第76話:魔王の城への洞窟に入る話
私がフィーナの弟子、グレイスがターニャの仲間ということで我々の同行はあっさりと許可された。
そして、もっとあっさりとした感じで魔界にまで着いてしまい、私は少しだけ拍子抜けしていた。
しかし、問題もあった。ガーディアンの姿を見たときから予想できたが、ミランダも同行するのだ。
つまりフィアナは宝石の中で待機しっぱなしになるし、私も派手に動くことが出来なくなってしまった。
まぁ、タイミングをみて撒けばいいだろう。
「あれが魔王の城へと続く洞窟ですの。油断なさらないでください。今まで彼処を抜けて魔王の城にたどり着いた者は居ないのですから」
ミランダは洞窟の手前で私達に忠告する。
「……フィーナさんは、魔王と戦ったことがあるんだろ? 魔王の城で戦ったわけじゃないのか?」
ターニャはフィーナに質問した。
「ああ、妾はあのオトコが気まぐれで地上に出てきた時に戦ったのよぉ。思い出したくもないけどねぇ」
フィーナは歩きながら答えた。なるほど、魔王の幹部が地上に出てきて戦ったことはあるが、直々に魔王が出てきたこともあるのか。
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洞窟の中は怪しい殺気に満ち溢れていた。誰かがこちらを見ている。
しかも、かなりの手練だな。【魔界貴族】の上位の連中ぐらいの力はありそうだ。
私達は緊張感が高まっていた。
「ホッホッホ、この洞窟に足を踏み入れる者は久しぶりですね。魔王様より、お客様は丁重にもてなせと言われております。この洞窟には魔王様の最も信頼を得ている四天王が侵入者の行く手を塞いでます。さあて、あなた方はどこまでたどり着けるでしょうか?」
鼻の高い青白い肌で赤い目をした坊主頭の魔族の男が私達の前に出てきた。
「あら、わたくし達が何も知らないと思いまして? 貴方は四天王の一人、炎のグルガイアですわね?」
ミランダはガーディアン(アルファ)に乗り込み、ガーディアン達に戦闘準備を命じた。
「ホッホッホ、私の名前をご存知でしたか。ふむふむ、そちらのカラクリはリメルトリア製ですかな? これは楽しみですね。私の炎に耐えられるのか否かがです……」
グルガイアはニコニコしながらこちらに近づいてくる。
「ガーディアン、奴を粉砕しなさい」
ミランダの命令でガーディアンはグルガイアを取り囲んだ。
ガーディアン質は蒼白く光りだして攻撃の準備を行う。
アレは魔導砲というやつだな。4発も一斉に食らったらひとたまりもないだろう。
「ふふっ、取り囲んで一斉攻撃とは芸がありませんなぁ」
――パチンッ
グルガイアが指を鳴らすと、火柱が上がり、炎がグルガイアを包み込んだ。
ガーディアン(4体)→グルガイア
【最上級カラクリスキル発動】
蒼龍魔導砲
――チュドォォォォォォン
蒼白い光が4つ同時にグルガイアに発射される。
大爆発が洞窟内で起こり、土煙で視界がさらに悪くなった。
煙が晴れるとそこには何も無くなっていた。
「やりましたわ。魔王の四天王と言えども、ガーディアンの敵ではありませんの」
ミランダは勝ち誇った声を出した。
いやっ、まだだ……。まだ、ヤツは生きている……。
「そのようですねぇ。完全な状態なら危なかったかもしれません」
「逃げろっ! ミランダっ! 引くんだっ!」
私は大声を上げた。
地面の中からガーディアンに向かって、炎の槍を無数に飛び出してきた。
――バリンッ、バリンッ、バリンッ
ミランダの乗っているアルファ号以外のガーディアンが次々と崩れ落ちてしまった。
「まったく、こんな壊れかけのガラクタで私に挑むとは愚かですねぇ」
地面の中からグルガイアが出てきた。
あいつ、私が以前ガーディアンを傷つけた部分をピンポイントに狙って……。
――バリンッ、ドカァン
アルファ号にも炎の槍が飛んできて、崩れ落ちる。
「あっ、あっ、撤退しますわ! ターニャさん、ガーディアンがやられた以上危険ですの! 撤退の準備を……」
「そんなこと、私が許すとでも?」
グルガイアはガーディアンに肉薄した。
「さあて、この金属はなかなか丈夫そうですね、何発耐えれるでしょうか?」
「そんな、バカな……。最強のガーディアンが……。くっ、あのときルシア=ノーティスが付けた損傷というのがここまで大きかったとは……。不覚ですの……」
「まずは一匹目ですねぇ」
グルガイアは両手を挙げて魔力を溜めていた。
――グサッ、ブシュンッ
ルシア→グルガイア
【魔王スキル発動】
魔刃闇烏
ターニャ→グルガイア
【勇者スキル発動】
光闘気手刀
ターニャがグルガイアの心臓を刺し、私は両手と首元を切り裂いた。
「がはっ、バガなっ、ぐはっ……ぞのゎざは……魔王様の……、まざが、ごのわだじがぁぁ、なぜだぁぁぁ!」
グルガイアは信じられないという顔で絶叫した。
「……スキだらけだ。罠を一瞬疑ったぞ」
「私達が居るのに両手を挙げるなんてな……。狙えと言ってると思ったよ」
ターニャと私の同時攻撃により、グルガイアは絶命した。
「そっその声は貴女はルシア=ノーティスですわね。死んだはずでは?」
ミランダがハッとした声を出した。
いっけね、声色変えるの忘れてた。まぁ、ミランダも動けないみたいだし、大丈夫か。
「……私が先生を殺すわけないだろう」
ターニャは静かに言い放った。
「くっ、まんまと【女神】様を騙したというわけですわね。しかし、それなら何故わたくしを助けたのですの? 貴女達は、わたくし達に恨みしかないでしょうに」
ミランダは訳がわからないという感じだった。
うーん、なんでって言われてもなぁ。そんなの、大した理由じゃない。
「「……勇者だから」」
私とターニャは同時に答えた。
「わたくしは今まで……何を……。フィリアさんを裏切り、何百年も忠実に任務を遂行して、やっとガーディアンを手に入れたのに……」
ミランダは呆然としているようだった。
「――はぁ、何もかもどーでも良くなりましたわ……。もう好きになさってくださいまし。魔王を倒せるのは貴女方しか居ない気がしてきましたの」
ミランダは諦めたような口調でそう言うと、ゆっくりとガーディアンを立ち上がらせ、ヨロヨロと洞窟の外に向かって行った。




