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転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて、勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい  作者: 冬月光輝
最終章:魔王と勇者と神々を超えし者編

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第75話:魔王討伐パーティーを結成する話

 ダルバート王国の城門付近に私達は集まった。


「じゃあ、今度こそ魔王を討伐に行ってきます。フィーナさんお願いします」

 私はフィーナに声をかけた。


「はいはい、妾に任せなさいと言いたいけれど、ちょっと良いかしら……。貴女はどうするつもりなの? 出てきなさい、誰も貴女を責めないわ!」

 フィーナは城門の方に向かって叫んだ。


 ああ、そういうことか……。まさか、ここに戻るとは予想してなかったよ……。


――ガサッ


「ターニャ、おかえり」

 私はターニャの顔を見てニコリと笑った。


「……すまない。先生」

 ターニャは悪戯がバレた子供のような表情をしていた。


「監視はもう無いのか?」

 私は気になっていることを質問した。


「……ああ、先生が死んでくれたおかげでな。【女神】は上機嫌だったぞ。よほど嫌われていたんだな」

 ターニャは相変わらずな感じだった。


「まぁ色々あってな。それより、ターニャ。お前の寿命が……」


「……わかっている。自分の体だからな。あとひと月くらいだろう……。思ったよりも反動が大きくてな」

 ターニャは平然として言ってのけた。


「あらぁ、妾の見立てよりも深刻みたいねぇ」


「……そうだな。フィーナさんがヘルメスの話をしなかったら、私は独りで魔界に乗り込んだだろう」

 

 えっ、ターニャってヘルメスのこと知ってるの?


「そりゃあ、妾が説明しないわけないでしょぉ」


「……先生なら説得してくれるって信じてた。私だって、死にたくはないんだ。ありがとう」

 ターニャは私の行動を予想していたようだ。


「お前には、敵わないな。それじゃ、今回は私に任せておけ。魔王は倒してきてやるから……、お前は何とかゆっくりと動いて時間稼ぎをするんだ」

 私はターニャに生きる意思があって安心した。


「……先生は勘違いしてる。私は戦うぞ。魔王と……、先生と共に……。そのために私は戻ってきたのだから」

 ターニャは戦うことを宣言した。


「お前と共に戦う? しかし、お前は【天界】の命令で動くのだろ? 私が生きていることがバレれば全部無駄になるのではないか?」

 私にはターニャの意図が読めなかった。


「……簡単だ、先生は変装して私の助っ人ということにすれば良い。堂々と【天界】からのパーティーとして魔王の城に行くんだ」

 ターニャの提案はなかなか面白かった。なるほど、今のターニャと共闘すれば魔王を倒せる可能性はグッと高くなりそうだ。しかし……。


「あのう、わたくしは……」


「……ラミアさんも来るのか?」

 

「ええ、ルシア様の力を引き出すにはわたくしが近くにおりませんと……」


 そう、堕天使のラミアはさすがに誤魔化せないだろう……。


「それなら、私もだ。先代魔王の娘でミランダとも面識がある私も絶対に【天界】は許さんぞ」


 ああ、フィアナもそうだな……。どうするか……。


「じゃあ、二人はこの中に入ってるぅ? この宝石には不思議な力があってねぇ。物を小さくして入れることが出来るのよぉ。フィリアから貰った特別なアイテムなの」

 フィーナは青い宝石の付いた指輪を見せた。へぇ、フィリアってこんな物まで作っていたのか。


「こっこれは確かにフィリアの作った、引っ越し用のアイテム……。なぜ貴様がこれを……、って待てよ……、フィーナって言ったな。50年以上前にそんな名前の者がリメルトリアから出ていったような……。しかし、その見た目……。人間では……」

 フィアナはフィーナの顔を見てそう言った。


「お久しぶりねぇ。フィアナ、妾がそのフィーナよぉ。リメルトリアでは貴女にもお世話になったわねぇ」

 フィーナはフィアナの疑問に答えた。


「まさか、本当に……、あのフィーナか? はぁ、大きくなったなぁ。老けないのは、何かしているのか?」


「うふふ、特別なことはしてないわぁ。この中にフィアナとラミアが入れば怪しまれずに魔界に行けるわねぇ」

 フィーナの提案は魅力的だった。だが、待てよ。私もその中に入れば変装しなくてもいいんじゃないか?


「そおねぇ、まぁ3人は窮屈でしょうけどぉ。ギュッと密着してれば大丈夫よぉ」

 フィーナはクスリと笑いながら答えた。


「ルシア様と……」


「ギュッと密着……」


――ゾクッ


「私は変装して行くよ」

 嫌な視線を背中に受けて私は即断即決した。



 指輪の中にフィアナとラミアを隠して、私達は【天界】に指定された地点までたどり着いた。

 私は長い金髪のカツラを被り。化粧をした上に、肌を色黒に塗ってみた。

 格好は地味なカーキ色のローブを身に着け、魔法使いの格好にした。フィーナの弟子という設定だ。


「あたしは、ルシリアよ。フィーナさんのパーティーの一員なの」

 私は変装の出来を確かめた。


「お見事です。しかし、ルシア先輩……、私も変装する必要があったのでしょうか?」

 赤い髪を全て帽子の中に入れて、メガネをかけて、神官の格好をしているグレイスが私に話しかけた。


「グレイスも、リメルトリアでミランダに姿を見られているだろ? 一応は備えておかないと」

 私はグレイスの疑問に答えた。

 

「しっ、おいでなすったわよぉ」

 フィーナは私達に声をかけた。


「ターニャさん、でしたわね。わたくしはミランダと申しますの。魔王の討伐隊長に【女神】様より任命されました。よろしくお願い致します」

 ミランダが4体のガーディアンを引き連れて、ターニャに挨拶をした。


「……ああ、よろしく頼む」

 ターニャはぶっきらぼうに答えた。


「貴女の評判は【女神】様より聞き及んでいますわ。何でもあの、憎きルシア=ノーティスの首を持って帰ったとか……。残念ですわ、彼女はわたくしがこのガーディアンで討ち倒す予定でしたのに……」

 ミランダはターニャに雑談をふった。

 へぇ、結構根に持っているんだ……。これは気を付けないとな。


「……そうか。悪かったな。ふっしかし、大丈夫か? そんなガラクタで先生を倒せると思っているくらいの軽薄な女が隊長で……」

 ターニャは鼻で笑った。おいっ、挑発はよせっ!


「あら、尊敬する先生を殺したことを気にしてらっしゃいますのね。これは、配慮が足りませんでしたわ。でっ、助っ人は……、意外な方ですわね。フィーナさんとは……」

 ミランダは特に気にも止めないで、フィーナを見た。


「あらぁ、ターニャとは仲のいい友達よぉ。マブダチなんだから。久しいわねぇ、ミランダ」


「ええ、お久しぶりですわ。魔王にもまったく歯が立たなかったくせに、長生きだけしている勇者さんがやる気になっていらっしゃるのに驚いただけですの」

 ミランダはトゲのあるセリフを吐く。


「ウフフ、そおねぇ。妾も大概無能だと思うわぁ。何百年経っても、ジェイノスに好き放題されている、どこかの【女神】と同じで……」

 フィーナはニコリと笑った。


「相変わらず口だけは達者な様子で……。安心なさってください。【女神】様は寛大ですから、貴女が途中で野垂れ死にしてもお墓くらいは作って差し上げますわ」


「そりゃあ、ありがたいわねぇ」


 フィーナが気をそらせてくれたおかげで私とグレイスは特に何もツッコミを入れられることはなかった。


 そして、私は三度目の魔界へ向かった。

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