になりました。
お供のメイドさんは『伝説のメイド』と呼ばれております。
ここで暮らしている人々はいわゆるAIですが、それなりに大変なこの世界を楽しく生きているみたいです。
リヴァイスの物語は、そういう人々のあれやこれやを短編として紹介するものとなりそうです。
iPadのメモ帳につらつら溜め込んでいたショートストーリーや小ネタをひとつの世界にまとめようとしたら、こういう設定になりました。
整合性や何やらいろいろアレですが、お話しがまとまり次第投稿したいと思っております。
楽しんでいただけたら幸いです。




