第53話:再び【魔界】へ。【リメルトリア共和国】へ向かう話
第53話
【リメルトリア共和国】の危機を救って欲しいというフィリア達の頼み事をエリスに話した私達。エリスの後押しもあって彼女達の助けることに決めた。
私達はエリスに見送られて城を出て城下町の入口の外れまで歩いた。
【魔界】にいく方法が不安だったがフィリア曰く簡単に行けるらしい。
ジェノスみたいな【次元跳躍移動魔法】を使うのか?
「ふふっ、面白い方ね。貴女のご主人様は」
フィリアはクスリと笑った。
笑った顔は本当に幼い少女みたいだ。
「あの方はいつもあんな感じですよ。剣を握ったのも、自分だけ汚れ仕事をしないで安全な場所に座っているなんて絶対に嫌とかいう理屈でしてね。王女様なのに全然偉そうにしないし、友達みたいにしてくるし、本当に変わったお人です」
私はエリスについて話した。
「人間にしとくにゃ勿体ねぇな。羨ましいぜ、上司に恵まれて」
メフィストがボソッと呟いた。
「聞こえてるわよ、メフィスト」
フィリアの声が低くなる。
「まぁ、姐さんにゃ敵わねぇけどな。だーはっはっはっ」
メフィストは汗をダラダラ流しながら笑ってごまかした。
この悪魔は口が悪いが憎めない奴だな。
「ところでフィリア殿、【魔界】という場所にはどうやって行くのですか? 勉強不足で申し訳ありませんが……」
グレイスは相変わらずの生真面目な姿勢だった。
そうそう、私もそれが気になっていた。
メフィストあたりが【次元跳躍移動魔法】を使えるのか?
「いいえ、あたしもメフィストもそんな魔法は使えないわ。【魔界】には【ウィンディアン】に乗って行くのよ」
フィリアはグレイスの質問に答えた。
うっういんでぃあん?
また知らない言葉が飛び出したな。
「【ウィンディアン】っつーのは、フィリア姐さんの作った乗り物だ。姐さん、この辺りならだだっ広いし、いいんじゃねぇか?」
メフィストはフィリアに話しかけた。
なんだ乗り物の名前か、まぁ流石に歩いて行かないだろうと思っていたが……。
「そうね、じゃあここに呼びましょうか。座標軸をセットして、自動操縦モードオン。ウィンディアン発進!」
フィリアは透明な板を触りながらブツブツ何かを言っていた。
何をしているのだろうか?
「ルシア姐さん、上を見てみな。あれが【ウィンディアン】だぜ」
メフィストが上空を指さした。
空に何があるっていうんって、ええっ!?
――ビュゥゥゥゥン
銀色に光る全長5メートル程の金属の塊が空を飛んでいた。
塊と言っても翼のようなものが付いてあったり、流線型といえばいいのか、先端から後方にかけて徐々に膨らんでいくような形。
どうやって飛んでるのかも、どうやって金属をあんな形に出来るのかも全く理解できない。
とにかく、翼の生えた金属の塊がこっちに向かってきたのである。
あれが【ウィンディアン】とかいう乗り物ってこと?
――プシュゥゥゥゥ、ウィィィン
【ウィンディアン】は私達の目の前に着陸して、前と後ろの【ドア?】がひとりでに開いた。
フィリアとメフィストは前のドアから中に入った。
「早く乗りなさい。安全は保障するわよ」
フィリアは私達に中に入るように促した。
うーん、ちょっと怖いような……。グレイス、ラミア、どうする?
「あれっ? ルシア先輩、何か忘れ物ですか?」
「椅子がふかふかですのぉ」
二人は既に【ウィンディアン】に乗り込んでいた。
えっと、怖くないの?
「オリゲルトちゃんの方がよっぽど怖いですの」
「武士道とは死ぬことを見つけること。武人に生まれて私は既に死んでおります。怖いものなどないですよ」
左様ですか……。
二人共乗っているのに、私が乗らないというのは如何にもかっこ悪いので渋々乗り込んだ。
おっ、ホントにふかふかだー。
「おっ、ようやくルシア姐さんも乗ったか。んじゃ、出発するぜ!」
メフィストがY字型の突起のような物を掴みながら後ろを見た。
えっ、もう出発すって、うっ浮いてる!
――ブォォォォォッ
【ウィンディアン】はドンドン高度を上げていった。しっ信じられないっ、金属が浮くってどういう理屈なんだ?
「ははっ、ルシア姐さん。そんなん、オレだって知らねぇぜ。いいじゃねぇか、不思議なことの方がロマンがあってよぉ。楽しんで行こうぜ!」
周りの景色が雲ばかりになったとき、メフィストは掴んでいる突起物を引くような動作と、足で何かを踏むような動作をした。
おっお前はよく理屈がわからないものをそんな風に扱えるな。
――ビュィィィィィィン
【ウィンディアン】は猛スピードで動き始めた。
なっなんだ、この速度は……。オリゲルトとは比べ物にならないぐらい速い!
「ルシア様、見てくださいまし。風になってるみたいですのぉ」
ラミアは嬉しそうに外を指さした。
はいはい、私は気持ち悪くなりそうなんで見ません。
「フィリア姐さん、座標ryz563-3955-9554地点に着いたぜ」
メフィストがそういうと【ウィンディアン】が止まった。
んっ、もう【魔界】に着いたのか?
「今からちょっと揺れるけど、安全性には問題ないから安心してちょうだい」
フィリアは後ろを振り向いて一言だけそう言った。
イヤーな予感がした。
――ガシン、ガシン、ガタガタガタガタ……
【ウィンディアン】が振動している。それも徐々に振動が強くなっていく。
ほっ本当に安全性には問題ないの?
――ガタガタガタガタ……、ドゴォォォォン、ガタガタガタガタガタガタ……
「ちょっと、フィリアさん。爆発しましたよね? 今、絶対に爆発音が……」
私はフィリアに必死なって話しかけた。
「ああ、時々するのよね。結構これも古いから。大丈夫よ、安全性には問題ないから」
フィリアは平然として言ってのけた。
そうは思えないんですけど……。
――ズバァァァァン、ドォォォォン
けたたましい音と共に、【ウィンディアン】の周りの景色は青白い光の中に変わった。
そして更に10秒ほど時間が過ぎると、周りの景色は薄暗いどんよりとした景色に変わったのである。
この景色は以前に見た、私達は【魔界】に着いたのだ。
「本当に【魔界】に着いた、信じられない……」
「中々スリリングで楽しかったですわ」
「ここが、【魔界】ですか。全体的に暗いですね」
私達は外の風景を覗きながらそう言った。
「姐さん、ちっとだけまずいぜ。あいつ等、【ガーディアン】だけじゃなく、【自動迎撃システム】のロックまで解除に成功しやがったみてぇだ」
メフィストはひそひそとフィリアに話しかけた。
「そう、じゃあこのまま普通に行ったら気付かれちゃうわね。メフィスト、あたしと運転を変わりなさい」
メフィストとフィリアは座っている位置を入れ替わった。
「ごめんなさい、ちょっとだけ安全じゃないかもしれないわ。ステルスモード、オン。レーダーレベル5……」
フィリアが呟くようにそう言うと、正面の窓に無数の光のラインが網目のようになって、ユラユラと動いている様子が映し出された。
あの光線はなんだろう?
「それじゃ皆さん、どこかに掴まって。危ないから……」
――ビュィィィィィィン
その後のことはあまり覚えていない。【ウィンディアン】の動きがあまりに破天荒過ぎたからだ……。
光のラインの小さな隙間を縫うように移動し、時には激しく回転し、乱高下した。
もっもうやめてくれ……。目が回って気持ち悪くなってきた……。
「あの、光に触れた瞬間ゲームオーバーだぜ」
メフィストは状況を伝えてくれた。
どうやら、あの光に触れると【リメルトリア共和国】にある自動的に敵をやっつけるカラクリが動き出して、攻撃を開始するそうだ。
そうなると、フィリア達の侵入が明るみになって人質を取られている為に抵抗することも出来なくなるのだとか。
「でも、外から見たら丸見えじゃないですか」
私はかろうじて疑問の声を上げた。
「大丈夫だぜ、この【ウィンディアン】は今は目に映らねぇようにバリアを張ってんだ。仕組みはわかんねぇけどな」
メフィストはカラカラと笑いながら私の質問に答えた。
そうですか、そりゃあ良かったですね……。
ぐっ、景色がぐるぐるするー。
【ウィンディアン】が着陸したとき、私は何もしてないのにとてつもない疲労感に襲われていた。
ラミアとグレイスは元気そうだった。




