第45話:【ウェパル女公爵】と決着をつける話
【ウェパル女公爵】と戦闘を開始した私達だったが、ターニャとフィーナが石にされてしまった。
残された私は必ず勝利をするために精霊憑依を再び発動させた。
ルシア
【召喚士、霊術師スキル同時発動】
風精霊召喚+霊体憑依=風精霊憑依
――ブワッ、コォォォォォッ
私の体に風精霊の力が宿り、私の髪の色は緑色に変色し、体中から風が吹き出した。
『ここから先は私のターンだ……』
私はウェパルとの間合いを詰める。
ルシア→【ウェパル女公爵】
【風精霊憑依体スキル発動】
霊幻剣・神風
――ザシュッ
風精霊の力を集中させた剣がウェパルの肩を捉えて切り裂いた。
ウェパルの肩から青い血が吹き出した。
「ホホホホ、なるほどのぉ。プレッシャーがはね上がりおったわ。フィーナの奴がお主に託した理由がわかったぞ。大したパワーじゃ」
ウェパルは余裕の表情だった。
ちっ、顔色を変えるまではいかないか。
【ウェパル女公爵】→ルシア
【上級悪魔スキル発動】
氷獄魔槍
ウェパルは凍てつく冷気を槍に込めて私を攻撃した。
――スッ、ススッ、スッ
私は、ウェパルの槍を見切った。槍の軌道を読んで、完全に避ける。
そして、更にカウンターで剣を振るった。
――ズバッ
ウェパルの頬を切り裂く。チッ首を狙ったんだけどな。
しかしウェパルの顔から血が流れ、余裕の顔がなくなった。
「グググ、おのれぇぇぇ! 余の顔を傷つけただとぉぉぉぉ! 許さん!」
ウェパルは血走った目で私を睨んだ。
『……許さないのは私の方だ!』
顔を傷つけるぐらいで済むと思うなよ!
【ウェパル女公爵】
【上級悪魔スキル発動】
獄炎審判
ウェパルの体が黒い炎と一体化して、燃え上がる。
そして、ウェパルの槍は黒い炎を集め黒く輝いていた。
私の精霊憑依と似ているな、ウェパルの力が更に強くなっている。
「ホホホホ、たかが人間相手に余の切り札を使うことになるとは思わなんだ……。これぞ、余が【魔界貴族】の最高幹部まで上り詰めた秘技じゃ! 魔界の炎と一体化するこの技は全てを黒く燃やし尽くす……」
【ウェパル女公爵】→ルシア
【上級悪魔スキル発動】
魔幻槍・煉獄
ウェパルは灼熱の槍を構えて、信じられない速度で私に突撃してきた。
「もはや、人間ごときに見切れる技ではない!」
ルシア→【ウェパル女公爵】
【風精霊憑依体スキル、聖戦士スキル同時発動】
霊幻剣・神風+闘気増大→大霊幻剣・神嵐
私は以前ベリアルを退けた技を使うことにした。
この状態での同時発動はキツイけど、奴さえ倒せれば、みんなが復活する……。
私はここまでやれれば十分だ……。
『私の全てをこの一撃に込める……』
この瞬間……、私の【頭の中】は恐ろしいくらいに冷たかった。
ウェパルの動きがスローモーションに見えて、次の動きが手に取るように読めた……。
そして、【心の中】は今までになく熱く、燃えていた!
ターニャ、グレイス、ルーシー、マリア、そしてエリス様を必ず助けるんだ!
ついでにアレックス達も……。
フィーナがさっき私にかけてくれた言葉がこの境地まで持ってきてくれたのかもしれない……。
負ける気がしない!
「ホホホホ、終わりじゃっ! 小娘がぁぁぁぁ!」
『終わるのは……お前だっ!』
――ズバァァァァァァン
ウェパルの槍が私の左脇の下を擦り抜ける……。
そして、私の剣がウェパルの右脇腹から左肩にかけて切断した……。
――ブシャァァァァ
ウェパルは斜めに二分割されて、大量の血が噴出した。
「ぐはぁぁぁっ! ぐっ……、まさかぁ余がぁぁぁ! 人間ごときに、ここまで追い詰められるとはぁぁぁ! くっ、ここでやられる訳にはいかぬぅぅぅ……、撤退しなくてはぁぁぁ……」
ウェパルは半身になりながらも、魔法を使おうとしている。
まっまずい、逃げられる訳には……。
くそっ……、体が……。
私の風精霊憑依は解けてしまい、激痛が体全体を襲ってきた……。
しかし、ここでウェパルを殺さなくては私達の全滅が確定してしまう……。
腕だけでも動いてくれ、最後にこの技を……。
私は無数の針が貫通するような痛みに耐えながら、ウェパルの胸に狙いをつけて右手をかざした……。
ルシア→【ウェパル女公爵】
【勇者スキル発動】
初級無属性消滅魔法
――カッ
私の右手から銀色に輝く光の弾丸が発射された。
そして、銀の弾丸はウェパルの胸を貫通した……。
銀色の淡い光がウェパルを包み込む……。
「こっこの光は……、なんじゃと? ありえぬ……こんなこと……余が消え………………」
言葉を言い終えるより前に、ウェパルはこの世から消滅した。
――バタリ
そして私はその場に倒れて意識を失った……。
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私は真っ白な何もない空間にいた。なんだ、ここは夢でも見ているのだろうか……。
体の痛みは消えている……。
『オレの血を引く、人間よ……』
突然低い声が聞こえた……。
――ブォォォン
黒い光の塊が、目の前に現れる。
『くっくっく、いい力を手に入れたなぁ人間の癖に……。いやぁ、お前はオレの才能を色濃く受け継いだのに、貧弱で見ていられなかったんだ……』
低い声が上機嫌そうに私に話しかける。
「お前は誰だ? そして、ここはどこなんだ!」
私は状況がわからなかった。
『はっはっは、安心しろっここはお前の【意識の中】だ。オレぁ簡単に言えばお前の中の【魔王】ってところだなっ。感謝しな、弱っちぃ人間のお前がここまで戦えたのはオレのお陰なんだぜ』
黒い光は私の中の【魔王】を名乗った。
「ほう、【魔王】というのは人の意識の中にも住めるのか。家賃でも取れば良かったかな」
私は妙に落ち着いていて、黒い光の言っていることを受け入れた。
『へぇ、言うじゃねぇか。でもな、オレぁ家賃くらい払っているぜ。お前が88個も職業を簡単に極めちまったのはオレの才能のありきの結果だしなぁ』
黒い光は誇らしげに語った。
「ふーん、まぁいいや。特に用事がないなら早く起きたいんだけど……」
私はどうでもいいことに付き合わされている気がした。
『まぁ、待てや人間。才能があるとはいえ、ここまでの力を身に着けたことを褒めてやろうと思ってな。プレゼントを用意したんだ……』
黒い光は飄々とした口調で語った。
「プレゼント? なんか、胡散臭いな」
私は怪訝な顔していた。
『ははっ、女の子を口説くにゃプレゼントって大事だろ? オレぁそういう気配りのできる男なんだぜっ。んでな、お前にやるプレゼントは、ジャジャーン! 【魔王の力】だ……』
黒い光はなんだか楽しそうだった。
そういや、先代魔王は女好きだったらしいな。
「【魔王の力】って、もう貰ってるから私は武芸の才能に恵まれたんだろ?」
私は何を言われているのかわからなかった。
「馬鹿だねぇ、あんな才能はほんの一部だよ、一部! オレの力ってのはもーっと凄ぇんだってば。ちなみに返品は不可能だぜぇ。良かったな、お前の89個目の職業は【魔王】だ。いやっ、確か最近【勇者】になっていたな……。じゃっ、キリのいい90個目が【魔王】ってことで! お前さんが【勇者】と【魔王】を極められるのか、楽しみにしているぜ!」
黒い光はそう言い残して消えてしまった。
そして、私は体全体の激痛とともに目を覚ました。




