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第4話:【堕天使】と何故か同じベッドで寝ることになった話

ルーペルーンの町にたどり着いた私とラミアは妙に静まり返っていた町中に違和感を感じた。

その後、山賊たちが人身売買のために住民たちを捕らえていたことが判明して、私は山賊たちをやっつけた。


「本当にありがとうございます!!」

町長のルハンという白髪混じりの中年の男性はキレイなお辞儀をした。


どうも、話によると最近ダルバート王国の治安は最悪らしく、兵士がきっちり守っている城下町以外はこんなことが結構あるらしい。


「ダルバート王国に勇者様のパーティーがいた頃はこんなに治安は乱れてなかったのに……」

ルハンは悔しそうな顔をする。


ちょっと待て、ダルバート王国の勇者って2人兄弟で結構強いって有名だったよな。

アレックスも張り合っていて、奴らよりも実績を上げたいからってよく無茶な冒険に付き合わされたものだった。


居なくなったのは仕方がないが、まさかあの勇者兄弟がかぁ、私は少しばかり信じられなかった。


「去年は盛り上がったのですがね。2人の勇者の実績が女神様に認められて、新たな【守護天使】の【加護の力】を頂けるというお話がありましてね。いやぁ、まさか【加護の力】を受けた1週間後に2人揃って食中毒で死んでしまうなんて……」

ルハンは思い出すように話していた。


「へっ、【加護の力】?」

私は思わず呟いて、ラミアの顔を見た。


「…………」

ラミアは私から目をそらして黙っていた。


「あれ? どうしたんですか? それにしても有名なアレクトロン王国最強の勇者のパーティーの1人であるルシア=ノーティス様にお会いできるなんて光栄です。さすがは大国の勇者、隣国の治安まで気にかけてくれるなんて感謝の念に耐えません」

ルハンは涙ぐみながらそう言った。


「はぁ、ルハンさんは私のことをご存知なのですね」

私は意外そうな声を出した。


「そりゃあ、隣国の英雄の顔くらい知ってますよ。【大勇者】アレックス様、【賢者】ティアナ様、【大魔道士】ロザリア様、【】ルシア様はこの国では有名ですから」

ルハンは当然のような顔をしてそう言った。


ちょっと待て、【】ってなんだ?

どう発音すれば良いんだ?

確かに毎回職業は変えているから覚えにくいのはわかるけど。


「あー、そうなんですか。でも、私は追放された身なんで、今日ここに来たのは偶然なんですよ」

言いたくなかったが、私は追放されたことを伝えた。

なんか、このままだとアレックスの奴の手柄みたいになりそうだったから。


「追放? それは穏やかではありませんな。それでは、お連れの方は勇者のパーティーのメンバーではないのですか?」

ルハンは気まずそうな顔をしながらラミアに話を振った。


「はい、わたくしは、ラミアと申しますの。ルシア様にお仕えしている。だて……むぐぐ」

ラミアの口を私は咄嗟に押さえた。


やっぱりアホ堕天使だな。

タダでさえ、【守護天使】の話題もピリピリしてるのに、【堕天使】なんて軽々に言ってみろ。

大騒ぎになるに決まっているだろ。


「だて……。何かおっしゃってましたか?」

ルハンは聞き返してきた。


「えっ、いやぁ、このラミアは【伊達メガネフェチ】なんですよ。ははははっ、駄目じゃないか、初対面の人に性癖を話しちゃ」

私は必死で誤魔化した。


「はっはい。【伊達メガネフェチ】のラミアですの。よろしくお願いしますわ」

ラミアは素直に状況を飲み込み頭を下げた。


「はっはぁ、まあ人の趣味にとやかく言いませんが、裸眼の視力もあったほうがいいとかですかな?」

ルハンは面倒なことに【伊達メガネフェチ】について質問してきた。


いや、知らんよ。

なんで、そこでグイグイくるんだ、このオッサンは。

なんだろうな、知的な雰囲気を出そうとして眼鏡をかけるという安直な発想を持つところが可愛らしいとでも言っとけ。


適当に【伊達メガネフェチ】の話を切り抜けた私たちは町の人々から歓迎会を開きたいという申し出を受けた。

しかし、私はそれを丁重に断った。

そういう宴会を楽しめる気分じゃなかったから。


ルハンもそれを察したのか、せめて最高級の宿くらい提供させてほしいと言ってくれた。

まぁ、せっかくここまで厚意を差し出してくれているのを無下にはできないのでありがたく受け取ることにした。


ルハンに案内された宿屋は町はずれにあり、お城のような形をしていた。

へぇ、最近の高級宿屋って洒落てるんだな。

宿泊と休憩かぁ、ところで休憩ってなんだ?


薄暗い通路を歩いて、ある一室に案内された。

うわぁ、広いし、ベッドが異常にでかい。

あれっ? 

どうしてベッドの上に枕が2つ並んでいるんだ?

何か嫌な予感がするぞ。


「それでは、ごゆっくり」

ルハンは丁寧に頭を下げて、どこかに行ってしまった。


えっと、どういうことだ?

というか、何で一部屋だけなんだよ。

おい、オッサンよ、もう一つ部屋もあるんだろうな。

戻ってくるのだろ?


結局、ルハンは戻ってくることはなかった。

この部屋は、いわゆる世間のカップルが利用する、そういう部屋みたいだ。

くっ、油断していた。

確かにルハンは私の名前は知っていたが、性別は知らなかったらしい。


「今日は一緒の部屋でお泊まりですね。昨日は別々の部屋でしたので寂しがったですわ」

ラミアはニコニコと笑いながらこちらを見た。


いや、大丈夫だ。

だって約束したじゃないか、変なことはしないって。

天使は嘘つかないだろ。

【堕天使】だってそうさ、天使は天使なんだから。


「うわぁ、ベッドすっごくふかふかですよー。ハート型のクッションも可愛いですの。……お風呂も凄く広いですよー」

ラミアははしゃいでいた。


うっうん、意識している私の方が悪い気がしてきた。

そうだな、ラミアはいい子だし仲間なんだ。

信用しよう。

今日は妙に疲れた、風呂に入ってとっとと寝よう。


――次の日の朝――


うっうーん。

あぁよく寝た……。久しぶりに快眠できたな。

ん? ラミア? あっそうか、今日は同じ部屋に泊まったんだったな。

ところで、ラミアよ、服はどうした?

なぜ服を脱いで、私にしがみついて寝ている。

昨日の夜に何があった?


私は咄嗟に自分の衣服を確認した。

衣服の乱れは無いようだな。

ふぅ、よかった、単にこいつの寝相の問題か。

とりあえず、いつまでしがみついている。

離れろ、アホ堕天使。


「う……うーん。女神様……ごめんなさいですの……グスッ」

ラミアの目から涙が流れた。


ちっ、あと30分だけだぞ。

そしたら叩き起こしてやるから覚悟しておけ。


――30分後――


「おはようございますですのー、ルシア様。このベッド寝心地いいですわね」

ラミアは機嫌よく目を覚ました。


はいはい、挨拶はいいからさっさと服を着ろ服を。

顔を洗って、着替えたら城下町に急ぐぞ。

ランチタイムに間に合わせたいからな。


私とラミアは手早く準備を済ませて、宿屋を出た。

町を出る途中でルハンに会った。


「昨夜はお楽しみでしたか?」

ルハンは満面の笑みで開口一番そう言った。


やかましいわ。

そのドヤ顔を引っ込めろ、すっげームカつくぞ。

おい、ラミア顔を赤らめるな、何もなかっただろ。

なんだこれは、なぜ私は意味もなく辱められなきゃならんのだ。


私は早足で城下町に向かった。

こうなったら、嫌なことを食べて忘れよう。

今日は我慢しないぞ、朝食を抜いたから、今の私の腹減り具合は空前絶後と言っても差し支えない。


よっしゃ、丁度正午前に城下町に着いたぞ。

ラミアは息を切らしている、天使の癖に体力がないのか?

事前に評判の【ウィングドラゴン料理】の店は調べておいたのだ。

あそこの角を曲がったところにだな……


――ドンッ


「痛たたた」

ん、誰かとぶつかったのか、急いでいたから失礼をした。

長い茶髪の赤いワンピースを着た気の強そうな女性が尻もちをついていた。


「ちょっと、どこ見て歩いているのよ! ほらっ、あいつらが追いついちゃってるじゃない。あら、あんたいい体格してるわね。あいつら、あたしのことを誘拐しようとしてるのよ、追っ払ってよ」

茶髪の女性が早口で捲し立てる。


ああ、確かに屈強そうな男が2人走ってきているな。

私は早くランチを食べたいのだが……。

やれやれ、どうして私はこんなに人が良いのかな?

手早く終わらせて、腹を満たすか……。








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