第77話:魔王の正体を知る話
ミランダとガーディアンが戦線を離脱したので、私はフィアナを宝石の中から出した。
「ふぅ、あのアホ天使と同じ空間に居るのは苦痛でしかなかったぞ……」
フィアナは一言愚痴を言った。
「ははっ、少しは仲良くしてくれよ。ラミアは良いやつだぞ」
私はフィアナを宥める。
「ルシア様がそう仰るなら……、努力する……///」
フィアナは素直にそう答えた。なんか、ずっと思っているけど、リメルトリアの時とキャラが変わりすぎてないか?
「……先生は相変わらずモテるんだな」
ターニャは他人事のようにボソリと呟いた。
お前、ちょっと楽しそうじゃないか?
「……ああ、楽しんでるぞ。ルシア先生の女性関係は私達の中で盛り上がる話の一つだからな。特にマリアが喜ぶ」
ターニャははっきりと肯定した。
おっお前ら、私のいない所でそんな話題で盛り上がっているのか?
「クスッ、いい教え子ねぇ。大物になるわよきっと」
フィーナはニコリと笑って、ターニャの頭を撫ぜた。
私もそう思う。でも、この戦いが終わったらターニャは……。
「……ルシア先生、私はたとえ勇者じゃなくなっても強くなる。先生だって、勇者になる前も強かったからな」
ターニャは私の心を見透かしたようにことばを発した。
おっお前まで、私の心を読めるようになったのか……。
「貴女、顔に出てるのよ……」
「……先生はわかりやすい」
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「グルガイアは四天王の中でも最弱……。この氷のヒッツグランダが……」
「がはっ……、やられるとは……」
「所詮、あの二人は前座……、この土のジルバード様は……」
「ごのオデざまがぁぁぁぁぁ!」
「四天王など、魔王様のお遊びに過ぎない……、某は他の連中とは次元が違うぞ! 風のゼルドルガ参る!」
「くっ、貴公らは強いな……。某もかつては魔界最強を目指した身……。あの方の姿を見て悟った、最強とはあの方の為にある言葉だ……。命が惜しかったら、帰ることだな……。さらば、我が好敵手よ……。ぐはっ……」
四天王は強かったが、今の私とターニャの敵ではなく、割とあっさりと倒してしまった。
道中、魔物にも嫌というほど遭遇したものの、フィーナ、グレイス、フィアナが露払いをしてくれたおかげで楽に進むことができた。
私は魔王の城の城門にたどり着いた。
ふむ、先程の洞窟は最難関ダンジョンと聞いていたが……、拍子抜けだな。何かの罠なのか?
「単に貴女たちが強過ぎるからですよ。ルシア様……」
赤紫色の髪の色で紫色の羽が生えている魔族の女がこちらに歩いてきた。
さっきの四天王よりも強いプレッシャーを感じるぞ……。というか、どこかで見たことある顔だな。
「ああ、この姿で会うのは初めてでしたね。私は魔王様の忠実な下僕、レイラです」
魔族の女はレイラと名乗った。レイラってあの、ジェノスと一緒に居た……。
「れっレイラさんが……、魔王の下僕? うっ嘘だろ? じゃっじゃあ魔王って……」
私は頭を金槌で殴られた気分だった。
「魔王様はルシア様を心待ちにしておりました。貴女なら、必ず自分を倒しにここにやって来ると信じて疑ってなかったのです。もはや、これ以上の前座はいらない。ゆえに
パーティーの面々を連れて来いと、私に命じました。どうぞ、こちらに……」
レイラは頭を下げて、私達に城に入るように促した。
私達は罠に警戒しつつレイラのあとに続いた。
「ルシア先輩、彼女と面識があるのですか?」
グレイスは私に質問した。
「うーん、前にご飯作ってもらったな。美味しかったよ」
私はよりによって、飯の感想しか浮かばなかった。
「ふふっ、お口に合ったようで光栄です。さぁ、魔王様はこの部屋です」
レイラは禍々しい装飾のしている、大きな扉の前に私達を案内した。
「罠……、じゃなさそうねぇ」
「そんなツマラナイことをしたら、魔王様に怒られてしまいますよ」
レイラはフィーナの呟きに答えた。
そうか、魔王があの人だとは思いたくないが行くしかない!
私は意を決して扉を開けた……。
☆
☆
「やぁ、ルシアちゃん。やっと会いに来てくれたね。僕ぁ、嬉しいよ」
黒髪の前髪の長い無精髭の男が、王冠を被って王座に座っていた。何故かトレンチコートを着ていたが……。
「ジェ……ノ……スさん? ジェノスさんが魔王なんですか?」
私は覚悟はしていたが、受け入れられなかった。気の合う友人だと思っていた、恩人だと思っていた男が魔王だというのか……。
「あら、ジェイノスと会ったことあるの?」
フィーナは不思議そうに私を見つめた。
会ったことあるなんてもんじゃない。私は2度もこの人に命を救われたんだ。
どうして……。
「あらぁ、やっぱりそうなっちゃうよねぇ。ごめんね、なんか言い出し辛くってさ。そう、僕がバハムティア=ジェイ=ノーティス。魔王と呼ばれている存在さ」
ジェノスはあっさりと自分のことを魔王だと名乗った。
「そんなことは知っている! 父上の仇! 貴様を叩き斬る!」
フィアナはジェノスに飛びかかった。
――ピィィィン
「がっ、なんだ! 体が……」
――ドォォォォン
フィアナはジェノスの手前で見えない壁のような物にぶつかり弾き飛ばされた。
「フィアナちゃんも久しぶりだね。父上の事は申し訳なかった。僕もビックリしたんだよ……。――父上があんなにも弱かったなんてね」
ジェノスの目つきが鋭くなった。
本当にこの人が魔王なのか……。
「ジェノスさんっ、じゃあなんで私を助けてくれたんですか? 敵になるかもしれないって分かっていたじゃないですか!」
「その為だよ。ルシアちゃん、僕は敵が欲しかったんだ。初めて君に会った日の胸の高鳴りは凄かったよ。君なら僕と対等に戦ってくれる。僕の夢を叶えてくれる。――だから、君を助けたのは僕の完全なエゴだ……」
ジェノスの視線が更に鋭くなる。
「……先生、あの人は【天武会】に来てたオジサンだろ。まさか、魔王だったとはな。戦うんだろ?」
ターニャは身構えて黄金の闘気を充実させる。
「くっ、そうだ。魔王を倒さなきゃ、ターニャが……。でもっ……」
私は葛藤していた。
「ふぅ、ルシアちゃんの甘い性格はよく知っているよ。仕方ないなぁ。僕はこういう悪役的なやり方は嫌いなんだけど……」
ジェノスの目が赤く光った。
ジェノス→グレイス、フィーナ、フィアナ、ターニャ
【真・大魔王スキル発動】
呪縛魔弾
「くっ、なんだこれは……。ルシア先輩っ、すみません」
「ちっ、妾がこうも簡単に捕まるとは……」
「がはっ、おのれ! ジェイノス!」
「……ちっ、早いな」
グレイスとフィアナとフィーナが黒い玉の中に閉じ込められた。ターニャはかろうじて躱したみたいだ。
「ターニャちゃんは避けたか。驚いたな、【天武会】の時とは見違えたよ。まぁいいか。――さぁて、ルシアちゃん。この黒い玉だけどさ、30分経ったら大爆発するって言ったらどうする?」
ジェノスは興味深そうな顔で私を見据えた。




