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生まれた意味なら…  作者: 白月綱文
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第三章 バトン

里緒はあの言葉を聞いて何をしたら良いのかわからなくなった。

ただ、そこにいるのが嫌になって飛び出してしまった。

あの言葉は間違いなく感謝の意が込められていた。

それが怖くて堪らなかった。

なぜならそれは光喜が里緒に絆を感じたという証だから。

それに気付いてやっとまだ私は実の親に会えてない、一番深い絆が存在すると言うことを感じ取れていない。

でなければ、それを証明できなければ里緒に生きる価値などない。

今までの全てが嘘になってちゃんと歩けなくなってしまう。

そんなのは嫌だ。

私はちゃんと普通に産まれ育って、誰かに愛されて。

また、自分も誰かを愛して…そう言った輪を次に、また次に、と。

自分が生まれた意味を残して、死んでいくのだと思っていた。

でも、そんなのは違うかもしれない。

自分は最初から愛されてなくて。

受け取ったと思ったバトンは偽物で。

自分が今までの築き上げてきた人間関係も、頑張って伝えてきた愛情も、全部が成り立たないもので。

実の親にすら捨てられた自分は誰かに見て貰えるような人ではなくて、今まで一緒に遊んでいた友達も今まで一緒に時を過ごした家族との絆も、全てが自分の独りよがりなのだと知った。

人は誰かに認められなければ生きてはいけない。

なら、実の親にすら認められていない自分はどうやってこれからを生きていけば良いのか。

もう、知ってしまった以上二度と独りよがりで過ごすなんて出来ない。

もう二度と考えないで目を逸らすことなど出来ない。

それでもはっきり見ていて居たくなくて。

そのことを考えていたくなくて意味もなく学校をさ迷い続ける。

気付いたら涙が出ていた。

誰にも見られたくなくて人から目を背け涙を手で拭いただ歩く。

こんなんじゃ駄目だとわかっているのに動き出せない。

光喜が、彼が今此処にいれば違っていただろうか?

あの日、泣いて叫ぶしか出来なかった自分を引っ張って、実の親に会うと言う目標と希望をくれた、あの少年がいればきっと違っていただろう。

きっと涙で沈んだ里緒を励まし、手を差し伸べて、見たい景色へと連れてってくれるだろう。

だけど、そんなものは甘えで、ただの独りよがりに過ぎない。

もともと、ただその場に居た少年を救世主だと思ったのが間違いだったのだ。

きっと彼の本質は誰にでも優しくできる、誰にでも分け隔てなく根気強く接することができるその心にあるのだから。

彼は里緒を助けてくれようとしたように誰にも望まれていない人ですらその手で助けてくれる。

そんなヒーローなのだ。

だからこそ、里緒は一人で向かわなければならない。

今すぐにでも確かめなければならない。

実の親が里緒をなぜ捨てたのか、その真意を。

ならば向かう場所は決まっている、里緒は駆け足で市役所へと足を進めた。


まだ遅くない、駆け足で追えば恐らく歩いているであろう里緒には追い付ける。

里緒にはまだ伝えたい言葉が沢山ある。

届けたい言葉が山ほどある。

光喜はもう迷わない。

迷ってこれ以上あの少女を悲しませるわけにはいかない。

屋上の扉を思い切り開き、急いで階段を駆け下る。

そのまま全速力を保ちつつ教室前の廊下を通過、

途中すれ違う生徒が驚いたような目で見てくるがそんなものを気にしている暇などない。

すぐに追いかけたと言うのに下駄箱についても彼女の姿は見えない。

悪い予感が立ち込める。

靴を履いてる余裕なんて感じなかった。

そのまま下駄箱を上履きで飛び出る。

繰り返す過呼吸も痛くなってきた脇腹なんか気にも止めない。

そんなものでこの悪い予感を杞憂で済ませられるならなんだって構わない。

一度通った彼女の家への道筋を、景色の一欠片も見落とさぬように駆け抜ける。

足の回転はだんだんと遅くなり、足取りだって覚束なくなる。

それでも、彼の意志が、彼の思いが、その足を止めることを許容しない。

やがて光喜は住宅街に差し掛かり、ぼんやりと里緒の家が見えてくる。

目の前に着くとすぐにインターホンを押し、誰かが出てくるのを待つ。

「はい、どちら様でしょうか?」

と、扉を開き里緒の母親が出てくる。

息が上がって喋れない光喜に対し、彼女が言葉を続けないのは膝に手を当て疲れはてている光喜を見たからだ。

「はぁ…はぁ。里緒さんは、帰宅して…ますか?」

「してませんが。」

その返答だけ聞くと自分の電話番号をいつも持ち歩いている手帳に書きなぐり破って渡す。

「里緒さんが帰ったら、ここに連絡ください。理由は後で説明します。あとこれ預かっててください。」

走るのには重くて邪魔だった制服のブレザーを投げ渡し次の場所へと足を進める。

LINE交換でスマホをリュックから取り出していたのが不幸中の幸いでこれで里緒が帰ったとしても確認することができる。里緒が向かうであろう場所は家でなければ一つしかない。

光喜は息を十分に整えもせずに市役所に向かい走り出した…


本日2本目投稿です。短いとはいえめっちゃ早い気がする。今回のお話は里緒がなぜ生きる意味にこだわるのか?そこについてメインに触れさせて頂きました。受け取るはずだった愛のバトン、しかし受け取っていないと思っているだけでしっかりと里緒は持っています。

ここまで読んで下さりありがとうございました。

それでは次回までさよならです。バイバイ。

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