第52話:2人を連れてエリスのところに相談に行く話
先代魔王で【発明家】のフィリアは自らが作った発明品である【ガーディアン】が裏切り者に奪われた為に、自分たちの国が危機に瀕しているという状況を伝え、私に助けを求めてきた。
「もう一回、見せていただきたいですのぉ」
ラミアが更にリクエストをする。
このアホ堕天使いい加減にしろよ!
「あたしは構わないけど、ルシアさんがほら、怒っているわ」
フィリアはラミアの頭を掴んでいる私を指さした。
片手で持ち上げられたラミアは宙吊りになって、足をバタバタさせている。
お前はちっとは自重することを覚えような。
「ずみばぜんでずのぉぉぉ」
ラミアは調子に乗ったことを謝った。
それより、人払いをしたのにコイツらが戻ってきて良いんですか?
「そうね、話したいことは全部話したから、大丈夫。あとは貴女に、返事を聞かせてもらうだけよ。急かして申し訳ないんだけど、あたし達には時間がない。出来れば、明日には返事を頂きたいわね。もちろん、お礼は弾むつもりよ。金額にしてこれぐらいは……」
フィリアは私の目を見てお願いをした。金額って……、マジかこんなに貰えるの?
家というか豪邸が買えるぐらいあるじゃないか……。
明日までか……。私はダルバートの【勇者】だから勝手な動きはできない。
エリスには必ず話さなきゃな。
「わかりました。しかし、私にも立場があります。このことをダルバート王国の王女に話しますが構いませんか? 口は固いと保証します」
私はフィリアに確認した。
「貴女が信頼している人物なら、あたしも信頼するわ。誰に話してもらって大丈夫よ。もちろん、そこの二人にも。そもそも、秘密にしたかったのは変に知られると、色々と厄介事を持ち込まれることが嫌だったからなの」
フィリアは私の質問に答えた。
そういうことか。追放者の集まる国があって、しかもそこには見たこともないような技術やアイテムが多くあるなんて噂になれば、面倒ごとが起こる可能性はありそうだ。
「まぁ、この二人も……」
私はチラッとラミアとグレイスを見た。
『一生お慕い致しますわ』『愛の形はいろいろですし』
『先輩の素晴らしさを全世界に広めてみせます!』『私の思いを綴った手紙を100通……』
「…………」
「…………」
「……信頼できるかな」
私は小声でそういった。いや、口止めしたら黙っているとは思うけど。
「ルシア様ぁぁ、酷いですわぁぁ! なんでそんなに自信なさげなんですのぉぉぉ」
「くっ、私の未熟さと怠慢が先輩の信頼を勝ち取れなかったんだ。いっそのことこの腹を掻っ捌いて……」
あーあ、わかったから煩いから止めてくれ。
グレイス、マジで剣を抜くんじゃない。
「姐さん、オレが言うのもアレなんだけどよぉ。大丈夫なんか? ルシアの姐さんが強ぇぇのは分かるけどさ、なんつーかスキだらけな感じがするぜ」
メフィストは私達のやり取りを見ながらそう言った。
悪かったな、確かにコイツらにすら手を焼いているよ。
「馬鹿ね、だからいいんじゃない。考えてもみなさい。【こんなに強いお人好し】は、世界中どこ探したって居ないわよ。ルシアさんって頑張ってお願いしたら、どんな無茶振りでも渋々手伝ってくれそうじゃない。あたしはそこに目をつけてここに来たのよ」
フィリアはメフィストの疑問に答えた。
そっかぁ、だから私のところに来たのかって、さりげなく私のことをディスってるよね?
「なるほど! さっすが姐さん! 確かにあーんなに簡単に唇が奪えちまうんだから、お願いすりゃあ、一発ぐら」
――バキューン
フィリアは素早く銀装飾銃でメフィストの喉めがけて青色の光の弾丸を撃ち出した。
喉は弾丸に突き破られ、メフィストは喉と口から血を吹き出していた。
「んぐぐぐ!」
メフィストは声が出ないから、身振り手振りで抗議していた。
「【リメルトリア】の品位を落とすような発言は許さないわよ」
フィリアは氷のように冷たい視線をメフィストに送った。
なんだろう、メフィストの失言よりこの人の容赦のなさが怖い。
結局、このまま話しても結論が出なさそうなので、私達は次のクエストをサクッと終わらせて2人をダルバート城に連れて行った。
「あら、ルシア! お疲れ様。今日は早かったのね。えーっと、その方達はお客さま?」
エリスの執務室に私は顔を出した。
まぁ、客といえば客ですかね。
「ふふっあんた、厄介事に巻き込まれたんでしょ。顔に書いてあるわよ。早く言ってみなさい」
エリスは悪戯っぽく笑って、私に話しやすい雰囲気を作ってくれた。
「はぁ、エリス様には敵いませんね……。実は――」
私とフィリアが交代でエリスに説明をする。
フィリアが自分の武器を見せたり、メフィストが悪魔の姿になったりするとエリスは少しだけ驚いていた。
「――という理由で、どうかあたし達にルシアさんを貸して頂けないでしょうか?」
フィリアの話が終わると、フィリアとメフィストはエリスに頭を下げた。
「クーデターなんて物騒ねぇ。あたしは構わないわよ。ルシアがいいなら、喜んでお貸ししますよ。だって凄い国じゃない。色んな種族が共存しているなんて。そんな国が助けを求めているなら、応えるのが人の道よ!」
そう言った、エリスの表情は凛々しかった。
まぁ、この方はこういう人だよな。
だからこそ、私みたいな者も受け入れてくれたんだし……。
人の道か……。
「ありがとうございます。ダルバート王女は器が大きいのですね」
フィリアはぺこりと頭を下げた。
「いや、まったくだぜ。いいのかい? オレの同族は沢山人間を殺しているんだぜ。こういっちゃなんだが、助けたいと思うもんかね? オレを恨まねぇのか?」
メフィストはエリスにそう尋ねた。
「それを言ったらあたしもこの間、随分沢山の悪魔を殺しているわ。もちろん、譲れない事の為だから後悔はしていない。だから、メフィストさんがあたしを恨んだっていいのよ。あたしは友人になりたいけれどね。フィリアさんの国には各種族の恨み辛みを【過去のもの】に出来うる可能性がある。もちろん何百年、何千年後かわからないけど……。だからさ、あたしはここで失うわけにはいかないと思っただけよ」
エリスはそう言って、メフィストに手を差し出した。
「けっ、人間っつーのはずりぃな。オレの十分の一も生きてねぇのに、オレよかよっぽど大人だぜ。いつかオレらの国に遊びに来てくれよ」
メフィストはニヤリと笑ってエリスと握手した。
「是非、そうさせてもらうわね」
エリスも微笑み返した。
あのう、私はまだ返事をしていないのですが……。
これって私がオッケーを出す前提ですよね。
「すっすばらしい国ですわ。わたくしと同じ境遇の天使もいるかもしれません。ルシア様、もちろんお供しますわ」
ラミアは私の腕にしがみついてそう言った。
因みに、グレイスにはラミアの正体は言ってある。彼女は特に気にしなかった。
というか、なんでそうなる。どさくさ紛れてくっつくな。
「不肖、グレイス=アル=セイファーもフィリア殿とメフィスト殿の国、リメルトリアの危機を救おうとする先輩のサポートをさせていただきます! メフィスト殿には先程の非礼を詫びさせて頂きたい」
グレイスはメフィストに頭を下げた。
それは、いいけど私はもう返事をしたことになってるの?
「じゃあ、今週のこの辺りのクエストはまとめてターニャ達にやらせておくから、いってらっしゃい」
エリスが話を絞めようとした。
ちょっと待ってください!
「あら、ルシア。どうかしたの」
「私はまだ、フィリアさんに返事をしてません」
「えっ断るの?」
「いえ、助けに行きたいです」
「でしょ。はい、いってらっしゃい」
エリスはニカッと笑って、手を振った。
なんか、釈然としないなぁ。
かくして、私達はフィリア達の頼み事を聞き入れ、【リメルトリア共和国】に向かうこととなった。
2000年後の未来が創造された国とはどのような場所なのだろうか?




