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生まれた意味なら…  作者: 白月綱文
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プロローグ

不登校のクラスメイト、玉城里緒(たまき りお )の家を訪れたのは彼女が不登校になってから一週間が過ぎた日だった。

空は夕暮れに差し掛かり沈み欠けた日が薄く張った雲を赤く染め上げていた。

彼、松原光喜(まつばらみつき)は彼女と話したことすらなかったが、家が近かった為不登校分のプリントを渡すように先生に言い渡されたのである。

もともと教わった住所に付くとこじんまりとした一軒家が目の前に見えた。標札にはちゃんと玉城と書いてあるのでここであっているだろう。

インターホンを鳴らすと少し物音がし、すぐに里緒の母親が出て来る。

疲れているのか目の下にややクマが出来ていて光喜は少し胸を痛めた。

この家に、玉城里緒には何があったのだろうか?

「あの、家の子と同じ学校の生徒のようですが、なんのご用でしょうか?」

「里緒さんが休んでいた分のプリントを持ってきました。」

もともとファイリングされていたプリントをリュックから取り出し手渡す。

プリントを渡したので、用が無くなった光喜は帰ろうとしたが、それを止める声がかかる。

「あの、良かったら…娘の学校での様子を教えてくれませんか?」

娘を心配する母の声で言われた為、光喜は断れなかった。そしてそのまま立ち話もなんだからと、家のなかに招待された。

家のなかは玄関、玄関の先に通路があり居間に続いている玄関からすぐに上に上がる階段があり居間に上がった光喜は彼女の部屋は二階なんだろうな、と考えた。

それから約二十分ほどが経ち、彼は里緒の話を一通り話終えた。

友達の有無。クラスではどう振る舞っているか。成績は大丈夫そうか。彼氏は居そうか。進路は何を考えていそうか。など、心配事が多いのだろう質問の数がとても多かった。

彼が知ってるものもあったし、予想くらいしか出来ないものもあったが出来るだけは答えた。

話し終えると彼女に電話がかかってきてそれに問答し、どうやら用事ができたらしく急に慌ててでかける準備を進め始める。

彼女は冷蔵庫からケーキが入っているであろう箱を出し光喜に渡し、「それ、話してくれたお礼に召し上がってください。ちょっと用事があって家を出ます。娘のこと話してくれて助かりました。もう用は済んだのでお家に帰って大丈夫です。」

支度をする勢いのままに玄関を出ていってしまった。

大人しく帰ろうとリュックを背負っているとタイミングを図ったのか入れ替わりで里緒が出てくる。

「確か…同じクラスの松原よね?なんでいるの。」

「休み分のプリントを渡しに来たんだよ。あと、親御さん心配してたぞ、学校の事とか。詳しくは知らないけど学校に来いよ。」

光喜がそう言うと彼女は顔を伏せズボンの裾を掴む。

「私に親なんて居ない。」

「は?」

「私に、親なんて…居ない!」

「何言ってんの?」

返答の意味がわからなかった。現に彼女の親ならさっき家を出たばかりではないか。

里緒は涙を両目に浮かべきつく光喜を睨みながら絞り出すように声を上げる。

「私は、産まれたばかりの頃。実の両親に捨てられた!だから私に親なんて居ない。居ない!」

その言葉に対し光喜は迷わずに答える。

「お前の母親は少なくとも親だろ。」

「実の親に捨てられたのに誰かが家族になってくれる訳無いじゃん!一番深い絆で無理なら!誰かに望まれて産まれたんじゃなかった、生まれた意味なんて、無かった!こんな事なら産まれない方が、ずっと、ずっと良かった…」

両手で涙の溢れるごしごしと拭う少女。その両足は立つ気力すらなくその場で崩れる。

光喜は言葉も出なかった。不用意に相手の心に踏み込んだことを後悔した。だからこそ言葉を探す、いま一瞬で良いから彼女を助ける言葉を。

「────なら、実の親を探せば良い。理由もなく捨てられたなんて考えるな。会ってからでも考えるのは遅くないだろ!俺も手伝うから。探せば良い。」

こんなのは逃げだとわかっている。第一見つかるかなんてのもわからないし見つかったところで良い結果に働くとは限らない。そしてもし、実の親が一緒に暮らしたい等の話になれば、彼女は今の親の元には残らないだろうから。

だからこれは時間稼ぎだ。と、光喜は思う。

今たとえ頑張って諭そうとしたところで恐らく跳ね除けられてしまう。

だから、手遅れになる前に俺が彼女を変える。自分が愛されていることがわかるように悲しまなくても済むように。

「取りあえず用事があるから俺は帰る。明日作戦会議するから一緒に探したいなら学校に来い。」

「え…?」

その声を聞いた時驚いたのは学校に来いと言われたからか、彼が助けてくれるからなのか、それとも今まで浮かばなかった実の親を探すと言う選択肢のせいなのか里緒にはわからなかった。

もしかしたらその全部かもしれない。

ただ呆然と未来の事を考えている内に彼は帰ってしまっていた。

趣味で書いてはいましたがこう言ったサイトに出すのは始めてです。至らない点などございましたら意見をくださいお願いします。長さは小説一冊分を予定してます。またしばらくしたら続き上げます。ここまで読んで下さった読者に感謝を!

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