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転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて、勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい  作者: 冬月光輝
最終章:魔王と勇者と神々を超えし者編

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番外編3

 半年前、ダルバート王国は勇者不足という危機に直面していた。

 それを打破する方法の1つとして、【天武会】の優勝を思いついた王女エリスは勇者候補となる者を探すことにした。


「うーん、とは考えたものの勇者兄弟のパーティーだった子達は【天武会】に出られないし、どうしたものかしらね」


 あたしは目ぼしい戦士が居ないものかと、城のすぐ側にあるクエスト管理所(後に冒険者ギルドとして独立)に足を運んだ。


 あの屈強そうな剣士の4人組はどうかしらね。みんな筋骨隆々って感じで結構強そうだし。あらあら、あっちには随分と可愛らしいパーティーね。女の子の3人組か、どんなクエストに挑戦するのかしら


 あたしはクエストを選んでいる2つのパーティーをじぃーっと見ていた。


「おっ、巨大ウィングドラゴンを倒すクエストだってよぉ。これで報酬は10万だったらかなりお得じゃね?」


「ははっ、いいねぇ。オレはウィングドラゴンだったら10体くらい殺したことあるぞ」


 剣士の4人組は巨大ウィングドラゴンの討伐クエストに目をつけていた。


 ああ、あのクエストまだ終わってなかったのね。巨大というより、もはや別の魔物でしょ。クエストの文面もっと危機感を出すようにしなきゃ駄目よ


 あたしは不安を感じながら剣士たちを見守った。


「……このクエストに挑戦する」


 いつの間にか巨大ウィングドラゴンの討伐クエストの依頼書を手にしていた、長い青髪の女の子がクエスト管理所の職員に手渡していた。


 ええーっ、若くて未熟そうな女の子たちが巨大ウィングドラゴンは無理だって。


「おいおい、お嬢さん。横取りは良くねぇな」


 案の定、剣士たちは青髪の女の子に絡みだした。

 青髪の女の子は眠たそうな顔で聞いているのかどうかわからない表情だった。


 そりゃあ言いたくなるわよね。でも、ルールとしたら青髪の子たちが先なのよね。


「……ふわぁ、早いもの勝ちだ。横取りはしてない」


「ちょっと、ターニャ。なんか揉めてるのー?」


 茶髪のショートカットの女の子が青髪の女の子をターニャと呼んだ。


「……揉めてはいない。横取りをしたと言われのないことを言われただけだ」


「それを揉めていると言うのですよ」


 黒髪の癖毛の女の子がターニャを諌めた。


「……だが、金がいるだろ? マリア、これだけあれば、お前の母親のクスリを楽に買えるぞ」


 ターニャは黒髪の女の子をマリアと呼んだ。

 何やら訳ありみたいねー。


「そうだね。ボクたちは一刻も早く、大きなクエストをクリアする必要があるんだ。譲れないね!」


「ルーシーも……」


 マリアは茶髪の女の子をルーシーと呼んだ。


「ちょっと待ちな! オメーらで納得してもよぉ! オレらは納得できねぇ! そもそも、弱ぇぇ奴にこんなんやらせるなんざ、時間の無駄だぜ」


 4人の中で1番筋肉質で体の大きい男が、ターニャの肩を掴んだ。


「……そうか、どうしたら納得してくれるんだ?」


 ターニャは掴まれた手を握り、捻った。


「いででででっ、手首がぁぁぁっ! 折れちまうよぉぉぉぉ!」


「……悪かったな。随分と強さに自信があるみたいだから少しだけ強めに引き剥がした」


 ターニャは相変わらず眠たそうな顔で男の手を離した。


「テメェっ! 表に出ろっ! どっちのパーティーが強いか勝負で決めるぞっ!」


 4人組の剣士たちはターニャ達に勝負を提案して、彼女らはそれを受けた。


 あら、面白そうね。あたしが仕切っても良いのかしら?


「あなた達、随分と楽しそうな会話をしてるじゃない」


 あたしは我慢できなくなって、7人に話しかけた。


「「「エリス様っ!」」」


 やっぱり、みんな驚くか……。王女が何やっているのって。


 4人組の剣士は乱暴な態度を見せたことを謝罪し過ぎなくらい謝ってた。

 別にあたしは気にしてないんだけどなー。


 それで、あたしは7人を訓練所に連れて行った。試合をしてもらうためだ。

 【天武会】の模擬戦みたいで力を測るにはもってこいだと思ったから。


 結果は酷いものだったわ。


 もう、一方的過ぎてね。途中からこの戦いを提案したあたしが申し訳なくなったもの。剣士達に……。


 ルーシーの最上級火炎魔法でまず全員の顔が真っ青になったでしょ。


 マリアは要所、要所で風系魔法でサポートしたり、傷ついたルーシーの手当をしたりしてね。


 それでターニャはもはや無双と言っても良かったわ。

 自分よりもひと回り以上大きな武器を持った男に対して、怯まずに間合いを詰めて容赦のない打撃を与える様子はすごかったわね。


 ターニャ達は圧倒的な力で屈強そうな剣士達をねじ伏せちゃったの。

 

 だから、あたしは巨大ウィングドラゴン討伐に関しては全く心配してなかった。

 2日後に討伐の知らせが入っても、当然よねって感じで。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「それで、ターニャさん達を勇者候補にされたのですわね」


 ラミアは紅茶を飲みながら、あたしの話を楽しそうに聞いていた。


「ところで、エリス様。こんな所に足をお運びになったということは、また城を抜け出したのではないですか?」


 ルシアはアップルパイを頬張りながら、鋭い視線をあたしに送った。


「あははっ、いいじゃない。固いこと言わないの。あたしとあなたの仲でしょ」


 あたしはニコリと笑ってみせた。だってさ、最近はずーっと城に籠りっぱなしで肩凝っちゃったんだもん。


「はぁ、私は構いませんが。そろそろ来ると思いますよ、お迎えが……」


 ルシアはふとあたしの後ろに視線をやった。

 えっ、どういうこと?


「……エリス様確保」


 気づいたときにはターニャがあたしの両肩に手を置いていた。

 早っ、というか怖いわね。ちょっと前まで一緒のパーティーで修行してたのに……。


「やーっぱりここに居た。エリス様、帰りますよー」


「兵士さんに泣きつかれて私達が探しに来ましたのですよ」


 ルーシーとマリアもあたしに近づいてきた。


「もう、降参よ。ふぅ、あなた達の成長に喜ぶべきなのか、悲しむべきなのか」


 あたしは観念して、城に戻ることにした。

 でも、なんか悔しいわね。あたしももっと逃げる訓練を積むわよー。


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