第63話:セントラルタワーを目指す話
私はフィアナを人質にとり、ガガール基地からの脱出を目指した。
ガーディアンとの遭遇もあったが、無傷で切り抜けてフィリアとの合流に成功する。
しかし、移動途中にフィアナが目を覚ました。
「あなたの心ね。確かに読めないわ。誰よりも真面目で、自分に厳しく公明正大な自慢の妹だと思っているわ。あたしが軟弱者というのは、あの日のことをまだ……」
フィリアは淡々と話をしていた。
「そうだ、あなたが日和ったことをしなければジェノシスの奴を討てた。父の仇を取れたんだ!」
フィアナは興奮気味に怒鳴った。
父の仇?
先代魔王は、勇者ライデンによって討伐されたはずだが……。
「彼は仇じゃないわ。父を殺したのは勇者ライデン。それに、父は魔王として暴虐の限りを尽くしてきた罪深い男よ。殺されて当然よ……」
フィリアは冷静に諭すように話している。
「うるさい! 父を愚弄するな! その前にジェノシスが父に喧嘩を売らなきゃ、負けてなかった。私は姉さんがガーディアンを開発したのは奴への復讐心からだと信じていた。不可侵条約も時間稼ぎだと! この国の武力が充実し、【魔界貴族】も虫の息。なぜ、亡き父の復讐を果たそうとしない!」
フィアナは更に興奮が高まった。
彼女は、父親である先代魔王を崇拝していたのか?
そして、先代魔王が倒される原因となった現魔王を恨んでいる。
「そう、あなたの気持ちを初めて知ったわ。そんなにあの男を崇拝していたのね。まぁ、あんなのでも父親だからその気持ちを否定するつもりはないわ。でもね、姉として言わせてね。復讐は何も生まない。全てを後退させるだけよ」
フィリアは静かに語った。
「ここに来る前にね、地上のダルバート王国の王女と話したの。ウチのメフィストの奴が彼女に同族の悪魔は沢山人間を殺したとか余計なことを言ったのよ。そしたら、王女はどう答えたと思う?」
「はっ、ダルバート王国の王女? メフィストなんて受け入れるわけないだろ。出禁にでもされたか?」
「彼女は私も沢山の悪魔を殺した。恨まれても構わないけど、メフィストと友達になりたいと言ったのよ。まっすぐな瞳でね。そして、二人は友人になった。あたしはあなたに、こんな心を持って欲しい。あなたには、復讐心は似合わないから」
フィリアはエリスの話を終えた。
確かに理想的な考えだが……、彼女は愛情が深い。その気持ちが暴走すれば、理性では抑えられないだろう。
「はっはっは、友人だって? 甘っちょろい! 蜂蜜よりもずっとな! 私は許さない! 父の仇をっ、ルシアールの仇を! 皆、殺してやるんだ!」
フィアナの殺意は強力だった。フィリアが用意した、特別製の紐じゃなかったらとっくに拘束を解いていただろう。
「じゃあ、あなたを止めるのがあたしの責任ね」
――キキィー
フィリアはウィンディアンを停めた。
「フィアナ、あたしを恨みなさい。全部受け入れるから……」
フィリアは銀装飾銃をフィアナに向けた。
まっまさか、自分の妹を殺す気か?
「私を殺すのか? はっはっは、あなたにそんな度胸があるものか。」
フィアナは高笑いをした。
「フィリア、止めろ! あなたが私に助けを求めたのはこんな事をするためじゃないだろ?」
私はフィリアを止めた。
「悪いけど、これは姉妹の問題よ。ルシア、あなたには感謝しているけど、部外者は黙ってて」
「撃ってみろ、フィリアよ。どうした、手が震えているぞ」
「ふふっ、挑発のつもり。あたしは本気よ。あなたを愛しているから……。大丈夫よ。全部終わらせたら、あたしもすぐに逝くわ……」
フィリアの手の震えが止まった。
――バキュゥゥゥン
ルシア→フィアナ
【聖戦士スキル発動】
闘気結界
――バリンッ
私は咄嗟にフィアナを守るバリアを張ったが、バリアは一撃で砕けてしまった。
くっ、なんて威力だ。防御を徹底した技なのに……。
「ルシア、余計なマネをするじゃない。あなたは関係ないでしょ」
「関係あるさ。フィリア、私はあなたを尊敬している。それは、あなたが高い理想を持ってこの国を作っていることがわかったからだ。あなたは、この国のこれからに必要な人だ。しかし、フィアナを殺せば、あなたは生きる選択を捨てるだろう。それ以前に、私はフィアナにも死んで欲しくない!」
私は真剣だった。この姉妹を不幸にしてはならない。
「ルシア、あなたがお人好しだからこの仕事を依頼したけど……。ここまでとはね……。とりあえず、今はやめておくわ……」
フィリアは諦めた顔をした。
「るっルシアール? 馬鹿な……。そんなはずあるか……」
フィアナは私の顔を見て頭を横に振った。
フィリアは再びウィンディアンを奔らせて、セルトラルタワーを目指した。
とりあえず、フィリアが妹を殺さなくて良かった。まだ、油断できないが……。
★
「着いたわ、セントラルタワー。ルシア、最後の仕事よ」
フィリアは私の顔を見た。
「ああ、任してくれ。あなたの国は救ってみせる」
「ふふ、頼りにしてるわ。さぁ、行きましょ」
私とフィリアはフィアナを連れ出して共にセントラルタワーに入った。
この国の命運を賭けた最後の戦いが始まろうとしていた。




