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転職ばかりしていたらパーティーを追放された私〜実は88種の職業の全スキル極めて、勇者以上にチートな存在になっていたけど、もうどうでもいい  作者: 冬月光輝
第2章:新たな侵略者、【魔界貴族】編

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第33話:元同僚と何とか和解しようとする話

 ターニャ達と合流した私は【ヴォラク男爵】と戦い、勝利する。

そして、各国の救援者が集合しているという、ボルメルン帝国のザルバムの砦に辿り着いた。


――ボルメルン帝国、ザルバムの砦、食堂――


「ルシア先生は験を担ぐために、わざわざ男装をしてボクたちを応援してくれたんだよ」

 ルーシーはアレックス達に私の男装の事を話していた。

ロザリアとティアナの顔が赤くなっているんだが……。


「それで、私達は何とか優勝できましたから……。ありがたいと思っています」

 マリアも頷きながら話している。

アレックスがすごい表情で私を睨んでいる。


「……パクパク」

 ターニャはパンをかじっていた。

お前のそういうところは私に似てるかもしれないな。


「やあ、久しぶり……」

 私はすっごく気まずい顔をしながら挨拶をした。

あーあ、面倒なことにならなきゃいいけど……。


「ええーっと、ルシア? ひっ久しぶりね……」

 ティアナは私から目を背けて顔を赤らめながら返事をした。

なんか想像した態度と違うな。


「元気そうで、嬉しいです。ルシアール様、じゃなくって、ルシア……さん」

 ロザリア、お前がさん付けなんかしたことないだろ。

なんで俯いてモジモジしてるんだよ。


「ルーシーから聞いたかもしれないけど、ごめん。ダルバート王国で【勇者候補】の指導をしていたんだけど、みんなに会うのが気まずくてさ。変装してたんだ……。私ってほら、みんなに嫌われていたし……」

 私はゆっくりと告白した。


「そっそんなことないわよ。よく考えたら、ルシアだって悪気があったわけじゃないし……。あんなにカッコいいのも知らなかったし……」

 ティアナは一瞬、私の目をじっと見たが、更に顔が赤くなり目を逸らす。


「そうですよ、私こそ最後にあんなことを言ってしまいまして申し訳ありません。変人な部分しか見えてなかったのは何故なんでしょうか……。よく見たら、本当に美形……」

 ロザリア、なんか後半はよくわからないこと言ってるぞ。


「いや、私が本当に悪かったよ。みんなに迷惑をかけていた。どうやったら許してもらえるかわからないが……」

 ホント、もうこの気まずさが嫌だ……。

何でもするから、勘弁してほしい。


「何でも……」

「どうやったら……」

 ティアナとロザリアが顔を見合わせた。

猛烈に嫌な予感がする……。

何を言われるのだろう……。


「「ここで、ルシアールになって!」」

 二人は声を合わせてそう言った。

へっ、そんなことで良いのか?


【俳優スキル発動】


 ヘアメイク+衣装チェンジ+メガネ=男装


 これでいいのか?

ちょっと、近くない?


「「…………」」

 無言でじっと見ないでくれ……。

ドウシテコウナッタ……、どんな罰ゲーム?


「あのさ、みんなが見てるし、この辺でいいだろ? アレックスも無言で睨んでるし……」

 こっこれは思った以上に恥ずかしい状況だぞ。

教え子と上司、ついでにラミアの前で、昔の仲間に男装状態を凝視されるってなんなんだよー。


「ねぇ、ルシア……。ハグして、仲直りしない?」

「それは、名案ですね。もちろん、その状態でですよ」

 何が名案だ、まったく。

私の性格もアレかもしれないが、コイツらだって結構いい神経してるなぁ。

ていうか、私が女なのは最初から知っているのにいいのか?

わっわかったよ、本当にこれで後腐れ無しにしてくれるんだな……。


――ギュ


 私はティアナを抱き締めた。


「あなたって、いい匂いがするのね……。その格好で冒険してくれてたら……」ハァハァ

 なんか、息が荒いぞ。

ちょっと、力強くない?


「はいっ、これでいいだろ?」

「えーっ、ちょっと早くない?」

 馬鹿言うな、食堂中が凄い空気になってるんだぞ。

ラミアがエリスに取り押さえられながら、何か叫んでいるな……。

エリス様ぁ、なんか楽しそうな顔してませんか……。


「次は私ですよ。早く早くっ」

 ロザリアは既に長い耳を真っ赤にしていた。

はいはい、わかりましたよ。


――ギュッ


「ねぇ、ご存知ですか? エルフ族って同性でも子孫を残すことができますのよ」フゥー

 うん、今までの人生でトップ3に入るくらいの要らない知識だね。

耳に息を吹きかけるの止めてくれるかな。


「よし、これで和解できたのかな?」

 私は真っ赤な顔の二人の元同僚にそう言った。

そして、さっさと元の格好に戻った。


「ええ、そうね……。別にあなたに嫌悪感なんかないわよ。ねぇ、ロザリア」

 ティアナは目を伏せながらそう言った。


「もちろんです。それで……、ルシア……さん、あなたさえ良ければ戻って来ませんか?」

 ロザリアは遠慮がちに声を出した。

えっ、何を言っている?


「それ、いいわね。長年パーティーを組んだ仲じゃない。あなたの戦力の穴って結構大きかったのよねー。アレックス、あなたもそう思うでしょ」

 ティアナが後ろを向いてアレックスに話しかける。


「ふざけるな! そもそも君たちがルシアの苦情を言い出したんだぞ。それを、あいつの謎の色気に騙されて、また仲間にしたいだって? 寝言もいい加減にしろ!」

 アレックスは至極まっとうなことを言っているな。

そうだよ、そんなことコイツが許すわけないじゃん。

一回追放した奴を戻すって、アレクトロン国王もいい顔しないはずだ。


「しかし……、だ。ラミアさんを連れてくるのなら、考えてもいい……。栄光のアレクトロン王国の【勇者】のパーティーに戻してやらないこともない」

 アレックスはラミアをチラ見しながらそう言った。


「…………」

 私は目が点になっていたと思う。

何言っているんだ?

ラミアに惚れてるのかもしれんが、それはどうかと思うぞ……。


「でっ、いつラミアさんと戻ってくるんだ?」

 アレックスはニヤリと笑って私を見た。

いや、お前の中で私が断るという選択肢はないのか?

まぁ、あんまり言いたくないけど仕方がないな。


「アレックス、悪いけど私はダルボート王国の【勇者】になったんだ。だから、アレクトロン王国には行けないよ」

 どうせ、【勇者登録書】に記載されるし隠さなくていいだろう。


「はぁぁぁぁぁぁ? お前が【勇者】だとぉ? 馬鹿言え、【守護天使】の【加護の力】をどうやって手に入れるんだよ。嘘をつくのも大概にしろよ!」

 アレックスは私に詰め寄った。

そりゃそう思うのが、自然な反応だよな。


「そうよ、流石にあなたが転職好きだからって【勇者】だけは無理のはずよ。変ね、そんな嘘はつかない人なのに……」

 ティアナもアレックスに同調した。


「ルシア……さん、私達のところに戻りたくないなら正直に言っていいのですよ。許せないならそうだと……」

 ロザリアも完全に私を嘘つき呼ばわりしていた。

まぁ、仕方ないな。

【勇者登録書】なんて、誰も持ち歩かないだろうし……。


「あっ、本当にルシアの名前載ってるじゃない。うわぁ、こうやってダルボート王国の欄にまた、二人の生きている【勇者】の名前が載るのは感慨深いわ」

 エリスは大きな書物を捲りながらそう言った。

エリス様、なんで【勇者登録書】を持ち歩いているのですか?


「ええと、丁度ターニャが登録されたのを確かめようとしてたら、色々あって持って出ちゃったのよ」

 エリスは苦笑いしながら答えた。


「そんな馬鹿な……」

 アレックス達は信じられないといった表情でエリスの【勇者登録書】を凝視した。


「本当にルシアが【勇者】になってる……」

「信じられないですね。でも、転職好きもここまで来ると素敵かも……」

 ティアナとロザリアは感嘆した。


「くっ、【勇者】は簡単じゃないぞ。恥をかかないように精々努力しろっ。行くぞ、ティアナ、ロザリア」

 アレックスはティアナとロザリアを連れて食堂を出た。

ふぅ、やっと静かになった。

お騒がせしてすみません。


「ルシア様のバカぁ。わたくし、以外を抱き締めるなんて、浮気ですわぁ」

 ラミアが涙目で私をポカポカ叩いた。

誰が浮気だ?

みんなが見てるし、やめろ。


「ラミア、落ち着きなさい。ルシアはどこにも行かないって言ってくれたのよ。信じてあげなさいよ。それにしても、面白かったわ。ふふふ」

 エリスはニコリと笑いながらラミアを諭した。

エリス様、やっぱり面白がっていたのですね……。

でも、これでラミアも落ち着いたし、ゆっくり食事が出来るぞ。


「ルシア先輩、【勇者】になられたって本当ですか?」

 ぐっグレイスだと……?

落ち着け、この子は基本的にはいい子だ……。


「運命ってこういうことを言うんですね。実はあの後、修行も兼ねてアレクトロン王国を飛び出しまして、一人で武者修行の旅に出たのです。旅に出てダルボート王国に行ったのですがルシア先輩がお留守で意気消沈してしまいましたよ。郵便入れに私の想いを綴った手紙を100通ほど入れましたのでご覧になってください。その後、救援要請を聞きつけまして、もしやと思い参上しました。嬉しいな、思ったとおり、ここでルシア先輩に会えるなんて……。ウフフフ、しかも【勇者】にまでなっているなんてやっぱり私のルシア先輩は素敵です……」

 グレイスの目は爛々と輝いていた……。

 

 相変わらず、怖いよぉぉぉ。

それで、何の用事ですか?


「そこでお願いします! 不肖グレイス=アル=セイファーをルシア先輩のパーティーにいれてくれませんか?」

 グレイスは顔を私に近づけてそう言った。

近い近い近いって……。


 食堂での騒動はまだ続く。

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