第78話:魔王と戦う話
「大爆発……、そんなことしたら……」
私は目を見開いた。
「そうだねぇ、死んじゃうんじゃないかな? 君の仲間は……」
ジェノスは他人事のように言った。
死ぬだって? みんなが……。そんなこと……。
「止める方法は1つだけ。僕の心臓を止めることさ。ほら、早くしないと爆発しちゃうよ」
ジェノスは私を挑発し続けた。
ははっ、本当にこの人は私と純粋に戦いたいのか……。
「まだ、足りないかな? じゃあ、この後ダルバート王国を滅ぼそう。多分、僕が出れば1日掛からないんじゃないかな……。エリス様にも死んで……」
――バキッ
私は気づいたらジェノスを力いっぱい殴りつけていた。
――ズドォォォォン
ジェノスの体は玉座を突き破り壁にめり込んだ。
「ふふっ、まさか真っ直ぐに拳で殴って来るなんて……。いいよ、ルシアちゃん。闘争本能剥き出しの君が見たかった」
ジェノスは唇から流れている血をペロリと舐めて、満足そうな表情になった。
「――ジェノス! お前が私を怒らせたいならっ! 乗ってやろうじゃないか! 望むなら今、私がお前を倒す!」
私は怒り心頭だった。望み通りにしてやる。
仲間を犠牲になんてするもんか!
――ゴォォォォォォォ
私の体から黒いオーラがほとばしる。
ターニャも隣で黄金のオーラを放出していた。
黒色と金色の光が、ジェノスに一斉に攻撃を仕掛けた。
ルシア→ジェノス
【魔王スキル発動】
漆黒闘気弾
ターニャ→ジェノス
【勇者スキル発動】
黄金闘気弾
「いいねぇ、魔界の強者でもここまでの力はなかったよ」
ジェノスはニコリと笑った。
ジェノス→ルシア、ターニャ
【真・大魔王スキル発動】
集闇指弾
ジェノスは両手の人差し指に闇の闘気を集中させて、私達の攻撃を受け止めた。
そんな……、指一本で受け止めるなんて……。
「でも、まだ僕は満足出来ないなぁ。――はっ!」
――ビリビリッ、ビリビリッ
「ぐっ、なんて力……」
「……ちっ」
ジェノスが闇のオーラを解放する。私達は凄まじいオーラに圧倒されて吹き飛ばされてしまった。
「さあて、先ずは準備体操をしたいなぁ。頼むからルシアちゃん、ターニャちゃん。――死なないでね」
――バキンッ、ドゴンッ、ドカッ
私が気が付いたとき、私の体は床に埋まっていた。なんて事だ……、動きが見えなかった。
「へぇ、ターニャちゃんの体捌きはなかなかだねぇ。ルシアちゃんより動きが良いじゃん」
ジェノスはターニャにも打撃の応酬を繰り広げていた。
ターニャ→ジェノス
【勇者スキル発動】
中級光系魔法
ジェノスが拳を繰り出すタイミングに合わせてターニャは右手から光系の攻撃魔法を放った。
「熱っついねぇ! いいよ、君は今まで挑んできたどの勇者よりも強い!」
ターニャ→ジェノス
【勇者、仙人スキル同時発動】
閃光流水乱舞
――キュィィィィン
ターニャの体から発せられる光は更に強まりジェノスに光る拳と脚の連撃を放つ。
「なるほど、君のスピードは大したもんだ。でもなぁ、パワーは足りないかな。だから怖さがない。しかも、その技はルシアちゃんに一度見せて貰ったんだ。通用しないよ」
ジェノスはギリギリのラインを見極めて、ターニャの素早い連打を完璧に躱した。
「……そうか、これは【女神】からの貰い物だから使うのが憚れたが、仕方ない」
ターニャ→ジェノス
【真・勇者スキル発動】
天下無双一撃
ターニャの右肩から手にかけて凄まじいほどの黄金のオーラが密集していく。
ターニャの腕は黄金で出来ているような錯覚をしてしまうほどに光り輝いた。
「おーっ、凄いな。セリシアのやつ、こんな技を開発したのか。でも、まだ足りないや」
――ガシッ
ジェノスはターニャの黄金の右腕を掴んだ。
「うん、君はここまで良くやったよ。おかげで準備運動は出来た。おやすみなさい」
ジェノスはターニャの腹に手を当てた。
ジェノス→ターニャ
【真・大魔王スキル発動】
極大漆黒闘気弾
――ズドォン
鈍い破裂音と共に、ターニャの体はグッタリとした形になった。
――ドサッ
ターニャは地面にうつ伏せになって倒れた。
くっ、あんなにもあっさりとターニャが……。しかも、ジェノスの技は私のとは次元が違う……。
「さあ、ルシアちゃん。まだ、やれるだろ? 1対1で雌雄を決しようじゃないか」
ジェノスは手招きしていた。
しかし、私が負ければ……、みんなが……。
私はヨロヨロと起き上がった。思ったよりも体が重たいな……。
「うーん、どうも闘争心が消えかけてる感じがするなぁ。1人ぐらい殺してしまおうかな……」
ジェノスは腕を組んで不満そうな表情を浮かべる。
まったく、困った魔王だな。私よりも私に期待しているんだから、面倒な相手だ……。
仕方ない……、切り札を使うか……。命が保つかわからないけど……。
ルシア
【忍者、召喚術士、霊術師スキル同時発動】
分身の術(4体)+四大精霊召喚+精霊憑依
炎精霊、地精霊、水精霊、風精霊をそれぞれの分身体に憑依させた。
『ふっ、やっぱり体への負担が半端ないな。88種類の職業のスキルを極めた成果がこの技かな。もうどうでもいいが……』
「面白いねぇ! さすがルシアちゃんだ。魔王の力だけに頼る凡夫とは違う! しかし、そんな弱気で勝てるのかい? なっ……」
ジェノスは額から血を流していることに気が付いて驚いていた。
そして、ジェノスは徐々に体が斬り刻まれていく。
――ブォッン
『霊幻剣・神風』
『霊幻剣・紅焔』
『霊幻剣・光土』
『霊幻剣・龍水』
4人になった私は精霊の力が込められた剣でジェノスを追い詰めていく。
ジェノスは血まみれになっていたが、笑みを浮かべていた。
「ははっ、楽しいよ。ルシアちゃん、もっと凄い技を使ってくれ!」
『ぐっ、こんなに攻撃してもまるで倒せる気がしない……』
私はダメージが通ってるのか不安になってきた。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
ジェノス
【真・大魔王スキル発動】
大魔刃闇怪鷹
――ズババババババッ、ブォンッ
4人の私の剣は悉く打ち負けて、吹き飛ばされてしまった。
くっこのままだと、ダメージを受けすぎる。分身を解かねば。
――ドカァァァァァァン
私は壁に直撃する前になんとか分身の術を解いた。
ジェノスとの圧倒的な戦力差に絶望の2文字が頭を過った。




