第40話:【グレモリー公爵】とレオンの戦いの決着を見守る話
レオンと【グレモリー公爵】の戦いが始まった。
【グレモリー公爵】の血による攻撃で回復を封じられたレオンはピンチになり、私は閃熱魔法で援護した。
「ミーの魔血無双を消し去っただと……」
グレモリーは切り札が破られて、ショックを受けていた。
ふぅー、熱っちぃぃぃぃ! 右手の火傷は大したことないけど、左手が丸焦げじゃないか。
魔力のコントロールが激ムズだな、これは……。
「ちょっと、貴女!」
大悪魔1体を魔法で片付けたフィーナが私に声をかけた。
「フィーナさん、すみません。言いつけを破ってレオンさんの戦いの横槍を入れてしまいました」
勝手な真似をして怒っているな、きっと。
「そんなこと、どーだっていいのよぉ。さっきの魔法、妾のオリジナルよ。どうして貴女が使えるのよ」
フィーナは私が閃熱魔法を使ったことに疑問を持っているようだ。
さっき見せてもらったから、なんとなく出来そうと思っただけなんだけど……。
「はぁ? 見ただけで真似たって言うの? 教えたって出来るもんじゃないのに。ふふふ、長く現役を続けてみるものねぇ。これが【ノーティスの血】の力なのかしらぁ」
フィーナは私の【魔王の血】の事を知っているのか……。
私は驚いてフィーナを見た。
「あら、失礼だったわねぇ。妾は色んなことを知っているのよぉ。貴女がヒステリックなあの【女神】に喧嘩を売ったこととか。ウフフ。安心なさい、妾は貴女のような子は好きだから……。でも、魔力の調節はまだまだねぇ。両腕を出しなさい、治してあげるわ」
フィーナは一瞬で私の腕を元通りに治した。魔法のキレが全然違う。
やっぱり、この人は怖いなぁ。
「はは、手出し無用と後輩に格好つけてこの様とは。オレもまだまだだな。ありがとう、ルシア。助かったよ! グレイスが君を慕うわけだ……」
レオンは私に礼を言った。
こちらこそ、余計な手を出して悪かった。
「オレはこの先の戦いのために力を温存することと、手の内を晒さないようにすることばかり考えていた。今からはお前を倒すことだけに集中する!」
レオンは独特の前傾姿勢の構えをとった。
「ヘーイ、なにいってんだヨォ。仲間のヘルプで偶然助かったくせにサ。次は確実にキルしちゃうゼェェェ!」
グレモリーは先程の倍の大きさの血液を右手に集中させた。
「それはない……」
レオンは言葉を発した瞬間に姿を消した。
レオン→【グレモリー公爵】
【勇者スキル発動】
巨人光剣
「セイファー流剣術、奥義、ギガントソード!」
空中からレオンは巨大な光のオーラを纏った剣を叩き下ろす。
――ドゴォォォォォン
強力な一撃を受けた、グレモリーは更に血まみれになった。
ダメだ、こいつはこの程度じゃやられない。
【グレモリー公爵】→レオン
【上級悪魔スキル発動】
大魔血無双弾
グレモリーは近距離から血液の塊をレオンに放った。
レオン→【グレモリー公爵】
【勇者スキル発動】
最上級光系魔法
レオンは剣を地面に突き刺して、至近距離から最上級の光系魔法を放った。
――チュドォォォォン
レオンから放たれた超巨大な光は血液の塊を飲み込み、グレモリーをも飲み込んだ。
これもまた、威力がとんでもないな。これ程の魔法をなぜ今まで撃たなかったのか……。
グレモリーの体は急激に萎んでしまい、白目を向いて倒れてしまった。どうやら、体中の血液を失ってしまったらしい。
「ぐっ、切り札を使って漸く倒せたか……。魔法力がほとんど空っぽだよ」
レオンはふらつきながらそう言った。
「ふうん、貴方はいいわねぇ。光系魔法が使えるのだからぁ。妾なんて、【加護の力】は外ればかりよ」
フィーナがレオンに声をかけた。
意外だな、フィーナは光系魔法が使えないんだ。
「フィーナさんなら上手く使いこなせるでしょうね。ふっ情けないが、最上級だけはこんな感じになるから使いたくなかったのですよ。威力が強くても燃費が悪くてね……」
レオンは本当に魔力を使いきったみたいだ。
消滅魔法も燃費が悪いのが難点だから、【天界】発の魔法の特徴なのかな。
さあて、残りの大悪魔は1体、下級悪魔は3体か。
ターニャよ、一気に片付けるぞ。
「……ああ、わかっている」
ターニャは短く答えた。
ターニャ
【勇者スキル発動】
閃舞闘衣
――キュィィィン
ターニャが黄金の光に包まれた。
ターニャ→大悪魔
【仙人スキル発動】
閃光流水乱舞
高速の鋭いラッシュが大悪魔に叩きつけられた。
ルシア→大悪魔
【仙人、魔法使いスキル同時発動】
流水乱舞+中級雷系魔法=雷神流水乱舞
ターニャの攻撃に合わせて、私は電撃を帯びた拳を大悪魔に叩き込みトドメ刺した。
下級悪魔たちはフィーナとレオンが難なく倒し、我々は【グレモリー公爵】の引き連れた悪魔達を殲滅した。
「なんとか、片付いたな。幹部一体が強いとこうも時間が取られるのか……。しかしルシアよ、噂には聞いていたが君の強さには驚いたよ。うん、ルシアにならオレのグレイスを嫁にやってもいいな。これからはオレのこともお義兄さんと呼んでいいぞ!」
レオンは私の背中をバシバシ叩きながらそう言った。
全力でお断りします!
「えっ、うちのグレイスだよ? 才色兼備、質実剛健、天下無敵の可愛いグレイスを嫁に欲しくないのか? 君はなんて、慎み深い奴なんだ! ますます気に入ったよ」
レオンは本気で驚いている様子だった。
あんた、私の性別知っててそれを言うか。本当に妹が絡むと面倒な人だな。
「ああん、レオン様。ルシア様のお嫁さんになるのはわたくしですわぁ」
ラミアはバリアから出るなり何バカなことを言っているんだ。
「おい、バカ兄の青二才、貴方が苦戦したせいで時間が取られているのよぉ。少しは急ぐ素振りをしなさいな」
フィーナはストレートに苦情を言った。
「手厳しいなぁ、フィーナさんは。わかりましたよ、全力で走りますんで付いてきてくださいね。ルシアとターニャは足には自信はあるかい?」
レオンは屈伸運動をしながらそう言った。
「それなりに鍛えてるつもりですよ」
「……ルシア先生に死ぬほど走らされたから問題ない」
私とターニャは同時に答えた。
ターニャ、死ぬほどは言い過ぎだ。一応死なないギリギリをだなぁ……。
「じゃあ、さっさと行くわよぉ」
フィーナは足に魔力を集中して、フワリと浮いた。
そして、猛スピードで滑るように空中を移動した。
「じゃあ、しっかり付いてきてこいよ!」
レオンは静かにスピードを上げた。
「じゃっ、私達も行こうか。かなりのスピードだけど、大丈夫か? ラミアはもっとしっかりと掴んでろよ」
私はターニャとラミアに声をかけた。
「……あのくらいなら、大丈夫だ」
「承知いたしましたわ。ルシア様!」
私とターニャはレオン達に追い付き、要塞の入口までたどり着いた。
意外にも悪魔達と遭遇しなかった。もう、罠は勘弁だぞ。
「ルシアはともかくとしてターニャ、君も中々よく鍛えてるね。感心したよ。体術とスピードはルーキーのレベルじゃない。これからが楽しみだな」
レオンはターニャの頭を撫でた。
ターニャは眠たそうな顔で無言だった。
私もこの子の将来が楽しみだ。
「ちょっと、見てごらんなさい。妾達が来る前に一戦交えた形跡があるわぁ」
フィーナは要塞の入口の前を指さした。
本当だ、大悪魔と下級悪魔の死体が数えきれないぐらいある。軽く100体は超えているな。
【グレモリー公爵】を倒してからすんなりここまで来られたのはこのお陰か。
しかし、こんな真似誰が……。
「この短時間でこれだけの悪魔を仕留めるようなことが出来るのは……、彼ぐらいだろうな」
レオンは心当たりがあるみたいだ。
「ああ、あの男ねぇ。世界一の体力バカだもの。ふふふ」
フィーナもある男を連想しているのか……。
「体力バカとは酷い言われようじゃのう。ワシがようけ敵を倒しとったから、おどれらもたいぎぃ思いをせんかったんじゃけぇ。ちぃとは感謝しんさい」
【革命の聖戦士】バムワルが大悪魔の死体を2体担ぎながら、入口から出てきた。
強面の傷だらけの顔の坊主頭、白いタンクトップに短パン姿で十字架のネックレスを身に付けた男性だ。
白いタンクトップは返り血で染まっていた。
「あら、耳が良いのね。一応、誉め言葉のつもりよぉ」
フィーナは腕を組んでそう言った。
「それならええわ。おどれらは、随分とのんびりしとったんじゃのう。既にピエール、ムラサメ、ジーク、アレックスの4人は中に潜入しとるけぇ。はよう、行きんさい。ここから出る悪魔共はワシが仕留めるけぇ」
バムワルは後ろの入口を指さした。
バムワル=フリーマンは15年前、あの修羅の国と呼ばれた独裁国家ブルズ帝国に革命を起こして圧政から民衆を救った英雄だ。
多対一の戦いを繰り返したが、一度たりとも膝を付いたことがないと言う伝説がある。
この男がそう言うのなら、ここは任せられるだろう。
しかし、そう思ったのも束の間だった。
――ズギャァァァァン
突如黒い光がバムワルの胸を貫き、バムワルは膝を付いた……。




