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転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて、勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい  作者: 冬月光輝
第三章:【リメルトリア共和国】の危機編

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第59話:スパイ疑惑に戦慄する話

 【ガガール基地】に潜入して2日目、武器工場の視察と作戦会議を終えたフィアナはデスクワークをしていた。

 そこに現れた裏切りの首謀者、ミランダはこの国の新入りの中にスパイがいると報告をした。


「何ぃ、スパイが潜入しているだとぉ!」

 フィアナは大声を上げた。

 まずい、まずい、まずい……。既に人数まで割れているとは……。


「ええ、それも今週この国にやってきた者の中に……。恐らく、IDも完璧に偽装されていますので、簡単には見分けは付かないと思いますわ。新入り全員を牢屋に閉じ込めることが一番手っ取り早い手段かと……」

 ミランダは容赦のない提案をした。

 こっこいつは、手強い……。もし、私を捕まえようとするなら、一か八か力押しで何とか乗り切るしかないぞ……。

 私は大きな緊張感の中にいた。


「なるほど、お前の提案が確かに最も楽にスパイ工作を潰せるな。ルシアールよ、スパイとは中々私の姉も味なマネをしてくれるよなぁ。貴様もミランダの案が1番楽だと思うだろ?」

 フィアナはまるで他人事のように私に話を振ってきた。いや、だからそれだと私も牢屋に入れられるから。

 私はどう答えたら良いかわからなかった。


「あのう、フィアナさん。こちらの殿方って新人なのですよね? さっきのわたくしの話を聞いてましたか? 彼もスパイの容疑者の1人ですわよ」

 ミランダが眉をひそめてフィアナに話しかけた。

 そうなんだよ、だから私は窮地に立たされている。今なら1対2……、一瞬で倒せば少しは時間を手に入れられるか……。

 私は2人を倒す算段を立てていた。


「ルシアールがスパイだって? はーはっはっは、それはないよミランダ。彼は私の婚約者だ。敵将と婚約するスパイがどこにいると言うんだ」

 フィアナはニコニコしながら、そう言った。

 へっ、婚約者?

 なにそれ、初耳なんだけど……。


「はぁ? こちらの彼が貴女の婚約者ですの? それはおめでとうございますですわ。しかし、だからスパイではないという道理は成り立ちませんの。フィアナさんはそんなことが分からないような頭の弱い方ではないはずですわ」

 ミランダは呆れた顔をしてツッコんだ。


「むぅ、それもそうだが……。ルシアールは私と四六時中一緒に居るんだ。今日からは寝るときも一緒だ。変なことはさせないさ。いや、ベッドの中ではするかもしれないが///」

 フィアナはどうしても私を手放すのが嫌なのか食い下がっていた。

 寝るときも一緒なのは、勘弁していただきたいが、この場を切り抜けたいのも事実……。

 もしかして、どっちも地獄なのか?


「なっ/// いきなり何を仰ってますの? ふぅ……、まぁいいですわ。どちらにしても彼は白の可能性が高いですの。侵入者は全員女性らしいと形跡追跡コンピュータが結論をだしていましたから」

 ミランダはため息をつきながらそう言った。

 なるほど、男装してよかったと初めて思ったぞ。


「そっそうなのか。お前も性格が悪いな。だったら最初からそう言えば良かったじゃないか」

 フィアナはホッとした顔でミランダを責めた。


「ふふふ、だってフィアナさんがそちらの殿方に熱を上げられていたのが面白かったのですもの。少しからかって差し上げました。そしたらベッドの話までするものですから、わたくしとしたことがドン引いてしまいましたわ」

 ミランダはクスクスと笑いながらそう言った。

 なんだ、やっぱり性格悪いじゃないか。


「ちっ、お前はいつもそんな調子だな。もういい、とにかく新入りの女を全員牢屋に入れておく。それでいいんだろ?」

 フィアナはムッとした表情でそう言った。


「ええ、それでよろしいですわ。それにしても、キレイな顔の殿方ですわね……。まるで、男装をした女性みたいですの」

 ミランダは私を再びマジマジと見つめた。

 ちっ、コイツはマジで鋭いな。私の男装を初見で見破ったのはジェノスしか居ないのに……。


「男装だって? 馬鹿なことを言うな!」

 フィアナはまた不機嫌な声を出した。


「あら、わたくしは可能性の1つを上げたまでですの」

 ミランダは平然とした顔で答えた。


「ルシアールは、間違いなく男だ! その証拠に……、そのう……、アレが大きかった///」

 フィアナは私の股間の辺りを力なく指さしてそう言った。


「ええーっと、アレというのは……、殿方の……。ふぇっ、ふっフィアナさん、ナニを指さしていらっしゃいますの/// ごめんなさい。わたくしが悪かったですわ……。ですから、はしたないマネはやめてくださいまし/// 貴女達がそのような関係までになっているのでしたら、わたくしは何も申し上げませんわ/// 勝手にしてください!」

 ミランダは顔を赤らめて、ドン引きした表情で声を出して、足早に部屋を出ていった。

 はぁ、フィアナの思い込みの強さに感謝するとは思わなかった。

 しかし、女性となるとラミアとグレイスが……。

 なんとか、切り抜けてくれ……。


「ふっ、ふぅ……。貴様も容疑が晴れて良かったな。でも、一緒のベッドで寝てやっても良いんだぞ///」

 フィアナは私の顔を見つめながらそう言った。

 全力でお断りさせて頂きます。


「そっそうか……。てっきり、『ベッドは1人で寝るには広すぎるぜ』とか言い出すのかと思っていたが……」

 フィアナは意外そうな顔をした。

 なんだ、その脳ミソがアレな感じの台詞は……。

 貴女の中で私はどういうキャラなんだ?


 結局、この日もずっとフィアナの監視下に居たので私は何も出来ずに1日を終えようとしていた。

 さすがに期限が迫っていたので焦っているが、スパイがいると気付かれている現状で下手な行動は起こせないのである。

 

「おーう、ルシアール。今仕事終わりかぁ?」

 自分の部屋に戻ろうと、一階の通路を歩いているとメルヴィンが私に話しかけてきた。


「ええ、今終わったところですよ。メルヴィンさんは今日も夜勤ですよね。昨日よりも早いんですね」

 私はメルヴィンの質問に答えた。

 昨日はフィアナの部屋で色々あったからな。今日は早く戻っているはずなんだけど……。


「実はさぁ、明日の夜に急用が入っちまってよぉ。誰か夜勤を替わって貰える人を探していたんだ」

 メルヴィンは困った顔をしていた。

 ふーん、夜勤を誰かと交代ねぇ。

 メルヴィンも色々大変だなぁって待てよ……。


「メルヴィンさん、私が夜勤を替わって差し上げましょうか?」

 私はメルヴィンに提案をした。

 千載一遇のチャンスが私に回ってきた。



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