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転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて、勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい  作者: 冬月光輝
第2章:新たな侵略者、【魔界貴族】編

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第47話:K地点へ急いで戻る話

 【魔界貴族】の本隊を追いかけて要塞を脱出しようとした私達の前に【ハーゲンティ男爵】と【べリアル公爵】が立ちはだかった。

 私は新たな力の【魔王のスキル】を使いこれらを討ち、先を急いだ。


 「ルシア様、何やら雰囲気が変わられた気がしますわ。何かありましたの?」

 ラミアは私に抱えられながら話しかけた。


「あーなんていうかそのー。闇の力に目覚めたってところかなぁ」

 私自身、よくわかってないので適当に答えてしまった。

 【魔王の力】なんて言っても伝わんないだろうし……。


「……ああ、私も2年前くらいにあったぞ。無駄に包帯を巻いたりとか、第三の目があると想像したりとかって。ルシア先生は遅かったんだな……」

 ターニャは頷きながらそう言った。

 いやいや、違うってその思春期になったらかかるような病気的なアレじゃなくてだな。

 本当に漆黒のオーラの力に目覚めたんだってば。


 私達は猛スピードで丘を駆けてどんどんK地点までの距離を縮めていく。

 さあて、もうそろそろ着くはずだぞ。


「ワァァァァァァ」

 怒号が聞こえてくる。近くで戦闘が繰り広げられているな。

 エリス達が無事ならいいけど……。


 私達はK地点にたどり着き、エリス達を探した。

 下級悪魔を振り払い、大悪魔をなるべく一撃で倒し、辺りを見渡す。


「せんぱーい! ルシア先輩!」

 グレイスの声が聞こえた。


 声のする方向を見ると、グレイスの後ろにエリス達もみんな無事で揃っていた。

 

「よかった、みんな無事で本当に……」

 私はやっと、ホッとすることができた。

 

「この度は本当にありがとうございます! 私はルシア先輩に一生涯付いていきます! そして、このルシア先輩の活躍を伝説として残せるように日々布教して参ります!」

 グレイスは真剣な目をして私に宣言した。

 頼むからやめてくれ、迷惑だ……。


「ごめんねー。簡単に敵の術中に嵌まるなんてさぁ。石になるなんて参ったわよ」

 エリスも此方に駆け寄ってきた。

 いや、あんなの回避する方が難しいですよ。

 とにかく、みんなの命があって本当によかった……。

 

 ターニャもルーシーとマリアの無事な姿を見て顔が綻んでいた。


「それで、戦況は……」

 私はエリスに現在の状況を質問した。


「うーん、優勢だと思いたいわね。レオンさんとフィーナさんが幹部連中3人くらいを片付けてから、明らかに敵の攻撃の手が緩んだし……。でもさっきのこともあったからさ……」

 エリスは罠を警戒しているみたいだ……。

 レオンさんとフィーナさんが先に戻って劣勢を打破してくれたんだな。


「おっ、ルシア! 戻ったか。見ての通りこっちは大丈夫だ。ありがとな、お前のおかげだよ。それで、グレイスを嫁にやる件だが……」

 レオンがこちらに歩いてくる。

 悪魔もほとんど居なくなったし、大丈夫そうだな。

 あと、グレイスの話はもういいから……。


「おっお兄様。おっ畏れ多いことを仰るのは止めてください。私のルシア先輩への気持ちはそういう不純なものでは一切なくてですね……」

 グレイスがレオンに文句を言っていた。

 あー、ラミアとは方向性が違うんだ、どっちにしろ怖いけど……。


「貴女、また強くなったわねぇ。ふふふ、【女神】の奴が狼狽する姿が目に浮かぶ。見せてもらうわよ、人を超えた力を……。貴女は本当に面白い子だわぁ」

 フィーナが空中から舞い降りて私をじぃーっと見つめた。

 この人は本当に何でもお見通しなんだな。一番怖いよー。


「なあに、怖がらなくたっていいじゃないの。妾に言わせれば貴女の方がよっぽど怖いわぁ。まぁ、人を見る目には自信があるほうだから、貴女は力に溺れるような愚か者じゃないこともわかるけど……。覚悟しなさい、貴女はこれからもっと運命の歯車に振り回されるわ」

 フィーナは私の顔を上目遣いで見た。


「ははっ、知りませんでしたよ。【魔導教授(プロフェッサー)】さんは予言まで修得されているのですね」

 私は特にフィーナの言っていることについて深く考えなかった。


「ふふっ、そうよ。妾は何でもしっているんだから」

 フィーナは私の顔を愉しげに見つめてウィンクした。

 冗談に聞こえないんだよなぁ。


 そして、10分ほど時間がたつと第三部隊の陣地の悪魔はほとんど片付き、他の部隊の応援に駆けつけようという話になった。

 

 他の部隊に戦力を回せば一気に決着をつけられそうだな。

 途中、罠に嵌まったときはかなり焦ったがなんとかなりそうだ。


――ドサッ


 突如、人間の首が空中から降ってきた。

 こっこの顔は、コゴロウだ……。

 まさか、どうして……。


――ビューン


 移動魔法の光と共にティアナとロザリアが血まみれで私達の前までやってくる。


「はぁはぁ……る、ルシ……ア」

 二人とも瀕死じゃないか……、回復魔法じゃ間に合わない……。


ルシア→ティアナ、ロザリア

【吟遊詩人スキル発動】


 奇跡の演歌


「ラララ~!」

 私は大声で熱唱した。回りの人達は怪訝な顔つきになる。

 ああ、やっぱりこの歌ってこういう反応になるんだ……。


――バタッ、バタッ


 ティアナとロザリーは息を引き取った。


――パァァァァ


 その瞬間、二人の体が淡い金色の光に包まれた。

 そして、二人は目を覚ました。


「ううぅーん、またこの悪夢を見るハメになるとは思わなかったわ。相変わらず下手なんだから」

 ティアナは微笑みながらそう言った。

 えっ、下手だったの?


「しかし、下手な歌に助けられました。ありがとうございます。というより、大変なのです。コゴロウさんが……」

 ロザリアは興奮ぎみに話した。

 それは、知っている。コゴロウほどの人がなんで……。


「コゴロウさんだけではありません。バムワルさんとジークフリートさんも戦死。ピエールさんとアレックスは重症の上に回復魔法が受け付けない状態。第三部隊以外はほぼ壊滅状態なのです」

 ロザリアは早口でとんでもない戦況を伝えた。

 何だって、英雄と言われた【勇者】達が次々と……。


「そっそんなことになっているのか? それほど強い悪魔が何体も居るってことなのか?」

 こっちにはそんなに強いやつは幹部クラスでも居なかったみたいだが……。

 というか、コゴロウの首はどこから飛んできたのか?


「一体だけよ、化物がいるの。私達はそれを第三部隊に伝えるために移動魔法を連発して急いだんだけど……、あの化物に追い付かれて、殺されかけたのよ。そして、コゴロウさんが私達を逃がして……」

 ティアナが涙を流しながら話した。

 ちょっと待て、ということは……。

 その化物の正体って……、そしてこの状況は……。


「【ベルゼブブ大公】ね。妾も見たことはないけれど、噂では神に匹敵する程の力を持つと聞いたことがあるわ……。しかも、近くに居るのね……」

 フィーナが額に汗を浮かべながらそう言った。

 


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